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知られざる太平洋戦争のドラマ

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太平洋戦争にまつわる数々のドラマを執筆。激闘の裏に隠された、興味深いエピソードをご紹介します。
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記事一覧

知られざる太平洋戦争のドラマ⑳

大戦後も活躍した日本の兵器たち



インドネシアの独立や中国内戦で活躍した元日本軍兵器



 1945年8月15日、太平洋戦争は日本の敗北に終わり、軍は連合国によって解体された。敗戦した時点でも、日本軍は国内外に数多くの兵器を保有していた。それらはいったいどのような末路をたどったのだろうか?

 陸軍兵器と航空機は、連合国に接収されたあとにほとんどが処分された。ところが、南方などの地方にお

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑲

特攻を拒否した「肥田天山雷撃部隊」

艦上攻撃機の新型主力機「天山」

 人間を航空機や特殊兵器に乗せて敵艦へ誘導させて自爆させる「特攻」は志願制となってはいた。が、その実情は体罰や同調圧力、上官からのパワーハラスメントで出撃を強要していたことは否定のできない事実だ。しかしそのような特攻強制の流れに、最後まであらがいつづけた部隊もある。
 特攻を拒否した部隊は、美濃部正少佐が指揮した夜間攻撃部隊の

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑱

「剣」と呼ばれた最強のエース部隊「第三四三海軍航空隊」

最新鋭機とベテランをそろえた精鋭部隊

 開戦当初は敵襲に見舞われなかった日本本土も、長距離爆撃機「B-29」の登場によって安全圏ではなくなった。
1944年9月、マリアナ諸島が制圧され、日本のほぼ全域が空襲圏となってしまう。襲来するアメリカ軍機に日本軍は防空戦を展開するも、ベテランパイロットの不足にともなう技量低下と迎撃用戦闘機の不足で苦

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑰

大空のサムライ・坂井三郎が戦った南方・ガ島航空戦


太平洋戦争緒戦の最強航空部隊

台湾で発足した戦闘機隊である台南航空隊(以下台南空)は、開戦初日のフィリピン攻撃を皮切りに南方各地で活躍。ガダルカナル戦ではラバウル航空隊の主力として連日激戦を続けた、まさに海軍のエース部隊だった。エースと呼ばれる凄腕も数多く在籍し、その中で最も有名なパイロットといえば「大空のサムライ」と呼ばれた坂井三郎中尉

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑯

今村均大将が結んだ革命家スカルノとの友情

攻略後に行った地元への融和政策

「アジアの植民地を西欧諸国から解放する」
日本はこのようなスローガンを掲げてアジア進出を推し進めたが、これが単なる口実だったことは歴史が証明している。
当初は日本軍を支援した現地住民だったが独立の願いは叶えられることはなく、支配者が欧米から日本に置き換わっただけとなった。協力していた義勇軍も日本軍の圧政に反乱をくり返し、

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑮

真珠湾攻撃の裏側、「甲標的」によるもうひとつの奇襲

小型潜水艇によって編成された特別攻撃部隊

国力差10倍のアメリカに対抗するべく、連合艦隊司令長官・山本五十六海軍大将によって発案された作戦が真珠湾奇襲だ。
民主主義社会のアメリカでは国民と議会の声が優先される傾向が強く、世論が反戦にかたむけば対米講和もたやすくなる。そこで山本は、アメリカ太平洋艦隊本拠地のハワイ真珠湾を開戦と同時に壊滅させ、ア

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑭

航空部隊に圧勝した航空戦艦「伊勢」低い砲撃力と小さな甲板の中途半端な装備

日本海軍の伊勢型戦艦1番艦である「伊勢」。航空機も発艦可能な航空戦艦に改造されたことでも有名だが、その一方では100機以上の航空攻撃に完勝したことでも知られている。
もともと「伊勢」は、扶桑型戦艦の3番艦として建造されるはずの船だった。しかし、海軍の予算不足で建造開始が大幅に遅れてしまう。その間に扶桑型の主砲に欠陥が見つ

