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【シップナース】船上看護師の航海日記をマガジン連載決定!!

皆さんこんにちは。
人道支援家taichirosatoです。

先日、Twitterで船上看護師(シップナースと表記します)に興味を持っていただいた方がいたので、自分の経歴も含めて、書き留めていた航海日記をマガジンで連載していきたいと思います。

人道支援以外にも世界の色々なところで活動をしていて、書き溜めた思いがあるので出し惜しみせず、皆さんに紹介して行けたらいいなと考えています。まずは船の医療の世界へ皆さんをご招待!!

仕事で毎日更新できるかは分かりませんが、こまめに連載していきます。海外医療者を身近に、そして文章やストーリーを楽しんでもらえたら嬉しいです。
ということで以下、僕の航海日記になります。↓↓↓

〈 18, Oct, 2019 ハワイ島での航海日記より〉

Beautiful Town Santa Barbara!! 

皆さんこんにちは。案外毎日一生懸命働いているのと、色んなケースに遭遇し考えることも多いこの頃で、
医療者の知り合いが多いし、せっかくなので船の医療や自分の今の仕事についてシェア出来たらと思って、記事を書くことにしました。いくつかエピソードを、電波の入るところで書いてみようと思います。というわけで、今回が初回。
会社の規律で翻訳されるとやっかいなので、ちょっと遠回しな表現を使いますが。ご了承願います。
※医療用語がかなり含まれるので、できるだけ解説しながら進めていきます。

「バックトゥーラハイナ」

夕方、ラハイナという小さなハワイ町から出航し、これからカナダバンクーバー5日間かけて向かうという所。

抜群の天気の中、自分はオンコールのため船にとじこもりジメジメした気分でハワイを後にした1時間後。911(救急コール)に入電。主訴、胸痛。でました。「咳しすぎてー胸が痛いんだけどー何とかしてくんない?まぢで」みたいなコールをしばし受けているわけで、中途半端な気持ちで911かけるな!と突っ込みたくなる毎日を過ごしてるわけだけど、何となく嫌な予感がしたので、走ってキャビンへ向かいドアを開けると、おっ、お母さん、、大丈夫ですか?と。。
汗びちょの胸痛、「いきできないんよ、ホンマに。」(多分こんなニュアンスの人、笑)

呼吸不全、Sats 80前半。こんな時にも船の中にあるメディカルセンターに運ぶ前に保険と同意書の説明を忘れず済ませ(これがアメリカ社会では非常に大事、でも相手はカナダ人)客室滞在30秒でメディカルセンターへお母さんを運ぶ。
やばい、かなりやばい。
ドクターコールしいざ仲間の元へ。

、、が、これがとーい。今回は船の10階の後方部から、メディカルセンター船の前の方のデックA (1階の下)へ、車椅子を走らせるが、また、船がでかいのなんの。ふと後ろを振り返ると、って、おとーさんめちゃめちゃ遅れてるー!おとーさーん、はやくー、もういいや、待ってられないからお父さんにメディカルの場所を伝える。「お父さん!いい!時間ないから先行くからね!メディカルの場所わかる?え、わかんない?船の前方!ふぉーうぁーど!デックAね!え、聞こえない?デックA!DECK  A!アポー(アップル)のA!え、聞こえない?アポー!!アポー。アダムでもいいけど、大事なのはA!」お父さん耳とおい。

気がつくと、メディカルグッズにお母さんの薬やら荷物やらでバーゲンで買い漁ったおば様状態。ここでもタイムロス。途中でスチュアート(船のお手伝いさん達)捕まえて荷物もってもらって加速!と言いたいところだけど、結局エレベーター待ってる間にお父さんも追いつき、みんなで一緒にメディカルへゴール!ってここからがスタート。

アレルギー確認してアスピリン噛ませて、カテを考慮してルートは手背から~って、血管あります?お母さん。。アンビリーバブルなBMI(体型指標のこと)のため、神がかりなIV(点滴)アクセスショットを1回できめると同時にプライマリ、セカンダリサーベイ(患者を素早く評価するステップ)をすませ、PEかACS(肺に問題があるのか心臓に問題があるのか)か、それとも?
データに心電図、色々考えをめぐらせてると、胸痛にはグリセリントリニ...スプレー!(心臓の薬、血圧を下げる副作用あり)と、張り切るシニアナースのおねぇ様。ちょいちょい血圧60まで下がってますけど?わちゃわちゃしつつもなんとか下り坂を平坦な所まで持ってきた所で、そうです、船あるある、決断の時間です。ここからどーするよ?と。

