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エッセイ/私はお菓子が作れない

私は大雑把(おおざっぱ)な人間だ。
だからお菓子が作れない。

私の失敗お菓子その1。カチコチのクッキー。
今となっては原因も思い出せないけれど、丁寧に型抜きしたそのクッキーは、オーブンレンジで加熱するにつれて溶けるように平らになり、完全に形を失った。焼き上がった丸く薄べったいそれは、とにかく歯が欠けるほど固かった。

私の失敗お菓子その2。ブランデー入れすぎかぼちゃプリン。
これはシンプルにブランデーを入れすぎた。
一緒に味見をしてくれた友達(当時小学生)を酔っぱらわせた罪深いかぼちゃプリン。

私の失敗お菓子その3。固まらなかったいちじくゼリー。
生のいちじくはゼラチンと相性が悪いということを知らなかった私の落ち度で、待てど暮らせどゼリーは固まらなかった。
これは前衛的で美味しいゼリーになるぞ!と目を輝かせて固まるのを待っていた過去の私を、そっと抱きしめてあげたくなる。

私の失敗お菓子その4。固まりすぎたチョコレート。
その名の通り、いちじくゼリーとは反対に固まりすぎたチョコレート。
湯せんの途中でまあまあな量のお湯がかかってしまい、みるみるヘラが通らない固さになり、しまいにはカチコチになった。砕いてなんとか食べたように思う。

何度か見よう見まねで作ってみて思うけど、お菓子はいかにレシピ通りに作るかが重要なのであって、私がよく口にしてしまう「まあいいか、これくらい」はお菓子作りと相性が悪い。

なお私のやり方がいかに大雑把なのかは、うちにある計量カップの使い方を知ってもらえればわかるだろう。
うちにはちゃんと計量カップがあるが、基本的に私はこれを使わない。水150mlとレシピにあれば、軽量カップの目盛りをちらっと見て、「ふんふん、150mlってこれくらいね」と確認し、目分量で直に水を注いでしまう。
最初に夫の前でそれをやったとき、計量カップを使いそうで使わない動きがコミカルに見えたのか、まあまあの声量で笑われた。

ちなみにお菓子とは対照的に、なぜか料理は特に問題なく作れる私である。
少々味が濃くても薄めればいい。足りないものがあれば足せばいい。大雑把な私でも作れる、料理の懐の広さに日々感謝している。
また同時に、お菓子作りを完全に諦めた身として、お菓子が作れる人に対してなんとも言えない尊敬のような念を抱いている。

お菓子が作れる人に敬意を表しつつ、今日も私は計らない。
ああ、よかった。お菓子が作れない私だけど、肌寒い日にもってこいの、おだしの香る、おいしいお鍋が出来上がった。

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