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サクラノ草紙@西湘納言

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書き散らしたエッセーやコラムをまとめました
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2017年9月の記事一覧

ツバメのいた夏・4

ツバメのいた夏・4

四羽のヒナが無事に巣立ち、勝手口周辺は静かになった。
ペアの初来訪が五月の上旬。抱卵開始はおそらく六月に入ってすぐのころ。ヒナの顔を確認したのが六月半ばで、巣立ち完了が六月末である。おおむね二ヶ月のつきあいだった。
勝手口外の掃除をして、営巣中に散ったと思われる落とし物などを片付ける。不要物を一時保管しておくコンテナと壁の隙間から、孵卵一号のカラと思われる白い破片が出てきたりした。この期に及んで欠

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ツバメのいた夏・3

ツバメのいた夏・3

——野生のいきものとヒト。両者のあいだに、『通いあう心』もしくは『相互理解』はあると思いますか——

我が家で育雛中のツバメペア、危険警報を出して、「人間がすぐにドアから出てくるかどうか?」をテストした可能性について、半信半疑のまま二日ほど経過した。
ペアが育雛開始してから巣の観察は遠慮していたけれど、ドアを開けてわたしが巣を見ていても、親鳥はまったく気にしていない。加えて、ヒナもべつだん怖がった

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ツバメのいた夏・2

ツバメのいた夏・2

巣作りを終えてすぐに産卵抱卵かというと、そんなことはないらしい。

けっこう長い期間、ツバメペアは飛んだり巣に戻ってきたり、フェンスに止まったり鳴き交わしたり追いかけっこしたりしていた。朝から晩まで遊んでばかりいるのである。でもたぶん、遊びながら、周辺の環境——育雛に必要な食料がじゅうぶん得られるか、危険はないか、雨風の際の飛行ルートをどうするか、などなど——を、確認していたのだろう。

毎日見て

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ツバメのいた夏・1

ツバメのいた夏・1

今年、梅雨入りのすこし前に、ツバメがきて軒下に巣をかけた。

この壁際にツバメが営巣するのは久しぶりだった。何年か前に巣をかけたペアの子孫だろうかと思いつつ、すこしく複雑な思いでいた。

懸念があった。
我が家はここ数年、ツバメの営巣には不向きな物件になっていたからだ。
ひとつは、我が家と燐家の庭はマダムミケこと、TNR猫のテリトリーであること。燐家では丁寧に世話してくれているが、マダムミケは半ノ

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