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ベストセラーの理想の題名は7音+ッ? 短歌に学ぶタイトル案

ベストセラーに多い7音の題名

2024年1月17日(水)に第170回になる芥川賞・直木賞が発表されます。未だに多くのベストセラーを出しているこの賞。候補作が挙がっていますが誰が手にするのでしょうか?

大ヒット作は、かなりの割合で7音(口に出したに7文字)のタイトルで出来ている?

本名・小田切拓で57577の詩・短歌を作る筆者、たくおだぎりがそんな仮説を立ててみました。

例えばロングセラーの小説。

川端康成『伊豆の踊り子』→「いずのおどりこ」
村上春樹『ノルウェイの森』→「のるうぇいのもり」
綿矢りさ『蹴りたい背中』→「けりたいせなか」

大ベストセラーの小説

ひらがなで数えると7文字。「のるうぇいのもり」の「うぇ」は音として1音ですね。

音楽にもあります。

ボブ・ディラン『風に吹かれて』→「かぜにふかれて」
マカロニえんぴつ『なんでもないよ、』

楽曲のタイトル


漫画だとさらにビッグネームが並びます。

吾峠呼世晴『鬼滅の刃』→「きめつのやいば」
芥見下々『呪術廻戦』→「じゅじゅつかいせん」
遠藤達哉『SPY×FAMILY』→「すぱいふぁみりー」

近年の大ヒット漫画

じゅじゅつかいせん」「すぱいふぁみりー」も、太字の部分は一文字として読めます(じゅ×2はそれぞれ1音で読む)。

近年だけでなく昔の名作漫画からこの法則は続いています。

手塚治虫『鉄腕アトム』→「てつわんあとむ」
高橋陽一『キャプテン翼』→「きゃぷてんつばさ」
さくらももこ『ちびまる子ちゃん』→「ちびまる子ちゃん」

往年の名作漫画

『キャプテン翼』→「きゃぷてんつばさ」は8文字ですが「きゃ」の部分が音として1文字なので7音なのです。『ちびまる子ちゃん』の「ちゃ」も同様。

どれも7音なんです。7文字ではないのですが、指を折って数えるとどのタイトルも7つの音にピッタリ収まるんです。

もちろんすべてのベストセラー、ロングセラーが当てはまるわけではないですが、語呂のいい音数だということがわかります。

その答えは短歌を司る七五調にあり

それは何故か。日本語というのは七五調が基本で出来ているからです。

俳句や短歌が分かりやすい例です。俳句は五七五、短歌は五七五七七で詩を作ります。島崎藤村の詩『若菜集』は七五調にすべて統一して書かれていますが、何の不自然もなく展開されていきます。

それだけ日本語における七五調はリズムが良いのです。7と5は、日本語の黄金比率です。

現に、近現代文学を代表する歌集(短歌が収められたもの)のタイトルはどれも7音であり、ひらがなで読むとキッチリ7文字です。

石川啄木『一握の砂』『悲しき玩具』
→「いちあくのすな」「かなしきがんぐ」

寺山修司『われに五月を』『田園に死す』
→「われにごがつを」「でんえんにしす」

俵万智『サラダ記念日』『未来のサイズ』
→「さらだきねんび」「みらいのさいず」

国民的歌人の歌集タイトル一覧

さすが歌人ですね。短歌のプロだからこそ、7音へのこだわりは強いのでしょう

これを分解すると

5音は3音+2音

7音は3音+4音

と見ることもできますね。

そう考えると語呂合わせやリズムのいい日本語は、2音、3音、4音、5音、7音の組み合わせで作られていることが多いのです。

新潮文庫の累計部数を見てみましょう。

夏目漱石こころ』 701万500部→3音(3文字)
太宰治人間失格』 670万5000部→のちほど!
アーネスト・ヘミングウェイ老人と海』 489万5000部→7音(7文字)
夏目漱石『坊っちゃん』 420万5000部→3音
アルベール・カミュ異邦人』 412万1000部→5音(5文字)
武者小路実篤友情』 411万6000部→4音
川端康成雪国』 384万7000部→4音(4文字)
島崎藤村破戒』 376万1000部→3音(3文字)
太宰治『斜陽』 369万6000部→3音
フランソワーズ・サガン悲しみよこんにちは』 366万3000部→5+5音

