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何年たっても忘れられない花束のプレゼントの思い出


今から30年以上前の話です。
保育士という言葉はなく保母さんと
呼ばれていた頃、わたしは20代のかわいい
先生でした。

自分で言っちゃあいけませんね・・・


周りを田んぼで囲まれたのどかなのどかな保育園
でした。
野菜を持ってきてくれるおじいちゃんがいたり、
漬物を持ってきてくれるおばあちゃんがいたり、
畑で育てた花もたくさん届きましたっけ。

100人ほど子どもたちはいたのですが、
ゆったりアットホームな保育園でした。
そういう時代でもあったのだと思います。



卒園式のことです。
わたしは次年度から別の地域の保育園に勤務
することになっていました。

卒園式が終わり、園長先生がそのことをみんなの
前で話しました。
わたしからも挨拶をしたと思います。

わたしは2歳児クラスの担任をしていました。


泣いたり笑ったりの別れをして、会場の片づけを
しているときだったと思います。


玄関の掃除をしていた職員に呼ばれていくと
さっき送り出した年長組の女の子と
おばあちゃんが立っていました。
そして包装紙につつんだお花を手渡して
くれたのです。


恥ずかしがり屋のその子のほっぺたが真っ赤
だったことを覚えています。


おばあちゃんが言いました。


「この子がどうしても先生にお花があげたいって
 言っての~、
 花なんか今、咲いてねえよって言ったんだ
 けどの~、
 あそこにあるって言っての~、
 仏壇の花、つつんできたんだて~」


「○○ちゃん、ありがとうね!
 せんせい、嬉しいよ!」


わたしは、彼女をぎゅっと抱きしめました。



卒園式から帰った後、おかあさんは午後からの
仕事に行かれたそうです。
近くにお店などありませんので、おばあちゃんは
買いに行くことなどできません。
あの当時のおばあちゃんは
車の運転が出来る人はごく少数でした。
いつも送り迎えで歩いてきていたおばあちゃんでした。
かわいい孫の思いを汲んで、お仏壇の花をさげて
つつんでくださったのです。


せんせいにお花をあげたい!と思ってくれた
6歳の女の子の優しさ、
その思いを受けとめてくれた
おばあちゃんの優しさ、


そのことを想うと
そのことを思い出すと
胸がいっぱいになります。



お花のプレゼントはとても嬉しいものです。


でも、こんなすてきなお花のプレゼントの
経験のある人はまれなのではないかと
自負しています。



生涯、忘れることのないわたしのたいせつな
たいせつな思い出です。












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