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入れ子

どこまでも続く一本道の途中に
赤い気球がポツンと見える
これから大空へと旅立つのか
それとも蜃気楼か何かなのか

メガネをつくる時にいつも思う
単なる一枚の写真ではなく
そこには確かに世界があって
何十億という暮らしの営みが
確かに行われているのだ

オートレフラクトメーター
検索してみて名まえを知った
単なる計測機器ではなく
世界はひとつではないという
哲学の扉を啓いてくれる
とんでもない道具だった

マトリョーシカと同じように
この宇宙が入れ子の構造を
取っていることを教えてくれる
ちょっと危ない代物だった

この何十年かの間に
余りに多くのメガネを
つくり過ぎてしまったのだろう
ランドルト環のままなら
私の心もまた違ったものに
なっていたのかもしれない






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