国連未来サミットとウェルビーイング指標

 ●「国連創設75周年記念宣言のポイント 

2020年9月21日、「国連創設75周年記念宣言」が採択され、加盟国は国連事務総長に対し、宣言が言及した課題に対応するための提案を報告するよう要請した。同宣言の前文には、次のように書かれている。

<「国連は戦争の惨害から将来の世代を救うために創設された」「世界は、不平等、貧困、飢餓、武力紛争、テロ、不安定性、気候変動、およびパンダミックに苦しめられている 。挑戦に応えるには多国間主義の再活性化が必要」「平和と安全、開発及び人権という国連の三つの柱は相関関係にある。持続可能な開発のための2030アジェンダが我々の行程表」>

 また、同宣言の主文のポイントには以下の柱が含まれている。

⑴ 誰も取り残さない:2030アジェンダの完全かつ予定通りの実施を決意
⑵ 地球を守る:より良くグリーンに復興する歴史的機会
⑶ 平和促進・紛争予防:敵対行為防止のための外交手段の強化を事務総長に要請
⑷ 女性・女児を中心に置く:ジェンダー平等、女性参加及び女性と女児のエンパワメント実現のための行動を加速化
⑸ 信頼関係の構築:不平等の根本原因に対処
⑹ 持続可能な資金確保:透明性、説明責任と効率的資金利用を促進
⑺ 若者の声を聞き、共に働く:若者は平和と開発のために欠かせない要素

●国連事務総長の「我々の共通のアジェンダ」報告書

 これらを実現するために2021年9月までに「我々の共通のアジェンダ(OCA)」を前進させ、現在と将来の課題に対応するための提案を報告するように国連事務総長に要請した。
 これを受けて事務総長は2021年9月に同アジェンダ報告書を提出し、勧告の一つとして、グローバルガバナンスが抱える現在と将来の諸課題への対応を議論するための「国連未来サミット」の開催を提案し、本年9月21日、閣僚級準備会合を開催し、来年9月22-23日に同サミットを開催することになった。
 事務総長が提出した「我々の共通のアジェンダ」報告書は、国際社会が現在と未来の諸課題に対応するために取り組むべき課題と対応策について包括的に提言したが、そのポイントは次の通りである。

⑴ グローバルガバナンスの強化:国際公共財の保護についての合意形成の構築。未来サミットの開催を提案。
⑵ 若者及び未来世代への注目:若者及び未来世代との団結・連携の深化
⑶ 社会契約の刷新:基盤として信頼、包摂・参加、人々の福祉と地球環境を考慮した指標(GDPを補完
⑷ 新たな時代に適した国連の確保:安保理改革及び総会の再活性化を含め、国連システム及び事務局の変革

GDP指標を補完するウェルビーイングの主要指標
 
 国連事務局は来年9月の「未来サミット」の成果文書作成に向け、「我々の共通のアジェンダ」報告書を踏まえたあり得べき論点を示し、加盟国間の議論を促進するため、年初から「GDP指標の補完(Beyond GDP)を含む政策ペーパーの作成に着手。
 国連システムの内外の既存イニシアティブを基に、経済活動、社会開発、環境持続可能性を測定するための国家データ収集能力及び分析ツールを強化し、既存のGDP測定値を補完する,10~20で構成される主要指標を来年3月までに作成すべく、ハイレベル独立専門家グループの創設を事務総長は提起。
 途上国の多くは、今年9月のSDGサミットが開催予定であることを踏まえ、それに先立ち事務局主導で未来サミットの内容を議論することに非常に慎重で、9月までに「未来サミット」の議論の枠組みに合意できるかが現在の焦点であり、同サミットの内容についての議論は9月以降に本格化する見通しである。

令和5年の「骨太方針」とウェルビーイング指標

 6月7日に公表された政府の令和5年の骨太方針「経済財政運営と改革の基本方針2023」案には、「成長と分配の好循環」の実現状況を各種指標(一人当たり実質GDP,Well-being(生活満足度)など)から検証する」と明記され、「1、中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営」の中で、次のように書かれている。

<政府の各種の基本計画等におけるKPI(重要業績評価指標)へのWell-being指標の導入を加速するとともに、こどもに着目した指標の在り方について検討する。さらに、地方自治体におけるWell-being指標の活用を促進する」>

 さらに、「5、経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進」の中で、「質の高い公教育の再生等」について、次のように明記している。

<持続可能な社会づくりを見据え、多様なこどもたちの特性や少子化の急速な進展など地域の実情等を踏まえ、誰一人取り残されず、可能性を最大限に引き出す学びを通じ、個人と社会全体のWell-beingの向上を目指す(自己肯定感など獲得的要素と人とのつながりなど関係性に基づく協調的要素との双方や、教師等のWell-beingを含む)。>

 これらの問題について今朝8時から開催される自民党の「日本ウェルビーイング計画推進特命委員会」で議論するが、子供のウェルビーイングの向上のためには、親と教師のウェルビーイングの向上も重要課題であることを強調したいと思っている。

 

 


      


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