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑬

パラオ島民と日本軍が結んだ友情譚

緩やかだった海外領土政策

太平洋戦争を語るうえで避けては通れないのがアジアへの進出行為だ。アジアの共存共栄を謳った大東亜共栄圏も、実際には日本を頂点とした支配体制にほかならず、高圧的な占領政策に抗日活動を強めた地域も少なくない。
中国、マレー半島、フィリピン。しかし全ての地域が反日感情を強めたわけでもない。地域がある一方、真摯な対応で固い友情を結べたケースもあ

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑩

知られざる太平洋戦争のドラマ⑩

沖縄戦線、義烈空挺隊の飛行場突入
マリアナ攻撃を想定した特攻部隊

沖縄戦は特攻の見本市とも言うべき、数多くの兵器や作戦が見られた戦いだった。その大半は微々たる戦果しかあげられず、戦艦「大和」の突入作戦ですら、一矢報いることはかなわなかった。
それでも、中にはアメリカ軍に多大な混乱を引き起こした特攻隊もいた。その特攻隊とは、なんと空挺部隊であった。
マリアナ諸島の爆撃機地を攻撃するために、日本軍は

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑨

知られざる太平洋戦争のドラマ⑨

義足の撃墜王、檜與平の復活劇
「鉄脚」の異名を持つ陸軍飛行士

戦闘機の機銃は金属をも撃ち抜く威力があり、そんなもので人間が撃たれたらひとたまりもない。生き残ることが出来たとしても、手足の切断となることも珍しくはなく、不具となった負傷兵は前線から帰還するのが普通だ。
しかし第二次大戦時では、義足を使って戦場に戻り、エースと呼ばれる活躍をしたパイロットもいる。有名なのは、ソ連対空部隊との戦いで右足を

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑧

知られざる太平洋戦争のドラマ⑧

市丸少将が残したルーズベルト大統領への遺言硫黄島における海軍の戦闘

1944年7月、マリアナ諸島の占領でアメリカ軍はB-29爆撃機の拠点を得たのだが、日本本土の空爆については大きな結果を出せなかった。なぜなら、航続距離の不足で護衛機をつけられず、当初の作戦では迎撃されることも少なくなかったからだ。
そうした問題を解決するため、アメリカ軍は小笠原諸島の硫黄島を中継基地にする作戦を発案。日本軍も硫黄

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑦

知られざる太平洋戦争のドラマ⑦

ソ連戦車を圧倒した九五型軽戦車「ハ号」の勇姿ソ連軍と日本軍との国境紛争「ノモンハン事件」

現在でも評価されている旧日本軍の航空機や海軍兵器と違い、陸軍の戦車はとにかく軽視されやすい。しかも、対戦車戦を想定した強力な戦車を保有した欧米諸国と違い、当時の日本は戦車を歩兵支援用としか考えない将校が多かった。
日本陸軍は最後まで低性能の戦車しか持てず、米英戦車に苦戦し続けたのはまぎれもない事実だ。しかし

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑥

知られざる太平洋戦争のドラマ⑥

潜水艦「伊19」による空母ワスプ撃沈の舞台裏
一進一退だったガダルカナル戦

1942年夏から約半年間続いたガダルカナルの戦いは、アメリカ軍の勝利で終わった。しかし、アメリカ軍も決して楽勝だったわけではない。
初期の守備隊は補給の遅れで食糧不足に悩まされ、海上でも日本海軍とアメリカ海軍の間で、幾度も熾烈な戦いが起きた。このことで1943年までは、一進一退の攻防をつづけていたからだ。
とくに42年9

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知られざる太平洋戦争のドラマ⑤

知られざる太平洋戦争のドラマ⑤

マレー半島を早期陥落させた前代未聞の夜間奇襲
「東洋のジブラルタル」と呼ばれたシンガポール

奇襲は敵の不意を打つ戦法なので、隠密性が何よりも重視される。その点でいえば、戦車は奇襲に、致命的なほど向いていない。大型の車体は敵に発見されやすく、エンジンの駆動音は数100メートル先からでも察知されてしまうからだ。
そのため太平洋戦争での奇襲は歩兵中心で行われていたのだが、南方戦線では戦車による奇襲を成

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