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90年代音楽を知らないアナタへ その69 I'LL MAKE LOVE TO YOU(94)/BOYZ II MEN スケベに蜂蜜コーティングをしたヌプヌプ・トロトロなベビーフェイスのクリエーション

ガールズグループが台頭した90年代を通して、唯一成功したといっていいボーイズグループがこのBOYZ II MENだろう。デビューしたてこそ地味ではあったが、すぐに「END OF THE ROAD」のロングヒットを放ち一躍トップスターの座へ。それ以後、極上のハーモニーを武器にしたゴスペル調の歌唱にヒップホップを融合させたクールなシンガーグループとしてヒットを連発していくのである。

そんな中でも特別なヒットになったのがこの「I'LL MAKE LOVE TO YOU」である。ベビーフェイスが手掛けたこの曲は、彼らしいドスケベに蜂蜜をかけたような甘くてヌプヌプしたセックスソングの金字塔の一つと言って過言ではない。

わたしが個人的にベビーフェイスが作る曲ですきな所は、イマジネーションをかき立てるエロであるところだ。決してモノそのものを直接的に言葉にすることがなく、雰囲気や気持ち、言動で「ソレ」をイメージさせるというテクニシャン。だから曲そのものは上品で、どんな世代にも受け入れられるのだと強く感じている。それはベビーフェイス自信が年齢的にそこまで若くないということもあろうが、先を見据えたヒットを作っているという自負があったに違いないと、勝手に解釈する。愛の歌は綺麗な歌になるが、セックスの歌は衝動的で一時的な面白さはあっても、大人になったら口ずさみ辛いし、ましてや子供に聞かせられないという弱点がある。一過性のヒットに終わってしまうリスクが大きいのだ。

その反面、におわせる歌はムードが作れる。BGMとしても心地よい。車の中でラジオから流れてきてもお父さん・お母さんは動揺することがないのである。子供へ堂々と聞かせられる歌、そこに裏テーマとしてセックスがあるのは全然OKなのだ。大好きな歌が大人になってやっと意味が分かったということは多くの人が経験していると思うが、何年もたって本当の意味が分かったという驚きでますますその歌がすきになるという事例は少なくない。そこまで狙っていたかどうかは分からないが、ベビーフェイスの作る歌は「エロい」けど、「深い」のだ。

それをしれっと若い青年コーラスグループに歌わせるというちょっとしたイタズラ心が憎い。大人の歌をアイドル歌手に歌わせるというのは、それこそ日本の歌謡曲と同じベクトル。実年齢と歌とのギャップは、世界共通で魅力的に光ってみせるのだと思う。


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