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定年退職後の私の日々(経済編8:持ち家について4)

 前回の「定年退職後の私の日々(経済編7:持ち家について3)」の続きである。

 記事で述べている「高齢になると賃貸は難しい・・・」という課題はかなり深刻であり、持ち家のアドバンテージが大いに発揮される要素だと思うのだが、不思議と世の中ではこの点はアピールされない。

 将来、私が持ち家を保有する事になったとしたら、間違い無くこれが理由だ。

 逆に考えると、高齢者になってどうしても貸してもらえない・・という事態になったとしたら、賃貸は諦めて持ち家を保有すれば良い。大抵の人は夫婦二人とかで家族は少人数だろうから、小振りの安価な家を購入可能なエリアに保有すれば良いと思うのだ。

 ネット上ではこの考え方は結構紹介されていて、私も納得できる論調のものも多い。

 しかし、一部の「持ち家絶対有利」を標榜する識者(本当に識者?かどうかは微妙)は、この意見に否定的なことが多い。要は、「結局、老後に買わざるを得ないのなら、最初から買えば良いのだ」ということらしい。したり顔の識者からそう言われたら、普通は「そうだよね」と思って若くして家を購入する・・・というのもわからないではない。

 「持ち家派」の識者の一般的な意見をざっくりとまとめると下記になると思う。

(1)結局老後に家を購入せざるを得ないなら、最初から買った方が良い。老後の短い期間だけのために家を買うなんて無駄だ。
(2)老後に家の購入を考えても、一般的には住宅ローンは認められないだろう。キャッシュで家を購入できるような高齢者は一部の富裕層だけである。

1.「・・・だったら最初から買った方が良い」説について

 一見、非常に説得力がある論調である。しかし、よく考えてみると何故に「最初から買った方が良い」のか?は実は具体的には良くわからない。

 例えば、30歳で持ち家を保有して90歳までそこで生活した人と、30歳から65歳まで賃貸で、65歳に持ち家を購入して90歳までそこで生活した人を比較した場合、どちらが得か?は簡単には判断できないと思う。

 前記事の「持ち家vs賃貸」の議論の時と同じで、この場合も「個人の価値観(特にリスクに対して)、個人の経済状況、社会環境等」によって損得の判断は大きく変わるだろうからだ。

 自分が死んだあとの不動産資産の取り扱いについても条件は同じはずだ。売却等が上手くいくか?ダメか?は誰にも正確には分からない。

2.「そもそも住宅ローンが無理・・」説について

 住宅ローンが設定できないのはそのとおりであろう。・・・というか、仮に住宅ローンが設定できたとしても、高齢になってからの住宅ローンってどんな風に支払うのだろうか?普通に考えて、妥当な金額で支払い続けることはまず無理だ。死んだ後は支払いを子供達に押しつけるのか?それは余りにも無慈悲である。

 したがって、どうしても自宅購入が必要になったのならば、キャッシュで買うしか方法はないだろう。「キャッシュで家なんか買えるわけがないだろう!!」という話に多分なるだろうが、個人的にはいつもこの点に疑問を持っている。

 老夫婦二人が快適に生活できる小振りな住居が2,000万円程度で見つかったと仮定しよう。都心から電車で1H超程度(これまでの人間関係はそこそこ維持できる)の郊外都市なら、中古等も考慮に入れればこのような物件は結構あるだろう。

 「今まで通り都心に住みたい。そんな田舎に住めるか!」みたいに考える高齢者もいるかも知らんが、だったら好きなように都心に1億円の家を買えば良いのだ。しかし、1億円が用意できないのなら郊外に住むしかない。とにかく住む場所を確保しなければならないのだから・・・。無い物ねだりはガキの所業である。

 話が少しそれたが、現在の首都圏では2,000万円程度のキャッシュを準備すれば終の住処を得る事はできるはずだ。話は単純である。

 しかし、世の中では「1,000万円以上の金融資産を保有している人は少ない」という何とも悲しい調査・論調が多い。多分、これは事実なのだろう。

 「ほら。やっぱり、高齢者が家を買うなんて無理なんだよ」という毎度お馴染みの識者の意見が聞こえてきそうだ。

3.みんな家を持ってるんだよ

 ここで考えたい。何故、2,000万円程度のキャッシュを用意できる高齢者が少ないのか?・・についてだ。考察をシンプルにするために、病気や不慮の事態によって本当に貧困となったケースは除外する。一般的な普通のサラリーマンで定年後は年金で生活している高齢者・・・というケースをイメージしたい。

 上記のような標準的な高齢者で2,000万円程度のキャシュが用意できない高齢者は下記である・・と私は考えている。

(1)持ち家を保有している高齢者
(2)賃貸を選択したにもかかわらず、老後の住居確保のためのなんらかの手当(貯金、投資、実家の活用の検討等)をちゃんとしてこなかった高齢者

 まず(1)についてだが、現在の日本においては住宅ローンを利用して持ち家を保有’したらほとんどのサラリーマンは資産が持ち家という不動産にほぼ占有されると思う。日本の不動産は平均的なサラリーマンの所得と比較すると色々な意味で高額だ。したがって、持ち家以外に金融資産を確保するのはかなり難しいのが現状だと思う。

 それは事実だが、一方で彼等には持ち家がある。金融資産は少ないが住むところは確保されている。しかも、彼等は現状ではかなり多数派だ。このあたりが、「老後×賃貸=ヤバイ」という論調がメディア的にアピールしない理由ではないだろうか?

 個人的に問題だと思うのは(2)だ。「賃貸費用を支払って、貯金なんか出来る訳がないだろう!」と反論する向きもあろうが、はっきり言って「それは、あんたの計画性の無さが問題」としか言いようがない。住宅ローンがないのだから、代わりに歯を食いしばってでも何らかの経済的な手当をするべきなのだ。

 「高齢者になったら賃貸は難しいなんてこれまで誰も教えてくれなかった!」と言う高齢者もいるだろう。しかし、そんな事は周りにとっては「そんなのワシャ知らんがな。自分で何とかしろよ」となってしまうだろう。

 (1)のケースの高齢者と比較して、(2)のケースの高齢者ははっきり言って幼稚で世間知らずなのである。賃貸住宅を選択している世の中の大多数のまともな高齢者は「ちゃんとそれなりに準備をしている」はずなのだ。