見出し画像

父の精霊舟

今年のお盆はずーっと雨。

それでも、うまい具合に、ご先祖様を彼岸へお送りするお盆最終日の夕方には雨が上がり、今年もまた穏やかな海に精霊舟を流すことができた。

そう。小豆島では(海沿いの集落では)精霊流しは海で行う。

この精霊舟、僕が子どもの頃(といっても40年以上も前のことですが・・・)はじぃちゃんが藁で作っていたような気がするが、今では木でつくられた立派な精霊舟がスーパーの店頭に山のように並べられ販売されている。

お供え物が山ほど積めて、あの世に到着するまで沈むことなく、大きな帆で風を受けてぐんぐん進みますようにと、この立派な木の精霊舟にはご先祖様を思う現代人の優しさが込められているのかもしれないが、実はこれ、結構なゴミ問題を生んでしまう。

精霊流しの翌日には、島のあちこちで、ひっくり返った舟が海の上をぷかぷか、そして浜には精霊舟の残骸が無数に打ちあがることとなる。

最近は舟にのせるお供え物も野菜や果物、盆団子のようなすぐに自然に帰るものだけでなく、缶ビールや袋詰めお菓子などまでのせる人もいて、それもまた、流した後にはゴミとなる。(まぁ、ビールとか積まれてたら、帰りの道中楽しいと思いますけどね)

打ち上げった舟をよく見ると、提灯の中にLEDのロウソクが入っていたりすることも・・・。

これ、結局、海岸沿いの地元の人が片づけたり、風化するに任せたりするしかない。

じゃぁ、どうすりゃいいの?

うちの父は7~8年ほど前から精霊舟を手作りし始めた。

画像1

庭に自生するハランという植物の葉っぱ(切って細工したものが料理の飾りに使われる。お弁当に入っている緑のプラスティックの仕切りは、このハランを模して造られたもの)を組み合わせ、うまい具合に舟を作り、半紙を使って提灯を作っている。(今年のロウソクの台はキュウリになっていた)

とても小さくて、盆団子を数個くらいしか積むことはできないが、僕は結構気に入っている。

画像2

夕方、日が暮れると、家族みんなで海に向かってご先祖様にお祈りし、この父の舟を海に浮かべ、彼岸へとお送りする。

小さくってなかなかうまく進んでいかないけど、まさに海に帰っていく(消えていく?)感があって、なんかいい。

小さなロウソクは僕たちが見送っている最中、ふっと消えてしまう。それもまたいい。その瞬間、ご先祖様があの世に帰られたような気がする。

立派じゃないけど、小さいけど、父の手作りの精霊舟。

ご先祖様乗り心地はいかがでしょう?無事に彼岸までたどり着くことができましたか?

来年は父と一緒に作るかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?