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エッセイ/イライラのありか

この前無性にイライラしてしまい、夫に当たってしまった。

ぶっきらぼうになり、あのときの私はかなり感じが悪かったと思う。
虫の居所が悪かったというか、自分の気持ちが整理できなかったと言うか。何か決定的な原因があった訳ではないのに、とにかく無性にイライラしていた。
そんなとき私は、自分のイライラの在り処(ありか)を探すようにしている。

つまりイライラの理由を突き止めるということ。

その日私は、仕事が終わり娘を連れて帰宅した17:50から、完全にワンオペ状態だった。
時期にもよるけど、大体19時頃帰宅して家事育児に参戦してくれる夫は、その日約束があり、同僚とジムへ。

娘と自分のごはんを冷凍食品を駆使しつつ超特急で仕上げ、娘の食べこぼしを拾いながら何とか完食し、そのあと2人でお風呂に入った。
肌寒い日で、久しぶりにお湯をためて、浴槽にガーゼをつけて、中に空気を含ませたものをぎゅうっと握って遊ばせた。ボコボコッと泡が出るのが楽しいらしく、娘は人差し指を立てて「ったい(もう一回)!!」と何度もせがんだ。
娘はずっとニコニコで、私もバタバタ落ち着かないなりに楽しかった。

心から楽しかったし、母親として頑張っている自分を褒めてあげたくなったことは本当なので、きっとイライラの根本はそこではない。
それに、夫がたまの仕事帰りにジムや食事に行くことには大賛成だ。
私だってときどき夜に友人と会うことはある。
夫がそういった予定を作ってくれると、私だって娘を預けて遊びに行きやすくなるというものだ。
つまり私は、ワンオペ状態になったことに怒っているわけでもない。

そこでふと、台所の様子について思い出すことがあった。その日は娘の「ままぁ、だぁっこぉ」攻撃がなかなか激しく、なんとか娘と私のごはんは済ませたものの、洗う隙のなかった洗い物が、シンクに積み重なっていた。
帰宅してその有り様を見た夫は、何も言わずお皿を洗ってくれたし、回しっぱなしの洗濯物まで干してくれた。

そこまで思い出して気づいた。
私は、私に幻滅しているだけだ。
私は、娘を幸福にできる完璧な母親だったのに。夫が帰ってきたことで、完璧な母から、家事を後回しにして夫に押し付ける最悪な妻になってしまった。
その落差を受け入れられなくて、自分で自分にイライラしていたんだ。

そこでパーッ!と視界が開けた感じがして、走って夫に謝りに行った。
「イライラの正体を突き止めた!!イライラしちゃってごめんなさい!!」
さっきまで機嫌が悪そうにしていた人間がいきなり満足げな顔で話しかけてきて、夫は驚いたかもしれない。
イライラの在り処を突き止めた瞬間、私のイライラはどこかに行っていた。

こんなふうに、自分の心境をじっくり考えて、言語化する。30年生きてきて、それが私のアンガーマネジメントだとだんだんわかってきた。
何か不当な目に遭ったとか、そういう明確な原因がある場合はまた別かもしれないけど。

自分のことを好きでいたい私は、やはり人生をかけて自分と向き合っていくことが必要不可欠らしい。
そんなふうに思わせてくれた夜だった。

ただし夫には申し訳ないことをしたので、KALDIで少しいいお菓子を買ってプレゼントしました。

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