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「デジタル看護入門」看護のDXに必要な100のポイント

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数年前から、「看護教育のDX」を研究テーマとして活動している筆者が、できるだけわかりやすく「看護とICT」について解説していきます。実際の看護学校で活用できるようなさらにポイント… もっと読む
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2021年7月の記事一覧

「デジタル看護入門」第9回 〜血圧測定とICT〜

 今回は、血圧測定です。これも看護師さんにとっては、ごく普通の看護技術かと思います。血圧測定も、バイタルサインのひとつでありますが、体温測定や脈拍測定とは違い、実際の血圧測定には、ある程度の訓練が必要であり、看護師をはじめとする、ごく限られた医療従事者でなければ、血圧測定はできません。少し特殊なバイタルサインであるといえます。  いまでこそ血圧計はアネロイド式が主流になっていますが、一昔前までは、体温計と同じく、水銀を使用した水銀柱型血圧計が一般的でした。「コロトコフ法」に

「デジタル看護入門」第8回 〜脈拍測定とICT〜

 今回は、バイタルサインのひとつであり、循環器系などでは重要な「脈拍」です。おおよそ看護師さんは、患者さんの手首にある橈骨動脈に直接触れて、脈拍を測定していることでしょう。自動血圧計や酸素飽和度測定器(サチュレーションモニター)などでも脈拍数が表示されますが、ほとんどの場合は、直接、いまでのアナログで測定しているのが、この「脈拍」かと思います。  最近、流行しているウエアラブル関連では、腕時計タイプのもので脈拍が測定できるものがあります。「心拍数」と表記しているウエアラブル

「デジタル看護入門」第7回 〜体温計とICT〜

 今回は、主流の電子式体温計と、コロナ禍で一躍有名になった非接触式体温計の2種類の体温計のメカニズムを解説します。  電子式体温計には、おもに「サーミスタ」という、温度が変わると電気抵抗が変化する電子部品が使用されています。この温度変化で抵抗値が変わる作用を電子回路により数値化して、体温測定時に、測定値を表示します。  測定方法としては、予測式と実測式の両方ができる電子式体温計がほとんどであり、実際の体温を測定する「実測式」の場合、ある程度の時間を必要であり、おおよそ数分

「デジタル看護入門」第6回 〜バイタルサインとICT〜

 バイタルサインといいますと、おおよそ体温、血圧、脈拍数、呼吸数、そして最近では酸素飽和度いわゆるサチュレーションなどが代表的なものですね。もちろんそれだけではなく、呼吸音、心音など、患者さんのフィジカルアセスメントを行うためには、たくさんの観察ポイントを確認していく必要があります。  こうした患者さんのバイタルサインを観察するために、看護師さんはどのようなICTを活用しているでしょうか。普段あまり意識されないかと思いますが、私たちはバイタルサイン測定のために、たくさんの医

「デジタル看護入門」第五回 〜進化しない医療ICT?〜

 看護師さんの身近な通信技術として「ナースコール」があります。もはや当たり前すぎて「ナースコールがICT?」と感じる看護師さんも多いかと思いますが、ほとんどの病院で、中央配管のあたりから有線でつながれ、ベッド柵に巻き付いたナースコールが主流かと思います。大学の近くの1000床ほどの大病院でも同じく有線です。このスマホの時代になぜ有線という旧式のままで進化が遅いのでしょうか? もちろんナースコールも機能が向上しており、ワイヤレスのものや、テレビ電話のように映像付きで患者さん

「デジタル看護入門」「離島の保健師をやってみた」合同テーマ 番外編③ 〜実際に離島で経験した医療✖️ICT その3〜

ICT事業導入後、2年間は、特定保健指導対象者にアクティブタグを配布し,運動面でのデータ(毎日の歩数)とバイタルサインのデータ(毎日の血圧・体重)を蓄積しながら、健診結果をもとに「ヘルスメック」という健康管理支援ソフトを使用して,健康管理や保健指導を行いました。「フレッツフォン」というテレビ電話を使用して、遠隔保健指導も実施しました。  ICT実証実験対象者60名に対してアンケート調査を行っており、毎日の運動量の変化が、日々の生活改善のきっかけとなったと答えた対象者が半数

「デジタル看護入門」「離島の保健師をやってみた」合同テーマ 番外編② 〜実際に離島で経験した医療✖️ICT その2〜

 座間味村におけるこのプロジェクトは、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防のために2008年4月から国民健康保険対象者に義務化された特定健診および特定保健指導において、保健指導対象者へのより効果的なかかわりに着目したものです。  特定健診を受診され、「積極的支援」や「動機付け支援」に階層化された対象者には、生活習慣を振り返り、生活習慣の改善に導くための保健指導が必要となります。「積極的支援」や「動機付け支援」の対象者に対し、手軽に日々のバイタルサインのデータを測定・デ

「デジタル看護入門」「離島の保健師をやってみた」合同テーマ 番外編① 〜実際に離島で経験した医療✖️ICT その1〜

 今回は、私が沖縄県の離島で保健師をしていた時に、実際に現場で経験した医療ICTをご紹介します。少し前の話になりますが、ユビキタス特区という特別な枠組みで、企業と自治体が協同して、医療ICTを活用した特定保健指導の実証実験が行われました。保健師として、このプロジェクトの中心メンバーとして、事業に参加させていただきました。  実証実験が行われた座間味村は、沖縄本島の那覇から南西へ約40kmの位置に存在する慶良間諸島にあります。座間味島・阿嘉島・慶留間島の3つの有人島を含む、大

「デジタル看護入門」第4回 〜デジタル活用支援員のサポートって?〜

 今後、「デジタル活用支援員」のサポートが必要な人たちは、主に高齢者と考えられますが、「はい、私たちにも必要です!」と手を挙げている看護師さんはいないですよね(笑)。ここでは、具体的に高齢者に対して、どのような目的で「デジタル活用支援員」のサポートを推進していくのか、ICTとの関係性を説明していきます。    2042 年以降、団塊ジュニア世代が高齢者世代となり、高齢者人口がピークに達すると推計されています。しかしながら、わが国の高齢者の就業意欲は他国と比較すると割と高く、高

「デジタル看護入門」第3回 〜デジタル活用支援員って?〜

 現在、カラダの健康管理に関するウエアラブルやスマホのアプリなどの普及が進んでいます。アップルウォッチなどが代表的なものですね。スマートフォンのアプリでも万歩計のような機能があったり、体重計と連動して、日々の体重の変化が記録できたり、どんどん便利になってきています。そのような医療系ICTが、本当の意味で必要だろうと思われる対象は、高齢者や障害を持つ方々かとは思いますが、実際の活用には様々なサポートが必要です。日々の生活で、もっとも身近なICT機器のひとつであるスマートフォンな