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【イノベーション】参加型リーダーシップが革新的な職場行動を高める~パキスタンの研究より(Fatima et al., 2017)

今日も革新的な職場行動(Innovative Work Behavior)を取り上げます。パキスタンの研究です。(画像はバスケ日本代表の影響です)

Fatima, T., Majeed, M., & Saeed, I. (2017). Does participative leadership promote innovative work behavior: the moderated mediation model. Business & Economic Review, 9(4), 139-156.


どんな論文?

本研究は、参加型リーダーシップと、変化へのコミットメントや革新的な仕事行動(Innovative Work Behavior:IWB)との関連性を検討したものです。


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筆者らの問題意識は、参加型リーダーシップが研究上、まだまだ未成熟であることにあります。曰く、「参加型リーダーシップはまだ発展途上であり、参加型リーダーシップがどのようなメカニズムで従業員にさまざまな成果をもたらすのかを研究する必要がある(Miao et al, 2013)」とのこと。

こうした背景から、パキスタンのサービス業に従事する352名を対象とした定量調査・分析を行い、上述のメカニズムを明らかにしました。

つまり、

参加型リーダーシップは、メンバーの変化に対するコミットメントを介して、革新的な行動を高める。この影響関係は、メンバーの「チェンジ・レディネス」(変化に対する心構え)によって高められる。

というのが、筆者らの仮説であり、統計的な分析の結果、仮説は支持されました。


参加型リーダーシップとは

ここで扱われている参加型リーダーシップは、意思決定をする前にメンバーに対して意見やアイディアを求め、その提案を組織における意思決定に反映させる、といったリーダー行動を指すと言われます。

メンバーの挑戦を奨励・承認したり、意思決定に巻き込むようなインクルーシブな観点を持ったリーダー行動、という意味では、インクルーシブ・リーダーシップと似ています。

参加型リーダーシップによって、意思決定の一翼を担うことになるメンバーは、リーダーが自分たちを組織の重要な一部とみなしている、という感覚を得、特別な存在だと感じ (Somech, 2005)、その結果、変化へのコミットメントが高まる、と、過去の研究から説明されています。

また、参加型リーダーシップがIWBに与える影響についても、以下のように述べられています。

参加型リーダーは、意思決定に参加するよう促すことで、従業員と力を共有することをためらわない(Benoliel & Somech, 2014)。このような積極的な行動により、従業員は自動的に良い業績、仕事への満足度、その他のポジティブな結果を示すようになる(Miao et al, 2014)。言い換えれば、従業員はリーダーから学び、革新的な仕事行動のようなポジティブな成果を示すことで、リーダーのポジティブな行動を模倣しようとするのである。

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(この部分に関しては、若干ロジックが弱い印象を持ちました。参加型リーダーシップを通じて、メンバーがポジティブな結果を示すようになる=革新的行動を取る、というのは少し飛躍があるように感じてしまいます。)

また、参加型リーダーシップとIWBの間を、変化へのコミットメントが媒介する点に関し、社会的学習理論(Bandura, 1977)が参照されます。かいつまんで言えば、リーダーの行動をメンバーが学習し、模倣することで、行動変容を起こすというものです。

この社会的学習理論を踏まえ、以下のようにメカニズムが説明されています。ここも、多少強引さの見られるロジックでした。

従業員はリーダーを観察し、職場で肯定的な感情を示すことで、リーダーの行動を模倣しようとする。これが変革へのコミッ トメントを高めるのである (De Jong & Hartog, 2007)。従業員が革新的な職務行動を示すようになるのは、このようなコミットメントの高まりによるものである。要するに、従業員はリーダーを観察することによって環境から学び、この学習によって行動を形成するのである(Bandura, 1977)。職場での積極的な行動を繰り返し観察することで、その行動が採用される 。したがって、ポジティブな行動は、認知的学習プロセスの結果としてポジティブな結果につながる(Bandura, 1977)。このことから、参画型リーダーシップは、従業員の変化へのコミットメントを通じて、革新的な職務行動と正の相関関係があると想定してよいであろう。


チェンジ・レディネス

参加型リーダーシップが変化へのコミットメントを介して、IWBを高めるというメカニズムに加えて、もう一つ、調整変数が扱われています。これが「チェンジ・レディネス」(変化への心構え)です。

チェンジ・レディネス (Change Readyiness) とは、メンバーらが、自分たちには変革の準備が整っており、与えられた変革は組織にとって必要で、リーダー は変革に全面的にコミットしており、提案された変革は肯定的な結果を もたらすと信じていることを指す (Holt et al, 2007)ようです。

本研究では、変化に対する心構えができている従業員ほど、参加型リーダー のもとで、変化に対するコミットメントを示す可能性が高い、と想定しています。

(これも、「そりゃそうだろ」という感じがしなくもないです)

※この研究では、IWBに関する設問は、メンバー本人の自己評価で回答されています。


感じたこと

ここのところ、集中的にIWBに関する論文を見てきましたが、この文献は他のものに比べて、少しツッコミどころの多いものでした。

しかし、インクルーシブ・リーダーシップと似たような概念である「参加型リーダーシップ」とIWBの関連を示した論文ということで、個人的には押さえておくべき内容でありました。

逆に言えば、日々論文に触れることで、ツッコミどころがわかってきたとも言えるかもしれません。いわゆる「先行研究を批判的に見る」という態度が少しずつ作られているのかもしれません。

日々コツコツ、ですね。

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