竹花 椎

竹花 椎(たけはな しい)と申します。仕事、家事、育児のはざまで、どうにかこうにかエッ…

竹花 椎

竹花 椎(たけはな しい)と申します。仕事、家事、育児のはざまで、どうにかこうにかエッセイのようなものを書いています。 仕事は事務職。創作好きの趣味人間です。

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エッセイ/自己紹介

はじめまして。竹花 椎(たけはな しい)と申します。 急に思い立って、エッセイを書くことを始めてみました。 「急に」を打ち込もうとして、予測変換で先頭に出てきた「牛乳」を2度タップしてしまいました。牛乳好きの竹花と申します。 ペンネームの由来ですが、思い入れのある字「竹」を入れたくて、残りの文字は思いつきで合わせました。 竹ってしなやかで、大きな力が加わっても、なかなか折れないですよね。 竹の様な心を持ちたい。日々訪れる小さな悩み事、突然やってくる、受け入れがたいようなシ

    • エッセイ/ワセリンと睡眠不足

      冬。別名を、手指ガサガサの季節。 今年の冬も、私の手は荒れに荒れていた。人差し指と中指の側面はひび割れ、拳を作ったときにポコンと出る指の付け根の骨部分(分かってもらえるだろうか)はピキッと割れて血が滲んでいる。 タイツを触れば引っかかり、こうなると、娘のさらさらつやつやした頬に触れるのが、どうにも申し訳なくなってしまう。 客観的に見ても可哀想なほどボロボロの手を持て余した私は、ふと思い立って、指先から手首までくまなく、薬局で買ったワセリンを塗りたくって寝ることにした。 ベ

      • 短いエッセイ/今日の記録

        冬の長い休みが終わり、また私の日常がやって来た。 仕事と家事育児に追われる日々は、さながら膨らみながら坂道をものすごい速さで転がり落ちる雪玉のイメージ。 今日だって、バタバタと出社して、適度に人に迷惑をかけない程度に働き、定時を少し過ぎて退社して、晩ごはんの準備に、自分と娘のお風呂。 あっという間に夜になってしまった。 ご飯どき、ニュースをつけると、震災で大変な思いをしている人たちの姿が目に入る。目の前のことにいっぱいいっぱいになっている私は、情けないような申し訳ないよう

        • エッセイ/妹の誕生日プレゼントを買いに行く

          今日、妹の誕生日プレゼントを買いに行く。 2歳違いの、仲の良い妹。 私が結婚して遠くに引っ越してから、妹と会えるのはせいぜい年に1回か2回。 お互いの生活が離れすぎて、遠くで暮らす妹が欲しいものは何なのか、何ならいらないのか、もうわからなくなってしまった。 妹の誕生日間近の週末。私は、急かされるようにして雑貨屋さんへ行く。 16Gのピアスがほしい。そうリクエストはもらったものの、ピアスをしない私は、16Gとやらがもうよくわからない。 目に入る、ちいさなパールがついた上品なピ

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        エッセイ/自己紹介

          エッセイ/ 30歳って、なんか焦るのよ。

          とうとう秋がやってきた。後ろに冬を引き連れて。 10月ごろ、店頭に愉快なパンプキンたちが並び出すと毎年思う。今年も、もうあっという間に終わるんだろう。 例年11月と12月の時の流れの速さは異常だと思う。雑貨屋さんでは10月31日が終わるなりハロウィンのグッズたちが撤収され、その場所にはちゃっかりとクリスマスのグッズたちが鎮座しクリスマスの圧力を感じさせる。 目立たない所に置かれたワゴンから、ハロウィンのかぼちゃ型バケツが恨めしそうにこちらを覗いているのも毎年のこと。 今年

          エッセイ/ 30歳って、なんか焦るのよ。

          エッセイ/テーブルひっくり返し事件

          私は一度、リビングの大きな机と椅子をひっくり返すという奇行を働いて、家族を驚かせたことがある。 私が高校生くらいの頃だった。母親と妹が、比較的大きな喧嘩をした。母親も妹も大きな声で言い合い、妹が力任せに閉めたリビングの扉が、家じゅうにものすごい音を響かせた。 大音量の大喧嘩。そこで激昂していたのは、妹と母親だけではなかった。 成り行きをそばで無言で見ていた私も、静かにブチ切れていたのである。 2人がいなくなったリビングで、私はせっせと大きなテーブルをひっくり返した。4人

          エッセイ/テーブルひっくり返し事件

          エッセイ/私はお菓子が作れない

          私は大雑把(おおざっぱ)な人間だ。 だからお菓子が作れない。 私の失敗お菓子その1。カチコチのクッキー。 今となっては原因も思い出せないけれど、丁寧に型抜きしたそのクッキーは、オーブンレンジで加熱するにつれて溶けるように平らになり、完全に形を失った。焼き上がった丸く薄べったいそれは、とにかく歯が欠けるほど固かった。 私の失敗お菓子その2。ブランデー入れすぎかぼちゃプリン。 これはシンプルにブランデーを入れすぎた。 一緒に味見をしてくれた友達(当時小学生)を酔っぱらわせた罪

          エッセイ/私はお菓子が作れない

          短いエッセイ/満たすあなた

          子どもを育てていると時々、子どもの成長に「ああ、いいなあ」と思う瞬間がやってくる。 娘と2人で、お風呂に入っているときのこと。 私が髪を洗っている間、隣にいる2歳の娘はマットの上に水遊び用のおもちゃ一式を広げて、忙しそうにしている。 真剣な顔。洗面器にたまったお湯を丸いスコップですくい出しては、取手がついた別の容器に一生懸命注いでいる。 洗面器のお湯はみるみる減って、私がシャンプーを流し終わるころ、とうとう注ぎ先の容器のお湯はいっぱいになった。 ああそうか、と思った。

