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「顧客が本当に必要だったもの」から考える、自治体システムの在り方

自治体の場合、業務で使用するシステムは、自ら作るのではなく、調達することが多いのではないでしょうか。しかし、通常業務が多忙であり、システム調達に慣れていない公務員にとってはシステム調達自体が大きな負担となっている場合が多いように感じられます。

しかも、苦労して導入したシステムの評判が悪く、「全然使えない」と感じるシステムを渋々使う、または使わなくなってしまったという、苦い経験を持つ人は少なくないはずです。筆者自身も企画初期の利用イメージと異なったシステム運用をせざるを得ず、「こんなはずじゃなかったのに」と悔しい思いをしたことが何度もあります。

この記事では、自治体システムの調達は、どうあるべきかを解説します。これにより、公務員の皆さんが直面する課題を解決するシステムを導入し、ひいては市民サービスの質を高めることに貢献することを目指します。

「顧客が本当に必要だったもの」とは

下の画像は、有名なシステム開発プロジェクトの風刺画です。思い描いたシステムが、その通りに導入されることの難しさを表した絵となっています。

皆さんがこれまでに担当したプロジェクトでも、あてはまる事例は多いのではないでしょうか。

顧客が本当に必要だったもの風刺画(ニコニコ大百科より)

システム開発プロジェクトの課題において、顧客(自治体)の要求と最終的に提供される製品との間に乖離が発生することは多くあります。「あるある」と、共感することも多いですが、なるべくなら防ぎたいものです。では、こうした乖離を防ぐために、顧客(公務員)はどうすればよいのでしょうか。

必要なことは2つ

現状と課題の整理

顧客側が、まず注意しなければいけないのは、プロジェクト開始前に、自分たちに必要なシステムの要件を説明できるようにすることです。要件を正確に説明できないと、ニーズを満たさないシステムや、導入後に広範なカスタマイズが必要となるなどの問題が出てしまいます。
この要件は、担当者だけではなく、利用者、システム稼働により影響を受ける人や組織などすべての利害関係者と調整する必要があります。
プロジェクトの開始にあたっては、より組織のニーズを正確に理解することが重要です。

整理は、自分たちが、今、何に困っているのか、課題は何であるかを書き出すことから始まります。この書き出しを行うことで、「システム導入の背景」をまとめ、ベンダーや開発者側のプロジェクトリーダーへ正確に伝えることができるようになります。

正確な要件があれば、開発者側は正確な見積もりを提出することもできるようになります。

利用部門や幹部など、ステークスホルダーと仕様について意見交換

プロジェクトの書類で進捗をチェック

必要なものが整理できれば、次に注意すべき点は、プロジェクト中の進捗管理です。必要なものが、思った通りのものになっているかをチェックする必要があります。
しかし、システム開発プロジェクトの大部分、設計以降の作業は、開発者側の作業になります。

このため、開発フェーズごとに開発者側から提出される、プロジェクトの書類で確認することが重要になります。顧客は、この2点を意識することで、本当に必要なシステムを手に入れることができる可能性を高めることができます。

成果品による進捗のチェック

とはいえ、1つの自治体にシステムは500以上ある。

自治体は、住民の福祉や公共インフラの管理まで、多様な業務を行う組織です。各自治体共通の事務処理もあれば、地域性など固有の事業特性を有する課題もあり、事務を効率的に処理するシステムは欠かせません。

では、どのくらいのシステムが稼働しているのだろう?と疑問に思い、1度数えたことがあります。その数はおよそ500個でした。ちなみに職員数も500人くらいです。人口6万人の市では市民の日常生活を支えるために、およそ1人あたり1つのシステムを操作・連携し、事務を執行しています。これらのシステムは、幅広い領域をカバーしており、それぞれ特有のニーズと要求を持っています。

自治体に限らないとは思いますが、新規採用が思うようにいかず、これまでは、人が、手で作業していた通常事務が、徐々に同じやり方で、できなくなりつつある場面が頻出しています。足りない人数をカバーするための事務改善、新たな課題を解決するための突破口として、自治体で稼働するシステムの数は、今後どんどん増えていくと予想しています。

このため、1つ1つのプロジェクトに時間をかけることは難しい状況にあります。しかし、自分たちが欲しいものを開発者側に伝え、その開発状況をプロジェクト書類などにより確認しなければ、欲しいシステムを入手することは難しくなります。

では、どうすればよいのでしょうか。

システムがあっても、忙しいものは忙しい

AIを活用した仕様書の作成

1つの案は、最初にしっかり仕様書を作成することです。仕様書には、システムが持つべき機能や性能などに加えて、現状の事務処理方法と課題、プロジェクト中に提出すべき書類等を明記します。
この仕様書を組織内で共有し作成。開発者側に提示することで、プロジェクトで達成すべき事項を1つの書類で確認できるようになります。

ただし、仕様書の作成には、時間がかかります。ですので、仕様書作成にAIを活用するのがよいのではないかと考えています。

実際にAIを活用し仕様書を作成したことがありますが、仕様漏れの少ない仕様書を、これまでより短時間で作れたと感じています。下記は、現在公開しているAIを活用した要求仕様書によるプロポーザルの募集になります。

まとめ

本当に必要なシステムを入手するためには、要求仕様書を作成することが重要です。さらにAIの力を利用することで、より精確でカスタマイズされた内容を作成することが可能です。

次回は、実際のAIを活用した仕様書の作成手順を解説したいと思います。合わせて、RFIを通じて市場の可能性を理解すること、効率的かつ効果的な業者選定についても考えていきます。

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