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酪農家もう消える。

11月から乳価が上がるが、酪農家はずっと苦境に立たされる。

コロナ禍での学乳の供給停止による牛乳の流通がダブついてきて、円安為替による飼料価格高騰、酪農資材価格高騰が長期的に続き、生乳価格が据え置きのまま現在も酪農家は経営している状況。

副産物生産として和牛子牛やF1交雑種、ホルスタインオス子牛たちも外食産業やスーパーでの牛肉の消費動向が低迷しているために飼養費を差し引くとほぼタダ同然に買われていく。個体販売もコスト倒れになり、ほぼ利益が見込めない状況だ。

生後1ヶ月のホルスタインオス子牛はわずか500円〜1000円で買われているという。むしろ購買者は飼料価格高騰で子牛を買いたくないので0円の値がつかない形で市場でと殺されていると聞いた。これは本当に異常なことだし、生命の倫理観からしても良くない。しかし酪農家も経営がひっ迫しているため買い戻してまで牛乳を生産しないオス子牛を飼うことができない。

国内でコロナウイルスのまん延と経済的なインフレが続く限り、酪農家に活路が見いだせない状況だ。

どうして各種産業、業界が値上げに踏み切っているのに牛乳の値上げは緩慢な動きなのか?


生乳の乳価交渉は原則、一年間価格改定が許されない決まりになっている。

また現場の窮状を訴えてはいるものの全国各地様々な行政機関、農水省など関係各所の認識に温度差が生じている。このままでは確実に酪農家が消滅する日が来る。

明確な打開策が全く見えないまま、毎日赤字で我々は動物を飼っているからだ。すぐに生産を中止できない。

実は酪農、畜産業は輸入作物や穀物市場の為替相場と密接に関係している。
いままで粗飼料を輸入乾牧草に頼ってきた農家は、都市近郊でも広大な牧草地を持たずに経営ができていた。都市近郊からだと生乳の流通もスムーズに行うことができ、乳業メーカーとしても助かっていた部分がある。しかし今となっては自分で牧草やデントコーンなどの作物を作れない農家は瀕死の状態にある。
牛乳を生産してくれるホルスタイン種は草だけ食べていれば健康というわけではない。体型が大型化したくさんの牛乳を出すために品種改良されてきた牛たちはコーンや穀物を食べなければエネルギーが維持できず健康を害してしまう牛たちがほとんどだ。
自家産の牧草を与えている酪農家でも最低限、穀物の飼料価格高騰のあおりは受けている。
それから乳牛は成長して分娩、乳生産ができるようになるのに24ヶ月はかかる。母牛に授精して妊娠し分娩するまでが人と同じ10ヶ月。つまり1〜2年先の計算をして牛を増やしたり減らしたりしなければいけないためすぐに経営状態が悪いから牛を殺して減らそう、出荷乳量を減らそうなんてことはできない。
2年後の利益を見込んで酪農家は牛たちを飼っている。

生産者の苦境いつまで

いつから酪農家は国や乳業の言いなりになってきたのか。
現場は本当に深刻な状況だ。
たとえ乳価が上がったとしてもこのまま飼料価格が高騰し続ければ経営状態は傾いたまま崩壊する。
牛乳が値上がりすることで消費者が買い控えてしまう恐れもあり、牛乳の消費がより一層低迷してしまう。
ギリギリのラインで踏みとどまってきた酪農家は2〜3年の間にかならず離農してしまう。それだけ長期的に苦しい状況なのだ。
国の無策な経営規模拡大補助事業も間が悪く、状況の悪化に拍車をかけている。

我々酪農家は生産した牛乳を乳業メーカーに全量買い取ってもらうことで生計が成り立っている。
ほとんどの生産者は牛乳の流通、製品化、加工技術、販売能力を持ち合わせていないからだ。

勝手に酪農家が牛乳を売ってはならないと法律でも決まっている。衛生的にも問題がある。

消費者の認識の齟齬(食い違い)

戦後復興期から現在まで学校給食にはじまり、牛乳は庶民の食卓を支えてきた。卵と牛乳は日用品として安く買えるという認識が定着してしまった。
コンビニやスーパーにいけばいつでも買える食品。
生産者は毎日、牛たちの世話をして休みなく牛乳を出荷していることを忘れないでほしい。我々のほとんどの牧場が企業や法人ではなく零細の個人事業主であり自営業者です。大半の酪農家は家族労働によって牧場を運営しています。

大量生産、大量消費のいまの社会は終わろうとしています。

牛乳がいつでも安くて、安心・安全なのはそういった酪農家がいるからなんです。どうか心に留めておいてください。

値上げしても酪農の未来のために、牛乳飲んでほしいです。私達はみなさんが牛乳や乳製品を必要とする限りは生産するつもりです。

ムーンラブちゃん


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