新潮文庫の累計発行部数ベスト10

3、4、5、7音に加えて5音+5音もありますね。2音がないのは短すぎるのかな。少々強引ですが(笑)、題名含め有名な作品は5音と7音(それの分解)に収まることが多い。日本語が和歌のころから大切にしてきたリズムが反映されていると思います。

7音(7文字)の題名が最強だと思う理由

ここで、タイトルの話に戻ります。理想のタイトルとは何か?短か過ぎず、長過ぎず、作品の特徴を捉えたもの。

七五調(7音+5音)だと12音。これはこれでありですが、長くなればなるほど、一つの文章のようになる。これはどの音を組み合わせても同じです。

やはり、シンプルに短くてその中でなるべくインパクトを残したい

そうすると、2、3、4、5、7の中では一番長い7音ではないでしょうか。2、3、4では少し短い。せっかくなら単体で一番長くということで。

『伊豆の踊り子』、『ノルウェイの森』、『蹴りたい背中』とどれも時代を超えたロングセラーですが、筆者が思う日本語の法則で一番長い7音だから表現できています。

2~4文字で『蹴りたい背中』で伝わる趣と同じ情報量を詰め込むのは無理ですよね?5文字ですら難しい。7文字だからこそ題名の中に短い物語が宿ります

7文字という黄金比だからこそできる芸当です。長く愛読される作者は『一握の砂』や『田園に死す』、『サラダ記念日』と同じ感覚を、ジャンルを超えて持っているのでしょう。

プラスα「促音」の登場

しかーし、ここでもう一つ。日本語にはアクセント的な法則があります。促音、すなわち「っ」です。

7音のリズムに「っ」を加えたタイトルにも大ヒット作が存在します。

太宰治『人間失格』
山田悠介『リアル鬼ごっこ』
池井戸潤『下町ロケット』

「にんげんしかく」
「りあるおにごこ」
「したまちろけと」

7音+促音「っ」で出来ているベストセラー小説

太宰治『人間失格』
山田悠介『リアル鬼ごっこ』
池井戸潤『下町ロケット』

「にんげんしかく」
「りあるおにごこ」
「したまちろけと」

促音である「っ」が良いアクセントになっていますね。

こうやって見ていくと、太宰治の『人間失格』は究極のタイトルの一つと言えそうです。

何しろこれ、漢字4文字。まるで古来の四文字熟語のように作品の内容がストレートに伝わってきます。究極のタイトルの一つかもしれません。

最後に

理想のタイトルは『7音+ッ』かもしれない

ここまでいろいろ書いてしまうと「何パターンもあるし、違う解釈や例外もあるだろ!」と言われてしまうかもしれません(笑)。ただ、割合として、

⑴耳で聴いたときに7文字に聴こえる
⑵それにプラス、促音「っ」がアクセントとして加わる

という名作は多いように思います。

今年の直木賞は『まいまいつぶろ』?

今年の芥川賞・直木賞候補作を調べたところ、きっちり7音ちょうどの作品に、直木賞候補作、村木嵐『まいまいつぶろ』がありました。まだ読んでないから読もうかな?受賞したらこの記事の裏付けになり嬉しい(笑)。

筆者もさっそく参考にします!

さっそく筆者も今書いている小説のタイトルを「7文字+ッ」にしてみました。ペンネームで応募する予定なので、もし入選したらそのことのみ報告しますね。作品名を頼りに見つけてくれたら嬉しいな(笑)。

そして、いつか出したい第一歌集のタイトルは「7音」ちょうどにしたい。それが今年以降のです。

皆様も、「7文字」もしくは「7文字+α」で小説、漫画、楽曲を作ってみてはいかがでしょうか?もしベストセラーが出たら教えてください!

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