人を動かす文章のつくりかた

 見ず知らずの誰かに考えを伝えるのは難しい。その考えで誰かを動かすのはもっと難しい。

 僕は、ビジネス書、特に啓発書を編集する仕事をしてきた。文章で見ず知らずの誰かに考えやノウハウを伝え、誰かの行動を変えさせる。そのサポートをする仕事だ。そんな仕事をしていくなかで、おぼろげながら「こういう文章が人を動かすんだろうな」ということがわかってきたので、今日はちょっとそのあたりの話をしたい。

注)本というパッケージをつくるなかで見えてきたノウハウなので、あらゆる文章に応用可能かはちょっとわかりませんが、なんかの参考になるとうれしいです。

まず「共感」で信頼を構築しよう

 人を動かしたいなら、まず書き手を信頼してもらわないといけない。(信頼できない人の言うことは誰も聞かない。)そのときのキーワードは一にも二にも「共感」である。お笑いの世界でいう「あるある」だ。「この書き手は自分と同じなんだ!」と思ってもらうことがすべてのスタートだ。

 たとえば、

「人を動かす文章のつくりかた? ほんとかよ。偉そうだな」と思われたかもしれません。

 といったメッセージから入ってみる。すると、読み手は「こいつ、わかってんじゃん」という気持ちになる。(ならない?)

 これがダイエットに関する文章なら、

 ダイエットを始めたいと思いつつも、過去に挫折したこともあり、なかなか一歩を踏み出せないのではないでしょうか? 「ダイエットが大切なんてわかりきっているけど、なかなか続かないから困ってるんだよ」と思っているかもしれませんね。

 といった具合で語りかけてみる。

 とにかく相手の目線に立ってみることだ。読んでいる人になりきる。これが大切。

 ちなみに、飽きずに読み進められる文章も「共感」をうまく使っている。

 長々と概念的な話が続いたら…

 もう、わかったよ。早くやり方を教えてくれよ、と思われているかもしれない。しかし、もう少しだけ説明させてほしい。

 説明が長々と続いているときは…

 長いと思われるかもしれないが、実はここが大切なポイントなのでしつこいかもしれないが繰り返そう。

 など。つねに「こう思ってますよね? でもこちらはこういう意図なんですよ」と絶妙なタイミングで、できれば少し「先回り」して伝えると読み手は安心して読み進めてもらえる。

「共感→羨望→共感」のサンドイッチで人を動かす

 まず、共感が大切だと述べた。

 ただ、共感だけだと、相手を動かすまでには至らない。「そうだよね」で終わるだけだ。

 共感によって「この人の言うことなら聞いてもいいかも」と読み手が思い始めたタイミングで、ダイエットならダイエットをするとどんないいことがあるかを伝えよう。ゴールを、夢を、指し示すわけだ。

 毎朝、私はベッドから飛び起きます。起きるのがとても楽しみです。体が子どものときのようにとても軽いのです。そして早く誰かに会いたいとウズウズします。食事も美味しいし、体を動かすことも気持ちいい。オシャレも太っているときより10倍は楽しめています。

 羨望。うらやましがらせる。「ああ、こうなったらいいなあ!」と思わせる。「こっちに来るといいぞー!」とこれでもかと畳み掛けるわけだ。

 そうやってうらやましがらせていると、再び、読み手はこんなふうに思うだろう。「まてよ、私には、俺には、無理だ。こうはなれない。この人だからできたんだ」と。

 そこですかさず再び「共感」だ。

 いま、「私には無理だ」と思われたかもしれない。でも安心してほしい。5年前、私もあなたと同じ状況だったからだ。あなたと同じように「こんなふうになれっこない」と疑っていたひとりだったのだ。

 とやる。どうだろう。「え? この人も自分と同じだったんだ」と思わないだろうか。

 この、共感→羨望→共感のサンドイッチをやると「人を動かす」ような文章になる。

 最後にひとつ例文を提示して終わりにしよう。

 あなたがある怪しいセミナーの主催者でそのセミナーに来てほしいとする。その場合、こういう文章になる。

 突然ですが「人生を変えたい!」と思ったことはないでしょうか? たった一度きりの人生。毎日毎日おなじ机にしがみついて淡々と仕事をこなす。5年後、10年後もきっと同じような日々を過ごすんだろうな、などとうんざりしてはいないでしょうか?
(共感)

 はじめまして。AYASIセミナーの◯◯と申します。

 私は毎日が楽しくて仕方がありません。お金にはまず困ることはありませんし、思い立ったときに海外旅行に行くことができます。今年もすでに2回ハワイに行ってきました。自慢に聞こえたらすみません。でもこれは特別なことじゃないんです。
(羨望)

 私も3年前までこれを読んでいるあなたと同じような状況でした。満員の電車に揺られ、上司に怒られ、取引先に謝罪をし…もううんざりだ! そう思ったときにこのAYASIセミナーに出会ったのです。「なんだか怪しいな。流行りの啓発セミナーか?」私も半信半疑で通い始めましたが、本当にあのとき、参加を決めてよかったと心から思います。たった3年で本当に幸せで自由な人生を手に入れたのですから。
(共感)

 もしこの文章を信頼してくださるのなら、まったく違う人生があなたを待ち受けていることをお約束します。一度きりの人生なのに、このまま不満を抱えながら生きていくつもりですか? それとも、この縁を大切にして、最高の人生に舵をきりますか? 決めるのはあなたです。

 まずは、気軽にご相談ください。あなたの連絡をお待ちしています。

 呼びかけるときは「みなさん」ではなく「あなた」を使うのも小さなことだけど重要。目の前の「あなた」に語りかけてるんですよ!という空気を出すのだ。

 共感させて、「こうなるといいよー」と羨ましがらせて、さらに共感で導きたい方向に持っていく。同じことを伝えるのでも、このあたりのことを念頭に置いておくと伝わり方が変わってくるかもしれません。……まあ、こんな「テクニック」なんかより、中身が大切なのは言うまでもないですが!!

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コメント3件

共感という 甘い罠の 共有
素敵な画像、使用させていただきました。ありがとうございます。
面白かったです。そして色々考えさせられました。ありがとうございます。
他のノートも読ませていただきます!
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