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へのへのもへじ先輩

「のっぺらぼうの坊や」

「こちらへおいで」

怒りマークの先輩に呼ばれた

「焼きそばパン買ってきて」

お昼休憩にパシリに使われる

周りはみんな顔に文字が書いてある

ぼくは何もない

いつもからかわれる

そんなに可笑しいのかな

親もぼくと同じ顔

人と違うって悪いのかな

わからないや

目立たないように生きていこう

そうしてきたじゃないか

そんなぼくに唯一優しい人がいる

もへじ先輩だ

お昼になると

「焼きそばパン買ってきたよ」

「本当は君が食べたかったんでしょ」

「ありがとうございます」

「こんなぼくのために」

「いいんだよ」

「ぼくの顔に文字がないのって変ですか」

「そんなことないよ」

「それは個性っていうんだ」

「なんで周りはぼくをいじめるんですか」

「うらやましいのさ君の顔が」

「何もないってことは何にでもなれるからさ」

「でもぼくは現在何者でもないです」

「これからなればいいんだよ」

「人生はまだまだ長い」

「生きることなんて死ぬまでの暇つぶしだよ」

「だからよかったじゃないか」

「きみは何者でもないのだから」

「これを君にあげる」

輝く筆をぼくに差し出した

「これはなんですか」

「君のキャンパスに墨汁を落とすためのものさ」

「ほら来たよ」

後ろを振り向くと

怒りマークの先輩の姿が見えた

ぼくは筆で自らの顔をマーキングして

堂々と歩を進めた


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