船の医療は限界があって、カテ(カテーテル治療)もメジャーサージェリー(いわゆる手術)も出来ません。やるしかない時もあるけど。。なので頭の中は、①ヘリ搬送→お金は?患者負担?とんでもない金額に。②港に引き返す。陸からまだ1時間の海域にいる。この先は5日間。さすがに、船の中に患者を置いておくのは厳しい。がしかし。船を引き返すということは、必然的に船が遅延することでもあり、2000人の乗客と次乗る2000人4000人の足を止めることに。金額的にもとんでもない損害に。③そのまま継続。船で患者を見る。いやいや、これはきびしい、あとは?あとは?と考える。

とはいえ、最終判断はキャプテン。ドクターからキャプテンに交渉が入ります。患者の状態は不安定、ACS疑いで時間に余裕があまりない状況。一回目の交渉ではヘリ搬送という話に。ただヘリ搬送となると、ドクター1人付き添いになるので、この後海の上での5日間はドクター1人しかいない状況になることに。(何となく想像出来るかもしれないけど、逃げ場のない海のど真ん中のメディカルセンターは地獄絵図です)その中でドクター1人削るのは
メディカルチームとしてはかなり困る。
そこでキャプテンへもうワンプッシュ。

船乗り達の熱いブーイングを浴びながらも港に引き返すことに。
「バックトゥーラハイナ(ラハイナの港へ戻る)」
ただし、日が暮れているので船を沖で停めて、スクープに患者をのせ、非常用のライフボートで陸まで搬送。陸で待ち構えていたアンビュランスチームにハンドオーバーをし、さあかえろう。。

夜中で視野が悪い中、安全に船を出してくれたクルーに感謝しながら、患者のいない6人だけの船へと帰るライフボートで「ハッピータイム!ビール前のエクササイズ!いい仕事が一緒に出来てよかった!」と冗談とか言いながら上機嫌なライフボートを運転する操縦士と一緒に本船へと戻る。

、、が、ここでトラブル。フォークリフトでライフボートをあげる際、風が強いのと、リフトあげるのが早すぎたらしく、揺れる揺れる。ライフボート操縦士。吠える。。「おまえらー!この××××〇△□が!..××××!!!!」。。まだ、吠えてる。。放送できない用語で吠えまくる。顔真っ赤。そんな彼を横目にようやく船へと戻り、
おぉ、ホーム、スィートホーム。

たくさんの野次馬がお出迎えで、ちょっと調子にのりつつ、船に帰ると安心するようになってきた今日この頃。メディカルへ戻ると、誰1人待ってはおらず、ドクターと2人で頑張ったよな、の労うしまつ。そう、毎日日勤も夜勤も休みなく働いてるメディカルにとって、休める時に徹底的に休む、これが船メディカルチームの鉄則なのです。って、さすがにおかえりくらい言ってくれてもいいんじゃないでしょうか?

教訓としては、タイムリミット、搬送の安全性とコスト。他職種のinvolvement(巻き込む)、ケースに応じたベストな提案と様々なオプション。
治療に関していえば、病院到着までにかかる時間を予測した初期治療。バイタルが落ちてないなら、やたらと攻めるのではなく、粘る。最後のカードを切ってしまうと、搬送中バイタルが落ちたら打つ手がなくなるので、輸液コントロールも薬剤投与も慎重に戦略的に。今回はオンシーンの時点で搬送をイメージして、ドクターとやり取りしたので、色々スムーズだったし、不安定バイタルながらも戦略的余裕を持たすことの出来たなかなかいいアプローチが出来たケースでした。

少しでも、参考になればいいと思いつつ、時間がある時に他のケースも書いてみようと思います。
コメントがあればぜひ。
日常業務もおいおい書いていきますので、乞うご期待。

写真は、無事搬送を終えたあと、移動用の小さなライフボートの中で、ドクターダンと安心のツーショット。

その後数日の期間を経て、メキシコにて1週間半ぶりに陸におりました。

※投稿内容は全て個人の見解です。
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また次回お会いしましょう。
Best,
Tai

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