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【特選映画】Amazon primeで楽しむスウェーデン映画①

  スウェーデン出身の有名な映画監督と言えば、イングマール・ベルイマンやラッセ・ハルストレム監督の名前がまず頭に浮かぶ方が多いかと思います。

  ラッセ・ハルストレム監督のスウェーデン時代の作品としては、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』が有名ですが、『ギルバート・グレイプ』以降は、知っての通り、ハリウッドの良質な作品を撮影する代表的な監督の1人として、活躍しています。

   そして、特に、最近では、一癖も二癖もある、一筋縄ではいかないスウェーデン映画が日本でも、多く公開されています。

  そこで今回は、Amazon prime videoのプライム会員特典で視聴できる個人的におすすめのスウェーデン映画をいくつか取り上げたいと思います。

 なお、イングマール・ベルイマン監督の作品については、あとで取り上げます。

※ここに記載している情報は2021年9月現在のものです。


『ボーダー  二つの世界』(2018)  アリ・アッバシ監督



カンヌ国際映画祭ある視点部門グランプリ、スウェーデン・アカデミー賞作品賞の受賞作品です。

 『ぼくのエリ 200歳の少女』と同じ、スウェーデンを代表する作家の1人、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編小説を原作とする映画で、本作でも、脚本を担当しています。

  また、『ぼくのエリ 200歳の少女』と同様に、幻想的なホラー作品で、なおかつ人類の亜種を描くことで、むしろ人間の醜さを浮き彫りにしています。

なお、『ぼくのエリ 200歳の少女』も、スウェーデンが製作国で、監督は『裏切りのサーカス』(イギリス)のトーマス・アルフレッドソン、撮影監督は、ホイテ・ヴァン・ホイテマで、この作品以降、スパイク・ジョーンズ (『her/世界てひとつの彼女』)やクリストファー・ノーラン(『TENET』など)の撮影監督として活躍しています。




『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017) リューベン・オストルンド監督



『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、『フレンチアルプスで起きたこと』のリューベン・オストルンド監督の作品で、カンヌ国際映画祭パルム・ドール、ヨーロッパ映画賞作品賞(監督賞、脚本賞、男優賞)を受賞した作品です。

『フレンチアルプスで起きたこと』も、カンヌ国際映画祭のある視点部門の審査員賞を受賞していますが、両作品に共通しているのが、"人間の理性"が、不可抗力に対していかに脆く、危ういものであることを執拗に描いている点です。

 特に、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、資本主義社会における現代美術の理性やエスタブリッシュメントの理性の危うさを浮き彫りにしている作品です。

   ただ、主人公(アート・ディレクター)が、娘たち(子ども)を通して、大事なことに気づき、心から謝罪しようとする行動に希望を見いだすことができる作品です。また、映画自体が、現代美術の理性を体現していると言えます。

 なお、主人公(夫、父)が、雪崩から家族よりも先に逃げたことから信頼を失うことから始まる『フレンチアルプスで起きたこと』もAmazon prime videoのプライム会員特典で視聴することができます。


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『仮面/ペルソナ』イングマール・ベルイマン監督(1966)



  舞台女優エリーサベットが、精神的な病の療養ため、夫と子供から離れ、別荘で、世話役を兼ねる看護士アルマと過ごす密室劇が中心の、ミステリアスな作風の映画です。

タイトルの仮面/ペルソナは、ユング心理学のペルソナを、連想させるものです。ペルソナは、タイトルの通りラテン語で、仮面を表す言葉で、ユング心理学においては、外的側面を表します。簡略化して言うと、私たちは、社会生活を送る上で、それぞれの役割を演じるために、仮面をつけているという考え方です。

 また、ペルソナに対する概念として、シャドウがあります。これは、内的側面にあたります。つまり、シャドウとペルソナがあまりに解離しまったり、ペルソナが、プライベートをも拘束するようになれば、精神に異常を来すことになります。アルマは、魂を表す語からエリーサベットの内的側面を表しているとも考えられます。

  また、ユング心理学では、同じ語源から、男性の女性的側面(シャドウ)をアニマ、女性の男性的側面(シャドウ)をアニムスと分類していますが、アルマはアニムスに相当するとも考えられます。

そのように考えると、奥行きが深く感じられるストーリーになっています。ただ、デイヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』のようにモヤモヤ感があるところもこの作品の良いところだと思うのです。

なお、現在、イングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』もプライム会員特典で視聴できます。



『幸せなひとりぼっち』(2015) ハンネス・ホルム監督



スウェーデン・アカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞主演男優賞を受賞した、スウェーデン本国での大ヒット作です。アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされています。

  ストーリーは、愛する妻と職を失った偏屈な初老の主人公が、自殺を試みるも、隣に引っ越してきたばかりの移民系の家族によってことごとく阻止されるブラック・コメディーというのが、導入部分の紹介ですが、この映画の本当のみどころは、現在の話と平行して、主人公の過去のエピソードが挿入され、彼がただの偏屈な初老の男性ではなく、誠実な人間であることが徐々に明らかになる点です。

 そして、徐々に現在においても、その誠実さによって、遠回しに、人の役に立っていることに観客も気づかされ、それに伴い主人公の心も少しずつ晴れていく構成になっています。



『さよなら、人類』(2014) ロイ・アンダーソン監督



『ホモサピエンスの涙』のロイ・アンダーソン監督のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作です。こちらも、また癖のある、シニカルな連作コメディーですが、逃れられない実存をテーマにした構成がよく練られている作品です。そして、なによりも、思考を刺激される以上に、不思議な世界観が段々癖になる映画です。





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