旅立ちの日の朝

振り返ると

たくさんの思い出がある

ベッドでうとうとしていると

眠りのメリーゴーランドに乗車した

ナレーションの男が語り出す

一度この世から旅立つと

思いやりという名の

ステータスが付与される

三途の川を渡る前に戻ってこれば良い

向こう岸におばあちゃんが立っている

「おーーい」

とこちらに手を振ってくる

声立ちが気持ちよく

足を引きずりながら向いたくなる

近づくほどに笑顔がマシマシ

もやしをトッピング

卵で最後にさらっといこうか

誘惑に勝つために黒烏龍茶をぶん投げ

おばあちゃんとは絶縁した

帰り道にふと目を横道へむけると

幼稚園児が石を積んでいた

ジェンガの最新版か

隣には棍棒を持った赤い男

積み上がった途端に蹴り飛ばす

本田圭佑のコーナーキックのように

無回転で宙に舞う

少年は泣き叫び崩れ落ちた

なんどもなんども

無限に繰り返される

ループアンドループ

ステップバイステップ

石を並べずに語呂ばかり並べる

桜並木のような地獄を抜け

羅生門にたどり着いた

二匹の番犬がよだれを垂らし

ジャーキーをねだってきたので

チャオチュールを放り投げ

現世へと戻った

旅立ちの日の朝

荷物をベッドへ投げ捨て

堕落した日を過ごそうと決意した

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