          短いエッセイ/満たすあなた

          エッセイ/描くこと書くこと

          私は「描く」ことが好きだ。日頃から、絵を描くことが趣味だと公言している。 「書く」ことは、noteにて最近始めたばかり。 私のお絵描き遍歴について、少しお話させてほしい。 物心ついたときから、絵を描くことが好きな子どもだった。とりわけかわいい服を着た女の子やお姫様を描くのに執心していて、出来上がったプリンセスを家族に褒められては、得意な気持ちになっていたのをなんとなく覚えている。 画用紙は、ばあちゃんが取り置きしているいらなくなったチラシの裏。いつも黒色で線画を描いて着色は

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          エッセイ/ひとりでごはんに行ったというだけの話

          今夜、私は家を出て行く。 娘は今、プラスチックでできた野菜の接合部分を包丁で切るおもちゃに夢中だ。今しかない。 夫と目配せをして、リビングの少しだけ開けた扉の隙間に体を滑り込ませ、そうしてそうっと扉を閉めた。 暗い道を、車を走らせて15分ほど。お腹はぐうぐう鳴っている。 ようやく曲がり角の先に、緑っぽく光る看板が見えてきた。 『サイゼリヤ』 今日はひとりごはんの日。夫に娘の寝かしつけをお願いして、1人で大好きなものをたらふく食べる日。 店内に入り、受付票に名前を書いて5

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          エッセイ/お金が好きだ

          貯金が好きだ。貯金箱も、なんだか好きだ。 もしものときの備えがあることは幸福だと思う。備えあれば憂いなし。 小学生の頃『十五少年漂流記』などの本にハマった私は、自分が無人島に行くと仮定して、リュックに詰めるべきものをノートいっぱいに描いてはニヤニヤしていた。 なお体育の成績表が5段階の3である私はおそらく無人島で生き残れないであろうことは、あえて考えないようにしていた。 「備えること」を考えるのがただただ楽しかった。 貯金箱も貯金も好き。 そもそも、お金が好きだ。 だけど、

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          エッセイ/イライラのありか

          この前無性にイライラしてしまい、夫に当たってしまった。 ぶっきらぼうになり、あのときの私はかなり感じが悪かったと思う。 虫の居所が悪かったというか、自分の気持ちが整理できなかったと言うか。何か決定的な原因があった訳ではないのに、とにかく無性にイライラしていた。 そんなとき私は、自分のイライラの在り処(ありか)を探すようにしている。 つまりイライラの理由を突き止めるということ。 その日私は、仕事が終わり娘を連れて帰宅した17:50から、完全にワンオペ状態だった。 時期にも

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          エッセイ/カマンベールの重鎮感

          カマンベールチーズを買った。切れてないタイプの、生協で、税込み約380円だったカマンベールチーズ。 カマンベールチーズが好きだ。外側の白いところの噛むとプチっとする食感も、中の黄色いところのとろとろ濃厚な味も。 夫と何かを半分こするとき、いつも夫に大きい方をあげる私が、この時ばかりはこっそり少し大きいほうをもらってしまうくらいに、カマンベールチーズが好きだ。 おつまみにして良し。料理に使って良し。アヒージョやトマト系洋風鍋の真ん中に据えたものなら、手抜き料理も一気に豪華な晩

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          エッセイ/ひざこぞうムラサキ

          やってしまった。またひざこぞうだ。 常日頃から不注意な私は、よく身体のどこかを何かにぶつける。 一番多いのはひざこぞう。 家で、職場で。急いで立ち上がったときには高確率で机の足やら棚の縁やらにぶつけてしまう。急いでいるものだからそのままになり、お風呂で自分の足をまじまじと見た際に、思ったよりもおおごとだったのだと知るのだ。 そんな足にストッキングを履いた日には、歩きながら『私は不注意な人です!』の自己紹介をしているようなもので、少々恥ずかしい気持ちになる。 ひざこぞうの

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          エッセイ/だれかの空白と私

          結婚を機に引っ越したり、30代にして何度も職場が変わった経験のある私が、ときどきやってしまうことがある。 私の前任の方は、どんな方だったんですか? それが気になってしまい、雑談の延長で、ついつい周りの人に聞いてしまうのだ。 聞いてから、今度は自分に問いかける。それを聞いて、私は一体どうしようというのだ。 前任者が自分と似た人なら安心するのか。まったくタイプの違う人なら、自分が憧れてもなれない、要領が良くてはきはきしていて、だれからも好かれるような人なら、私はショックを受け

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          エッセイ/おいしい通知

          「本日も営業しております」 お昼休み前、LINEの通知。私の大好きなレストランの。 たまらずタイムラインを開くと、並ぶ鴨肉のコンフィ、じゃがいもの冷製スープ。 いつも通り、おいしい写真がいくつも添えられている。 お昼休みになり、お弁当の包みを開きながら改めてごちそうの写真を眺める。 昨日の残り物と冷凍食品を超特急で詰め込んだ平凡なお弁当を食べながら見るには、あまりに飯テロが過ぎるのだが、どうしてこうもうれしい気持ちになるのだろう。 最初にそのレストランに行ったのは、夫と

          エッセイ/おいしい通知