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ポジティブなほうがうまくいくのか?

「キャリアデザイン」をテーマに授業や研修をしていると言うと、よくこう質問されます。
「やっぱり、ポジティブに考えた方が人生うまくいくのでしょうか?」
世の中には、「ポジティブ・シンキング」を推奨する言説は多いですし、「強く望めば叶う」みたいな自己啓発本を読んでいる人も多いからなのだと思います。楽観的で前向きに考えることはいいことのように思えますが、本当にそうなのでしょうか?

ぼくも同じ疑問を持っています。
ポジティブに考える人の方がうまくいくのでしょうか?

おもしろい心理学の実験があります。心理学者のG・エッティンゲンのダイエットに関する実験です。皆さんは、楽観的な人と悲観的な人、どちらがダイエットに成功すると思いますか?一般的には楽観的な人のほうが上手くいくと思いますよね。

結果は、「自分は成功する自信がある」と答えた女性のほうが、そうでない女性に比べて、平均約12㎏多く減量に成功したそうです。予想と一致します。しかし、「容易に成功できる」と楽観的に答えた女性は、「簡単ではない」と悲観的に答えた女性に比べてうまく減量できなかったのです。「簡単ではない」と悲観的に考えた女性の方が、平均約11kgも多く減量に成功しました。高齢者のリハビリ、就活、婚活でも、同様の結果が見られたそうです。

この結果からこう推測されます。
結果・成果に対して「楽観的」な人の方が、うまくいく。
一方、過程・プロセスに関して「悲観的」な人のほうが、うまくいく。

稲盛和夫さんの言葉に
楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
とあります。名経営者が実践から紡いだ至言です。

自分がこうなりたい、こういうことを実現したいと未来を描く時は、ポジティブに描く。そして、そこに向かうまでのプロセスは、想定される困難・壁をネガティブに考え、事前に対応策を考えておく。そして、行動に移すときはポジティブに行動する。

楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する
ポジティブに考えればうまくいくというのは、少々能天気のようでした。
自戒をこめて。

稲盛和夫 『働き方』 三笠書房,2009
G・エッティンゲン 『成功するにはポジティブ思考を捨てなさい』 講談社,2015

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