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アムステルダムとゴッホの油絵

アムステルダムは油絵みたいな街だった。

色んな色が混ざり合って、
まるでゴッホが描いた油絵みたいにカラフルで、目が回るようだった。

アムステルダムは私が好きな都市の一つだ。

旧市街は古く、趣のある景色が立ち並び、蜘蛛の巣のように張り巡らされている運河がある。
石畳の道路は毎日のように降る雨によって濃い灰色に変色していた。

しかし、決して’汚い’とか’劣化している’なんていう印象は皆無で、適度に手入れをされながら、不要になった建物は壊すのではなく、リノベーションされまた別の用途で使用される。
ミクロの視点で一つ一つの建物を見れば、ごちゃごちゃとして混沌としているかもしれないが、なぜかマクロの視点で町全体を見渡せば、不思議と周りの建物と調和しているのだ。

古い建物は壊され、どれも似たような高層ビルが立てられる再開発された街とは全く別物で、アムステルダムは時代や住む人によってゆっくりとその姿を変えてきた。
人々の生活や歴史が、建物や道路に染み付いて独特の雰囲気を醸し出しており、なんとも’色気のある’街並みなのだ。

夜になってしまえばまた違う顔を見せ始める。

多くの人はご存知かもしれないが、
ここアムステルダムでは大麻と売春が合法なのだ。
旧市街には’Red ligh district area(飾り窓地区)’、いわゆる赤線地区のようなものがあり、その一帯には多くの売春婦たちがいる。
’飾り窓’というだけあって、彼女たちはドアのついた小さな部屋の中に立っており、ガラス越しに男性たちを誘惑している。
また、その部屋は赤いライトで照らされており、なんとも怪しげな雰囲気を醸し出しているのだ。

同時にこのエリアでは’コーヒーショップ’という大麻を購入したり、吸ったりすることができる店がそこら中にある。
アムステルダムでは基本的にはコーヒーショップ以外の場所で大麻を吸うのは禁止だが、そんなことおかまいなしに、みんな歩きタバコならぬ、歩き大麻をしながら通りを歩いている。

赤いライトに照らされた妖美な売春婦たちと、雑踏。
大麻の香りに、キマリすぎて叫びながらゲロを吐く若者。
薄汚れた煉瓦造りのアパートに、白い塗装をされたブティック。
パブで酒を飲む男たちと、手をつなぎながら歩くカップル。
スカートを履いてタバコをふかす男と、キスをしているレズビアンカップル。

昼も夜も、ここにいる人たちも、景色だってひとつひとつ見れば混沌としていて、統一感がない。
でも、大きな視野で通り全体、街全体をみれば、アンバランスさや、奇妙さなどなく、皆、それぞれ色とりどりの個性を出していながら、街の風景に自然に溶け込んでいる。

まるで、ここアムステルダムが大きなキャンバスで、
何重にも色んな色を塗りながら作られた油絵みたいに。

そんなことをアムステルダムのゴッホ美術館で色とりどりの油絵を見た後に
思慮をめぐらしながら、大きなキャンパスの中で私も一つの色になり街に溶け込みながら歩いたのだ。

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