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Episode 2*「Taichiよ。クールにやれ」

2013年から2019年の6年間、私はイギリスでChase & Statusってグループのツアービデオグラファーとして彼らに同行していました。ツアービデオグラファーって仕事名義ですけど、結局ミュージックビデオも含め映像のほとんどを僕が担当していたので、実質上バンドの映像担当みたいな立ち位置。Chase & Statusは当時Prodigyの後継者と言われたくらい注目されていたバンド。(今も人気です)ドラムンベースを基盤にUKのダンス・ミュージックの大物と言われていたました。細かいプロフィール説明はちょっとめんどくさいので、ここにリンクを貼っておきます:https://futuregroove.jp/iloud/interview/chase_and_status_no_more_idols/

監督した作品の一部:

メンバーはソルとウィルの二人がメイン・メンバーで、MCとしてレイジがいました。彼らとの思い出は本当に楽しかったですが、とにかく色々過激。特に、ソルが完全にロックスター。めちゃ熱い人で「常に俺の事を撮ってろ!」って感じだったので、ツアー中だと起きて寝るまで撮ると事に。でも、頑張って撮り続けたお陰で、何処でも連れて行ってくれました。日帰りでプライベートジェットに乗ってイビザに行き、グラストンベリー ・フェスティバルのメインステージに一緒に立たせてもらったり。普段では絶対経験できない事を色々経験出来て、キャリアの飛脚のきっかけを作ってくれたので今では本当に感謝しています。(本当に大変だったけどね。。。)

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左からSaul(ソル)・Rage(レイジ)・Will(ウィル)

そんな彼らとの思い出で僕が一番憶えているのは、初めて同行したBRAND NEW MACHINEのアルバム・ツアーの時、バスでソルさんと深夜二人きりに時のことです。ソルさんは深夜になると毎晩の如くアコースティック・ギターを弾いてます。それをなぜか俺が毎晩ずっと撮らされるというがルーティンでした。毎日朝まで辛かったぜ。。。

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ライブ中のソル。基本的に怖かったが、カメラを向けるとふざけ出すお茶目な一面もある。

ある日、彼がギターを置いて休憩してる最中、とある質問をしてみました。

「今まで、一緒に仕事したアーティストで思い出に残ってる人って誰?」「リアーナだな。」

彼が関わったリアーナのアルバム「RATED R」

Chase & Statusは確かにリアーナの「RATED R」のアルバムの何曲かをプロデュースしていました。凄いですな。ソルさんはその後、自慢げにその時の話を始めました。

「アメリカのスタジオ制作のプロセスって変なんだよ。最初からプロデューサーと歌手が一体一でセッションするんじゃなくて、呼ばれた候補のプロデューサーがスタジオにいっぺんに呼ばれてそこで曲を披露し合うんだよ。だからみんな必死さ。で、俺もイギリスから呼ばれてスタジオに行ったんだ。そうしたらやっぱり他に7人くらいのプロデューサーが一緒に居て、皆んなソファーに座ってリアーナを待ってた。しばらくするとリアーナが彼女のチームと一緒にスタジオに入ってきた。彼女が入ってくると同時に、そこにいたプロデューサーは全員リアーナに駆け寄って必死に自分の事をアピールするんだよ。マジで戦争だぜ。まあそりゃあ、自分のキャリアが関わってるから分からない訳でもねえけどな。だけど、俺だけは違ったぜ。何をしたと思う?」

僕が首を振ると彼はニヤリと笑いました。

「俺はソファーから立ち上がらず、太い🌿を巻いて吸い始めたんだ。「俺はそんな必死じゃねえぜ」って感じでな。そうしたら、遠くにいたリアーナがソファーにまで居る俺の事をチラチラ見始めたんだ。何アイツ?みたいな感じでな。彼女は俺の所に来て「あなた、そこに座って吸ってるだけだけど、良いビートはあるの?」って聞いてきたから「ああ。あるぜ。」って何曲か流したんだ。そうしたら彼女はにっこり笑って「この人がいいわ!」って他のプロデューサーを帰らせ、俺らだけでセッションを始めたんだ。他のプロデューサーの奴らは空いた口が塞がらなかったぜ!

俺らはそこから仲良くなって、数曲作った。リアーナは俺の事を「スモーキー」ってニックネームを付けてたな。
俺らがあそこで仕事をゲットできたのは運もあるが、俺が他の奴らとは違って堂々としてたからだ。確かにリアーナーは当時の俺らよりビッグネームだった。けどな、自分の才能に自信があるんだったらどっしり構えてろ。そうしたら向こうから寄ってくるぜ。

いいか太一?相手が誰であろうと、どんな状況下でもCOOL(クール)でいる事が大事なんだ。

僕が何年も彼らと一緒にいて、大切な思い出の一つはこの時の深夜の会話でした。彼のアドバイスは僕の人生を間違いなく大きく変えたと思っています。

(その時のツアーから作ったドキュメンタリー・フィルム)

彼の言った「COOL」は僕の中で解釈が二つあって、まず「冷静にいろ」という意味。どんな状況下でも冷静に居ないとダメですね。僕も撮影中に上手くいかない時に怒鳴り散らかしたくなる時がありますが、そこはやはりCOOLに。冷静になって対処法をみんなで探してます。パニックは常に避けましょう。

もう一つの意味は「カッコ良い奴で居ろ」って意味だと思ってます。もちろんかっこいいの基準は各個人違いますが、自分のカッコイイを貫いて行こうねって事ですね。イギリスはやはりパンク魂を誰もが持ってる国民なので、ある意味「舐められるな」って意味も含んでるかもですね。本当にこの国は「中指立ててなんぼ」みたいなプライドの高い国民性なので。いい事だと思いますけどね。

実際の光景。こんな感じでソルさんは毎晩のようにツアーバスでギターを弾いていました。

ソルさんがこの晩僕に向けて言ってくれたアドバイスは今もとても大事にしています。本当に感謝。辛い時いつもこの事を思い出します。

ってな訳で今日はここまで。
COOLに生きましょう。

太一 


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