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【ブックレビュー】古谷実『サルチネス』の主人公のモデルはあの寅さん??

この漫画は笑いあり涙あり、さらに読み終わった時に暖かい気持ちになれる傑作である。山田洋次監督作品のキャッチフレーズのような紹介であるが、そのストーリーたるや決して山田作品として映画化されることはないだろう。

どちらかと言えば是枝作品のように暗い事件を重いテーマをもってドキュメンタリー風に描かれるべきストーリーであるかもしれない。でも敢えて山田洋次監督作品に無理やり当てはめるなら主人公の中丸タケヒコは寅さんだ。

映画『男はつらいよ』は主人公の寅さんを中心にストーリーが進んでいく。トラブルがやってきたり、恋をしちゃったり、その都度寅さんが起こす行動や言動の人間臭さがこの映画の魅力であると思う。

独善的であるが的を得た行動や発言、雄弁な語り口、爆発する感情。寅さんが持っているこれらの要素が中丸タケヒコに全て入っている。そういえば妹がいるのも同じで、寅さんにも中丸タケヒコにも愛する妹がいる。

さて漫画『サルチネス』のストーリーについては、妹の幸せしか願っていないニートで変わり者の主人公中丸タケヒコが、自分の存在が妹の幸せを邪魔している、と考え東京に行き自立しようと奮闘する話だ。

ニートと言ってもいわゆる引きこもり的な状態ではなく、中丸タケヒコは物心ついた頃からずっと修行をしてきた。時計の秒針を1秒ずつ声に出して数えることを2ヶ月続けたり、顔から下を全部お庭に埋めて3ヶ月過ごしたり。そんなことをずっとしてるから働いてない。

そのような修行によって中丸タケヒコは何が起こっても動じない精神を得た。だから、決めたことは躊躇なく実行する。それがどれだけ他人の迷惑になったり、バカなことだったとしても。

目を開けてまず見えた人の股間をモミモミすると決めたらその対象が警察であろうとやってのけたし、動物に触ることが出来ない金持ちの男と世界一のチーズを作るために旅だったり。

どうやってこんな話が笑いあり涙ありの傑作になるのか。

『行け!稲中卓球部』のギャグセンス、『グリーンヒル』の哀れな男の優しさと思いやり、『ヒミズ』のヒリヒリする心の葛藤、『わにとかげぎす』の一見正気に思える狂気、それらを綿密なキャラ設定とセリフで表現してきた古谷実先生の手にかかれば笑いあり涙ありの傑作になるに決まってる。

数ある古谷作品の中で僕が一番好きな作品です。

寝たくても寝られない中年男子、寝てばかりの中高年女子、全然寝てない男子高校生、健康的にねむる女子高生におススメです。

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