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メンヘラが飛ぶわけじゃない。じゃあ誰が飛ぶのか?

音楽業界はいわゆる「飛ぶ」人が多い。メンヘラだか何だか知らんが、音信不通になるのだ。

しかし「心の病により、飛ぶわけじゃない」と声を大にして主張したい。

僕はうつ病&アルコール依存症で三鷹の総合病院にずっと通っていたのだけど、別に音信不通にはならなかった。

病棟にはいろんなのがいる。
アル中もいたし、分裂病もいた。 双極のⅠ型、シャブ中、適応障害、解離性や摂食、睡眠障害などバラエティに富んだメンヘラの大リーガーたちがウヨウヨしていた。

僕は彼らに「飛んだ?」と聞いていた。
あんまり会話にならなかったけれど、驚くべきことにほとんどの人間が飛んでいなかったのだ。

快晴の空に「雨が!雨が!こんな雨の中、海水浴なんて行けるわけないじゃない!」と絶叫する統合失調症のお姉さんがいた。
彼女ですら「ちゃんと連絡したし、半年後に復帰するねん」とのことだった。

そう、メンヘラだろうが中毒者だろうが、ブッ壊れていようが、飛ばないのだ。

精神病棟で長めの時間を過ごした身として思うのは、「失踪」や「音信不通」と精神疾患に因果関係はないということだ。

じゃあどんな人間が飛ぶのか。 『オンライン上の人格が嫌なやつ』が飛ぶ。

僕は面接をする際に、この『オンライン上の人格』をかなりチェックするようになった。むしろメンヘラかどうかよりも大事だ。

Face to Faceで会うとナイスガイでも、スマホを通すと、性格が爆裂に悪くなるひとがいる。コレがクセものなのだ。

彼らはWindows95のパソコン通信でネットしていると錯覚するぐらい返事が遅かったり、何書いているか意味不明だったり、とにかく意思疎通のリズムが自分本位で嫌なやつなのだ。

時代が変わり、大なり小なりリモートワークの要素が入った。 あなたの会社も、出社したとしてもメッセンジャーアプリでのやりとりがあると思う。

令和の世はオフライン上だけでなく、オンライン上の人格の占める重要度が高くなっているということだ。

そしてこのオンライン上の人格破綻者は飛びがちだ。

「いつも返事がグズすぎる」という人格を持つひとは、危険視しとくほうがいい。リスク回避できる。

反対にメンヘラでも仕事ができる人間はたくさんいる。

彼らは調子を崩しても別に飛ばないし、けっこう根性もある。

やはり病気と「逃亡グセのある人間性」はキッチリ分離しておいたほうがいい。

飛ばれたとき、頭がスッキリする。

ほら、「嗚呼…メンタルの病気だったもんね…」よりも「逃亡しよった!逃亡グセのあるやつだったんだ!」と思いたいではないか。

ちなみに飛ぶ属性は、バンド本隊ではボーカルが多く、裏方の中では映像関係の人が多い。

ドラマーは飛ばない。 古今東西、飛んだドラマーの話など聞いたことがない。 ドラマーはわりと返事も早い。 なるべくドラマーと働きたい。

かつて飛んだ映像監督の話をしたい。

「熊とフナムシ」という僕の曲がある。これは2013年に作られたものだ。
ヴォルグ・ザンギエフが世界チャンピオンになった記念に書いた。

SUPER BEAVERの渋谷くんが出演してくれていて、彼が出世していく度に再生数が上がっていく仕組みになっているビデオだ。

この監督の仕事が素晴らしかったので、2015年にもう一件発注したのだ。

内容は「叫んでよ新宿」という銀魂の主題歌コンペに惜しくも落選した曲。これのMVを撮るというもの。

撮影三日目でバチクソに飛ばれた。弾丸ライナーで飛んでいった。

製作中で、音信不通の末、失踪。 撮影データも持ち逃げするという大罪である。

結果としてMVはリリースできずに終わったし、撮影費はただの損失金になってしまった。悲惨としかいいようがない。快晴の空にどしゃぶりの雨が見えた。

だけど恨みがあったか…と聞かれるとそうでもないのだ。

なんていうか、コレは良くないことなのだけど、「音楽をしていて誰かが飛ぶことなんて日常茶飯事すぎる」という感覚なのだ。

いつもじゃないけれど、想定できるトラブルの範囲なのだ。

たとえば電車の遅延、飲食店でオーダーが通っていない、マッチングアプリで本人と全然ちがうひとが来る、知り合いに紹介されたらマルチだった… こんぐらいなのだ。

そういう意味では作品が完成するというのは、ほんのり奇跡が降った瞬間だ。

アルバムが出たり、MVが出たり、アー写が出るというのは「誰も飛ばすにやり遂げた」という成功の証明なのだ。

10年以上、僕は世の中に音楽をアウトプットしてきた。 飛ばないでいてくれたメンバー、スタッフのおかげでたくさんの表現を世の中に投下できた。

長いことやっていたら「2014年の時だけ好きだった」とか「この曲だけ知ってる」とか「中学時代好きだった」とか「最近知った」とか「懐かしい」とか言われることはザラにある。

この「今のお前には興味ないけれど」という旨の発言に寂しさを覚えないわけじゃない。

だけど、僕が音楽をやってきた時系列のうち、どこか一瞬でも、好きでいてくれた瞬間があったのならファンだと思っている。

書いた歌に、残してきた言葉に、演った時間にたくさんのファンがいたんだなぁと感謝している。


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