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平成の女子ミラーから振り返る「流行」と「価値観」

先日も90年代を代表とするアイテムの一つとさして「LOVE BOAT」のミラーを紹介したが、「LOVE BOAT」のミラー以外でも100均やソニプラでの販売している大きなミラーの後ろにプリクラを貼ったり、雑誌の付録のミラーが流行ったりと90年代~00年代はミラーと流行は共にあったように思う。

今回は現代と90年代~00年代のミラー文化を比較しながらミラー文化における「流行」と「価値観」を紐解いていきたい。

・ブランドや流行にミラーの「価値」を新たに置き始めた90年代

女子高生がより元気になっていき、インスタントカメラ文化やプリクラ文化が生まれて活性化した90年代は、メイク直しはもちろん放課後に向けて身だしなみを整えるアイテムとしてミラーは重宝とされた。

またメイクも細眉が流行したり、黒ファンデや白のアイライナーなどギャルメイクの流行したのもあり、鞄の中にミラーは必ずある定番アイテムとなった。
特に109のアパレルブランド「LOVE BOAT」から発祥した「LOVE BOAT」のミラーは当時の女子高生にとって流行アイテムの一つとなるほど人気だった。

90年代後半より少し前の90年代前半から90年代中期も、キティちゃんのキャラものやマリークワントなどの流行のミラーがあったが、ミラーの大きさやロゴのインパクト、所持率からみて「LOVE BOAT」のミラーの方が記憶に残りやすかったのだと思う。

※「LOVE BOAT」のミラーのほんの少し前に大人気だったキティちゃんの3面ミラー。

「LOVE BOAT」のミラー人気から109のアパレルブランドから多くのミラーがノベルティーやグッズなどで販売されていった。

※LOVE BOAT以外にも色んなブランドがこぞってミラーを売っていた。

また109ブランド以外にも「文化屋雑貨店」や「スーパーラヴァーズ」スイマーなどのミラーも販売され、ギャルのみならず、原宿系ブランドの雑貨も人気になる。
そこには機能性というよりは、プリクラを貼ることで「友人の多さ」だったり、好きなブランドのロゴやシールが入ったミラーを持つことで「個性」や「好きなもの」をアピールする道具としても使用されていった。

※原宿系ミラー。ギャルミラーよりもやや小さめでかわいい。

※高校の頃の友人のミラーを再現してみた。
無印良品のミラーにステッカーを貼ったりするのも当時人気だった。

※1999年プチセブンno.21 / 小学館
読者プレゼントになるくらい「ミラー」は人気アイテムだった。人気のミラーを挙げたらキリがないが、当時は様々なところがミラーを販売していた。

・00年以降は雑誌コラボのミラーが流行。

00年代に入っても引き続き、ミラー文化は継続されていったが、以前の「LOVE BOAT」のミラーほどの所持率やミラーに対して昔ほどのこだわりは減っていった。

そして2010年に近づくにつれて、今度は雑誌の付録が流行する。
特にScawaii!(主婦の友)の付録のmoussyのチョコレート型のミラーは、ビジュアルの可愛さはもちろんのこと、斬新なアイデア、当時珍しかった雑誌の付録と人気ブランドコラボも相まって大ヒットする。
私と同世代の方はこのチョコレート型のミラーを覚えている方もいるのではないだろうか。

※大ヒットした、Scawaii!付録のチョコレートミラー。この辺りからスィーツモチーフも多くなった気がする。

この雑誌の付録の文化は現代も続き、OLさんファッション鉄板の美人百花、ストリートファッション定番のmini、大人可愛いファッションの代表のSweet…等、世代、系統関係なく今日も人気は継続され、今では付録があって当たり前のような状態になっている。
特にミラーに関しては小さなコンパクトタイプのものが雑誌の付録についていることが多く、今でも雑誌の付録の中では人気のアイテムになった。

・スマホやの登場で変わりつつあるミラー文化

2008年にiPhoneのスマホが日本に登場してから、徐々にミラー文化も進化してきているように思う。
スマホアプリやカメラ機能の進化から自撮り文化は年齢男女問わず定番化した。
カメラ機能のインカメラはミラーモードはまさに今の自分を映し出しミラーの役割になる。

プリクラやインスタントカメラのコミュニケーションの文化はSNSへ以降し始め、ただの記録的な「撮る」という行為から「魅せて撮る」ように変化したように日々感じる。
そして撮った写真は小さなコミュニティ内での共有からより多くの人と共有出来るようになった。

そして今では、プリクラやインスタントカメラで撮る前に使用していた「ミラー」もスマホ一台で確認出来るようになった。
以前のような大きな鏡を持ち細部まで事細かく確認しなくても、フィルターがかかった「顔面の調子の良い」状態で自分を確認できる。

スマホアプリやカメラ機能の進化から自撮り文化は年齢男女問わず定番化した。
カメラ機能のインカメラはミラーモードはまさに今の自分を映し出しミラーの役割になる。このスマホが登場し、SNSが主流なってきた辺りから、ミラーもコンパクトなタイプが定番化してきたようになったと思う。

雑誌付録のミラー以外にも、現在は様々なミラーが登場した。
「女優ミラー」とも呼ばれるLEDライトで囲まれたコンパクトタイプのミラーが登場したり、拡大鏡という拡大した状態で隅々まで自分の顔をチェック出来たりすることが出来るミラーなど、コンパクトタイプでセルフィー文化に特化したアイテムが増えていった。

その仕様は以前とは異なり、ただ自分を確認するだけではなく「盛って」確認できたり、また自分に厳しくチェックしたりと様々だ。
そこには以前のモノとしての価値ではなく、機能性や自分の為に機能して初めて「価値」が生まれる。

また近年のミラー文化で特に思うのがビジュアル面と機能性と求めるものが行ったりきたりしているように感じる。
現代でも人気のアナスイやJILLのようなコスメブランドが販売しているミラー、その少し前の07年に流行った造花で飾った楽屋ミラーやスワロフスキーのデコミラーはとてもデコラティブでルックス重視だ。

※07年辺りに女子大生やOL、芸能人に人気だったトシ子さんの楽屋ミラー

※AYUもやっていたラインストーンで埋め尽くされたキティちゃんのデコミラー。

90年代のラブボミラーのようなブランド重視の既存のミラーからデコラティブなミラーに惹かれたり、JILLのミラーに関しては「モテる」と言ったジンクスなどもあったりと、この辺の流行は進化というよりは本能的に選んでる気がする。

また、その中で女優ミラーだったり拡大鏡だったり「自分を確認すること」への重点を置いたりと、ミラーに対して求めるものが流行とともに変化し続けているのが興味深い。

※今でも人気のJILLとANNA SUIのミラー。

デジタルで見る顔と鏡で見る顔は少し違って見える。
アプリの設定を好みの顔にしてしまえば、加工という名の魔法がかかり、顔面の調子が悪くてもほんの少し気分が明るくなる。
だが、その反面で持ち物としてのデコラティブな鏡もまた気分を明るくする。

鏡は自分の顔を確認するものだが、その日の気分も確認するものだと私は思う。
気分やコンディション、様々なものが相まって鏡には映るような気がするのだ。
鏡の機能性とビジュアル性…私たちにはどちらの要素も必要なのかもしれない。


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