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麻婆カレー。四川省成都に軟禁状態でできる事といったら・・・。

今夜は麻婆豆腐にを作ろうと思っていたら、夫から「カレー味とのミックスで!」というリクエスト。仕上げ前にS&Bのカレー粉を入れてみたら、いい感じに麻婆豆腐とカレーの中間風なものができました。レシピは文章の最後に。

麻婆豆腐といえば中国四川省の名物料理。今日は2008年5月に訪れた四川省の首都成都に軟禁状態になった時のお話です。

世界一周3年目の2008年は、オーストラリア、ニュージーランド、カンボジア、ベトナムを経て5月初旬から陸路で中国に入っていました。5月12日に雲南省の首都、昆明を出て四川省の成都へ向かった夜行列車は、2時間遅れで到着。日本以外の国での列車の遅延はよくある話なので、これくらいは許容の範囲だなぁと思っていました。

午後0時半に乗り込んだ夜行列車
車窓からの壮大な景色も旅の醍醐味

駅からタクシーで予約していた宿に行き、チェックインをしようとすると宿のスタッフから「ご無事の到着で何よりです」と言われました。聞けば、昨日の午後に四川省で大地震があったというのです。今では四川大地震と呼ばれているようでマグニチュード8.0だったようです。既に列車の中にいた我々はこの事実に全く気づいていませんでした。

それで納得がいきました。夜が明けた朝の列車の中で中国人がやたらに携帯電話でどこかに電話している理由が。「中国人って携帯で話すのが好きなんだなぁ」と、のほほんと思っていたのですが、あれは緊急事態の連絡だったのです。駅でタクシーに40-50人の行列ができていたのも恐らく地震のせいだったのでしょう。何も知らなかったので「成都の人って裕福なのかしら?」などと思っていました。

チェックインを済ませて街に出てみると、外壁の一部がはがれて道にタイルや壁材が散乱している場所が多数。お店はほとんどが閉店していて、1時間も歩いてやっとたどり着いたカルフールさえも閉店。同じく路頭に迷っている他の人から、近所で開いているスーパーがあるという情報を得て、やっと食料を買い求める事ができたのが、到着した初日にやった事でした。

街の様子

本当は成都から行ける世界遺産・九寨溝(ジュウザイゴウJiuzhaigou)を楽しみにしていました。しかし、九寨溝はより震源に近い場所で、復旧までに数か月はかかるだろうという話。今回の旅では断念せざるを得ませんでした。それではと、2日目、3日目は日帰りでバスで行けそうな近郊の観光地へ行こうと試みたのですが、待てど暮らせどバスは来ない。結局諦めて、宿でネットをして食事をするために外に出るだけという日々が続きました。

地震後3日ともなると、余震が続いて家の倒壊を恐れた中国人が道の中央分離帯にテントをはって暮らすようになっていました。仕事にも行けないせいか、テントの外で日がな一日マージャンに打ち興じる姿もあって、それなりに日常を取り戻しつつある感じになってきました。

宿では、たまたま休みで帰郷していたスタッフが、自宅アパートの下敷きになって亡くなるという大事件があり、スタッフ一同が涙にくれる場面もありました。どこの国においても自然災害というのはやり場のない気持ちにさせられるものです。シンガポール人の旦那さんと日本人の奥さんが経営する宿でしたので、宿泊客は全員日本人。交通網の麻痺で我々と同じく軟禁状態になった旅人同志「こうなったら四川料理を堪能するまでだ!」と腹を括って、毎晩のように四川料理屋に繰り出すことになりました。

5月13日から21日までの9日間の滞在で、麻婆豆腐を始め、火鍋やらその他の四川料理を堪能した日々。日本でも有名な四川省の料理は、本当にどれを食べても安くて美味しくて、観光できない鬱憤を晴らしてくれました。今回は麻婆豆腐を食べた時だけをご紹介します。


〇1軒目 5月15日 昼食(店名:不明)

左上:塩煎肉、左下:麻婆豆腐、右上:電脳中心、右下:メニュー

コンピュータ用品を売っている「電脳中心」をバスで訪ねた帰り、人が多く入っている食堂を発見。初めて四川省で麻婆豆腐を注文しました。思ったよりも山椒が少なく辛さも適当で、豆腐が柔らかくて美味しかったです。一緒に注文したのは「塩煎肉(イェンジェンロウ)」。生の豚肉を野菜と一緒に炒める料理だそうです。キリッと塩味が効いてご飯がすすむ一品でした。

因みに「回鍋肉」は一度茹でた肉を鍋に戻して(回hui)、再び調理する料理の事をさすそうです。日本では生肉をフライパンに入れてキャベツと炒めて味付けするイメージがありましたが、その調理方法だと「塩煎肉(イェンジェンロウ)」になるってわけですね。

〇2軒目 5月15日 夕食(店名:口福餐)

