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【書評・感想】真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか

■書籍タイトル

真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか


■Amazonの商品説明から引用
内容(「BOOK」データベースより)
顧客と市場が経済活動を主導する時代が到来しつつある。航空運輸、自動車、半導体、金融サービスといった分野で、賢い消費者と新たな競走相手が、旧態依然とした企業に圧力を加えている。市場が先導するこの転換期に対処するには、組織・機構の変革が、つまり「顧客本位の企業」につくり替えることが必要だ。現場から隔絶した、統制的な上意下達のリーダーシップでは、企業は生き残れない。

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■おすすめ度
★★★☆☆
200ページ程度で文量も少なく、読みやすい。
主題以外にも、ビジネス需要・レジャー需要の話など、エアライン業界の特色についても併せて理解できます。


■読んだきっかけ
マーケティングの勉強をするなかでGoogleのZMOT理論が説明されていたのですが、そもそもMoment of Truthを知らず、調べたところこの本に行き着きました。

参考までに、GoogleのZMOT理論(Zero Moment of Truth)は、MoTはいろんなタイミングであるよね。店頭で買う瞬間、買ったあとに家で使う瞬間など。でも、今はインターネットで買う前にユーザー自身で検索してるその瞬間も「真実の瞬間」だよ。っていう理論です。

詳しくは下記を・・・(英語しかなさそうです)
Think with Google:Zero Moment of Truth (ZMOT)


■内容まとめ
1981年(40年前!)スカンジナビア航空の社長に就任したヤン・カールソン氏の本。
真実の瞬間(Moment Of Truth)とは・・・下記の通り。

航空券販売係や客室乗務員といった、最前線の従業員の最初の15秒間の接客態度が、その航空会社全体の印象を決めてしまう。カールソンは、その15秒を”真実の瞬間”と呼んでいる。

当時危機に瀕していたスカンジナビア航空を立て直すときに、顧客本位の企業に変身させるように方針を変えることを決意したヤンさん。

そのときに、注力すべきは、機体のメンテナンスや業務システムの集積などではなく、顧客からみたときに大事なこと=「真実の瞬間」であり、従業員が最前線で顧客に提供したそのサービスの質である。と。

いざ、これを実践するときに、大事なのが「責任の再分配」だ。
ピラミット階層の組織組織では、権限は管理職・中間管理職に集まってしまい、それでは適切なサービスは生み出せない。

ピラミッドの最下部にいる現場が、顧客と接する最前線を良く知っている。一方で、しょっちゅう直面する顧客の個々の問題に発生する権限を持っていない。
このねじれを解消するために責任を再分配して、現場に裁量を与えたのです。

シンプルな戦略

スカンジナビア航空の再建にあたって、収益性を高めるため「頻繁に旅行するビジネスマンに取って世界最高の航空会社を目指す。」ことを第一に掲げた。
これはビジネスマンが市場で唯一安定していた客層とみなしたためです。

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エアラインビジネスでは、ビジネス需要・レジャー需要を分類して考えることが多いです。ビジネスマンは飛行機の時間に合わせて移動するのではなく、会議の時間に合わせて移動する傾向がある、一人が多い。レジャーは家族・友人など複数人数ですね。路線によってもビジネスマンが多い路線(シンガポールとか?)とハワイなどの観光地需要が多い路線など特徴があります。
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ただコスト削減をして収益低下をするのでは、意欲が低下してしまう。
それまでのチーズスライサー方式(本の中では、あらゆる部門から等しくコストを削ろうとすることをこう書いている)では、市場の要望を無視して不必要なサービスが残り、必要なサービスが削られてしまうなど、コストへの責任低下まで招いてしまう。

シンプルな戦略のもと、機体の選定・発着便の調整などあらゆる業務を推進することで、従業員にも変化が生まれ新しいアイデアが生まれていった。

分権化→従業員の独創性を開放
各部門から優れたアイデアが出るように。
アイデアというのは誰が出すかは関係ない。優れていればそれでよい。

顧客本位になるということは、ハードウェアの製造・販売だけではなく、サービス事業にも手をのばす必要がある。
このあたりは、昨今話題になっているのですがSaaS企業が取り入れているカスタマーサクセスの考え方に近い気がしました。

他にも、機体選定の手法や、ボーイング社との飛行機開発の模様など顧客視点で書かれたエピソードが語られていて面白かったです。


■こんな人におすすめしたい
・エアラインビジネスに関わる方
・マーケティングに関心のある方


■あとがき
真実の瞬間というタイトルではあるものの、中身は「真実の瞬間」の質を上げるための経営目標の置き方、組織構造のあり方といったマネジメント論が多い印象を受けました。初版が1990年と30年前の本でありながら、今でも違和感無く読めましたので、真理を突いているのだと感心しました。
BtoBでもBtoCでも、業種・業態問わず真実の瞬間はあらゆる形で存在しているはずで、それがどこなのかというのを意識しながら仕事しようと思った次第です。

おしまいです。それでは、また!

読んで頂きありがとうございます。 このnoteを読んで、少しでも何かを感じていただいたなら嬉しいです。