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とある。episode 5 共通点だった


車窓から見える景色は
横へ横へと流れていって

後ろを覗き込むと見える景色は
ただ遠くへ流れていって
小さく小さく 見えなくなっていく


追いかけることが出来ないから
追いかけなくていいから 気持ちが楽だった



車窓の外に
あのときの想い出を流すような気持ちで

列車の揺れに身を委ねて目を閉じた




忘れられない人がいる。

君が振り絞るようにしてようやく伝えてくれた
その言葉

はじめから知っていた
その言葉

それでも何か変わるかもしれない そう思って

君もそのつもりだろうと気づいていたから
一緒にいられる それだけで良かった


良くなかったけど
それが一緒にいられる理由だった


君にとってのその忘れられない人は
僕にとってはきっと君になると思うから

君の気持ちが痛いほどに分かってしまう

分かれば分かるほど

君の心の中にある真実は
誰かが動かせることでもないというのが現実で
受け入れるしかなかった


そんな歓びとは言えない共通点は
二人をなんとかここまで繋いでくれていた



君から伝えてくれるのを待っていたんだと思う

伝えてくれたら悲しくなるのも分かっていて

それでもいつか
この日が来ることを不思議と望んでいた


君の心の中の真実に 君が気づけて良かったんだ


列車の揺れと一緒に漂って
悲しいよりもどこか清々しい気持ちになった


よし、次の駅で降りてみよう。



とある。主人公なあなたへ

とある誰かのストーリーを切り取って

誰かだったり自分だったり
それとも誰でもないのかもしれない

フィクションだったりノンフィクションだったり
どちらかだったり両方なこともある

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