宿で同じ部屋になったチャリダーのTさんと、口福餐という食堂へ赴き、宮爆丁鶏、麻婆豆腐、青菜湯、ビール、ご飯を注文。3人で662円だったと記録に残っています。

こちらの麻婆豆腐は昼間よりは少し胡椒辛く、山椒が粒で入っているので山椒に当たると舌がビリビリと痺れました。痺れる辛さに慣れていない我々にはやや食べづらい感じ。

宮爆丁鶏は宮保鶏丁あるいは公爆鶏丁とも呼ばれる中華料理の定番料理だそうです。鶏肉とピーナッツを唐辛子とともに炒めた料理で、四川料理、山東料理、貴州料理、北京料理にあってそれぞれ地域ごとに味付けが異なるそうです。こちらのお店は生姜と赤くて大きな唐辛子がたっぷり入って四川風味満載でした。

左上:麻婆豆腐、左下:宮爆丁鶏、右上:スープ、右下:ビール

料理の名前の由来は所説あるらしいですが、「宮」「宮保」は人の名前から来ているそうです。清の時代の官僚であった丁宝楨が死後に贈られた官職名が「宮保」でした。丁宝楨が鶏肉とカシューナッツをピリ辛に炒めた料理を考案して宴席で出したところ好評で、非常に強い火力で炒める時に使う感じ「爆」、鶏肉の角切りを「鶏丁」と呼ぶところから、料理名が現在に至ったようです。「牛ヒレ肉ロッシーニ風」を思い出すエピソードです。

青菜湯はトマトとほうれん草のスープですが、味がとても淡白。味付けの濃い四川料理では最後にこうした柔らかい味のスープを白米にかけて〆とするのがぴったりでした。

〇3軒目 5月16日 夕飯(店名:陳麻婆豆腐)

この日、いよいよ満を持して本命の「陳麻婆豆腐」へ。地震で閉まっていたのがようやく営業再開されたのです。宿にいる日本人10人の仲間に入れてもらったので、10人で8品11皿とご飯を堪能して一人300円もいかないという破格の大宴会となりました。

右上:麻婆豆腐、右下中:叉焼、右下右:スープ

麻婆豆腐は普通のと上位版の両方を注文。価格の高い方がより山椒と唐辛子が多くて、舌がビリビリジンジンしました。とはいえ、山椒が粉末になっているので、昨日のように粒をガリッと噛んで衝撃の舌麻痺になる事はないのが上品だと思いました。今までの中では一番旨味を強く感じて美味しいと感じましたね。旅行者の中には辛すぎて味がわからないとか、お腹を壊して数日間治らなかったなどという感想もありましたが、私個人としては、本場の老舗のこの味が一番満足度が高いと感じました。

少し辛い脂身の多い豚の叉焼は、下に粟のような穀物が敷いてあって味が染みてこの上なく美味しく、スープは苦味のある葉と軟骨の唐揚のような物が入り優しい味。

赤と青の唐辛子と同じ大きさに切った鶏肉は素揚げしてから炒められていたものでした。とっても辛いけど旨い。ヒーヒーいいながら唐辛子を避けて食べました。2品目の叉焼は、下に高菜の漬物が敷いてありました。豚味の染みた漬物をご飯にかけてスープをかけると最高のしめ。色鮮やかな豚足の照り焼きはコリコリした軟骨とネットリした皮で私は好きでしたが夫はNG。キクラゲは青と赤の唐辛子がたっぷり乗ってこれも辛いですが美味しい。本格四川を満喫した夜でした。

大宴会状態

〇4軒目 5月17日 昼食(店名:陳麻婆豆腐)

昨日の「陳麻婆豆腐」があまりに美味しかったので、我が家二人だけでリピート。この時は、麻婆豆腐、青椒肉絲、坦坦麺、ご飯を注文して二人で500円弱でした。

左:店内、右上:ティッシュ、右下:黄色い雑穀が入った美味しいご飯

大人数だと窓の無い円卓の個室に案内されたのですが、この日は、大通りに面した席。ロゴの入ったティッシュも頂きました(実は有料でしたが)
。接待されているらしい白人夫妻と中国人のグループなどもいますが、大抵は中国人のお客様で、贅沢な内装の店内は高級店の構えでした。メニューは高くなるとゲテモノ(蛙、蛇)になるというのが、さすが中国!と妙な所で感心しました。

左:麻婆豆腐、右上:青椒肉絲、右下:担々麺

そういえば、四川といえば坦坦麺だよなぁ。と思ってずっと探していたのですが、成都では下火らしくあまり見かけませんでした。しかし、この店では小さな碗盛で3元で出していたので注文。上に漬物が乗って麺の下に少しだけひき肉の入った辛いソースが敷いてある。おいしいのにどうして人気がないのか不思議でした。それにしても日本の坦坦麺は随分進化しています。オリジナルの担々麺はひたすら素朴でした。

