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制作日誌③:腹ごしらえ

ここでは本作の監督がつづった制作日誌を全7回にわたって掲載します。
本作のご鑑賞と併せて、是非ご一読ください!

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2014年1月。山の木々を覆う濃い霧。足音を際立たせる霜。高沢は冬の寒さが本格的になっていた。これから2週間かけて冬の高沢を撮影する。

作品のコンセプトは集落の四季を通して、人々の暮らしと文化をみつめる。この時期は年明けということもあり、集落の行事も多い。今回の目玉は集落にある説教所で行われる「御文章起こし」。

集落のお堂の上方の位置に家を構える高澤喜純さん(当時84歳)。初めて高沢を訪ねた時に会いに行った人。つまり毛坊主だ。葬式や出産といった行事を取り仕切ってはいないが、今回の御文章起こしでお経を読んだり、伝統の祭りを仕切ったりしている。喜純さんの家は代々このような役割を担ってきた。僕たち撮影スタッフが家にお邪魔するといつもご飯の心配をしてくれた。

食料に関しては集落を下りて定期的に買い出しすることを考えていたのだが、心配はいらなかった。まず御文章起こしで振る舞われた煮しめをたくさんいただいた。味は砂糖たっぷり、醤油たっぷりのおかげで少し濃いめ。血圧が心配になったが、冬も畑仕事をして汗をかく人のための、高沢伝統の味付けだそうだ。具にしっかり味が染みてて、冷めても美味い。あるとついつい手を伸ばしてしまう、癖になる代物だった。

季節の野菜は大根。撮影が終わり、借りている集落の宿に戻ると玄関前に大根が連日置かれている。日々の積み重ねによって大根の量はスタッフ三人の胃袋では収集がつかなくなっていったが、溢れるほどお腹は満たされ、とてもありがたかった。

そして、集落内で唯一商いをしている高澤英輔さんの豆腐屋。ここの揚げ豆腐は大きく、味も絶品。軽く焼いて醤油を垂らすと最高の肴になる。今回の豪雨でお店を休まざるを得なかったが、営業再開に向けて準備していくとのこと。高沢を訪れた際は是非ご賞味あれ。

御文章起こしで振る舞われた煮しめをいただきスタッフの夕食に(2014年撮影)
大根祭りが連日続きました(2014年撮影)


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