「Whisky:シングルモルト”白州”はどこへ消えた?」─ていくすりーの酒場学
突如として人気となったジャパニーズ・ウイスキー。その中でも山梨で作られているシングルモルト”白州”とブレンデッドウイスキー”響”の品薄状態は深刻です。
話によれば、オリンピックイヤーである2020年に年数表記のある白州を限定的にリリースする予定だったようですが、どうやら間に合わないそうで、2021年に数量限定で復刻、2027年に完全復刻予定なのだそう。
日本のウイスキーが世界的なウイスキーコンテストで金賞を受賞したのをキッカケに、海外の観光客が蒸留所や免税店で商品が買い占め出した事が原因の1つ。爆買いの対象になってしまったのはとても大きな要因です。
実際、ウイスキー作りに携わっている方に話を聞いたところ、京都にある山崎蒸留所はまだしも、白州に関しては蒸留器をフル稼働していなかったために、その需要の大幅増についていけなくなってしまったのだと言います。慌てて使っていなかった1棟を洗浄し、組み立てて、いざ動かしてみてはいるものの、今から作ったものが製品化できるのが10年以上先だと考えると、悩ましい。ウイスキーは常に投資なのですね。
合わせて、ブレンデッドウイスキー”響”は、その材料に白州のモルトを使っているため、サントリーのウイスキー史上、最高の出来と評されていた響17年が休売中。今は年数表記のないタイプが発売されています。
世界的に見ても、この大ウイスキーブームについていけなくなっている蒸留所は多いようで、逆に長期熟成の原酒を多く持っている会社は商機が舞い込んでいる状態。いやはや、お酒造りの業界も何が起きるか分かりません。
もし、お店に並んでいるジャパニーズ・ウイスキーが1杯当たりで値段が高くなっていたとしても、それは仕方がないのかも。美味しい事には変わりないですが、スコッチ・ウイスキーを飲む方が安いだなんて、なんだか不思議なモノですね。
国民が国産のお酒を気持ち良く飲める時代が来る事を、切に願います。
『バーテンダーの視(め)』はお酒や料理を題材にバーテンダーとして生きる自分の価値観を記したく連載を開始しました。 書籍化を目標にエッセイを書き続けていきますのでよろしくお願いします。