2日続けて食べても、ここの麻婆豆腐は美味しく感じられたので、自分がかなり気に入っている事がわかりました。青椒肉絲は美味しかったですが肉が少なくてやや不満足。もう、この頃になると普通に美味しいだけでは満足できないという高飛車な口になっていたのだろうと思います。

〇5軒目 5月17日 夕食(店名:幸福家宴)

同宿の日本人が宿から徒歩5分のところに、地元民に人気で安くて美味しいお店「幸福家宴」をみつけてきてくれたので8人で伺いました。昨日に引き続き(我が家は昨日の夜、今日の昼に引き続き)、麻婆豆腐を注文したのですが、「陳麻婆豆腐」には旨さも山椒の強さも及ばず。その代わり、他に今まで見た事がない安くて美味しい庶民料理にたくさん出会えた夜でした。

左:麻婆豆腐、右上:平茹肉絲。平茸と豚肉をにんにく、葱、唐辛子、生姜で炒めたもので、今日の1位2位を争う人気の品だった。薄切り肉は片栗粉で下茹でしてあるのかトロッとしているのも旨い。右下:苦瓜炒蛋は思ったより苦くなく爽やかに美味
左:青椒肉絲。肉に片栗粉がまぶしてあってソースが絡まった部分がツルッとしておいしい。右上:魚香絲肉。瓜と肉の細切りとキクラゲの入ったやや辛い炒め物だが「魚香」と名が付くとこのソースになるようだ。酸味があるのが特徴でこれも人気だった。右下:トマトと卵のスープ。見た目がとても鮮やかで美しい。こうした庶民食堂のスープは濃い味の料理の合いの手用なのかどれも味はとても薄くてさっぱりしている
左:双茹焼鶏。マッシュルームと骨付きなので鶏のモモ肉かな?の炒め物で葱とにんにくが入った辛くない味。これだけが15元と2桁でやや高級なのは肉の量が多いからか?またとーってもジューシーで汁をご飯にかけても美味。右上:京醤肉絲(ベイジャンロースー)。甘じょっぱい醤油味の片栗粉付き細切り肉の炒めに白髪葱。これ私のお気に入り。右下:茄子とピーマンの炒め。葱とにんにくと生姜たっぷりで旨い。

8人で8品料理、スープ、ご飯、ビールを注文してお一人様221円。素晴らしい!

といういことで、普通に観光していたらこれ程、四川料理を堪能する事はできなかったでしょう。雲南省から始まって東へ東へと中国国内を移動して観光しましたが、中国全土の料理が美味しいというわけではありませんでした。そんな中で料理が美味しい四川省で足止めをくらったのは、本当に不幸中の幸いだったと言えます。

それでは、「麻婆カレー」のレシピです。基本的には陳建一先生の今日の料理のレシピを参考にしています。
<参考>
きょうの料理レシピ「マーボー豆腐」


★ 『麻婆カレー』
<材料>

  • 木綿豆腐 450g

  • ねぎ 1/3本

  • 豚ひき肉 120g

  • 合わせ調味料
     ―にんにく (みじん切り) 小さじ1
     ―甜麺醤(ティエンメンジャン) 大さじ1
     ―豆板醤(トーバンジャン) 大さじ1
     ―豆豉醤(トーチジャン) 小さじ1
     ―粉とうがらし 小さじ1

  • 鶏ガラ水溶きスープ 200ml

  • 水溶きかたくり粉大さじ 2+1/2~3
     ―かたくり粉を同量の水で溶く。

  • サラダ油

  • 酒大さじ 1

  • しょうゆ 大さじ1

  • こしょう 少々

  • S&Bカレー粉 大さじ2

  • 花椒粉(ホワジャオフェン)適宜

<作り方>

  1. 豆腐は2cm角に切り、塩少々を加えた湯で温めるぐらいに軽くゆでてそのまま鍋に入れておく。ねぎはみじん切り。

  2. 合わせ調味料をボールに入れて合わせておく

  3. フライパンに油を入れて熱し、2の合わせた調味料を入れて中火で香りを出す

  4. 3へ豚ひき肉を入れて中火で炒める

  5. 4へ鶏ガラ水溶きスープを入れて沸騰させる

  6. 5へ水を切った1の豆腐を入れて煮立ったら、酒、しょうゆ、こしょうで味を整える

  7. 6へS&Bカレー粉を入れて全体を馴染ませる

  8. 7へ水溶き片栗粉を入れて強火でトロミをつけ、最後にねぎのみじん切りを入れる

  9. カレー皿にご飯を盛って、8をかけ、花椒をミルで挽いてふりかける


ひき肉を入れたところ
鶏ガラスープ、ねぎのみじん切り
鶏ガラスープを入れたところ
豆腐を入れたところ
出来上がり

カレーのような麻婆豆腐のような不思議な味で美味しかったです。途中、味に変化をつけたくて五香粉をかけましたが、これまた良かったです。是非、お試しください。

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