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人の力をアイデアに

 AI時代となった今、人がアイデアを生み出す必要があるんだろうかと思う瞬間があった。色々と思考を巡らしてみた結果、やはり(まだ今は)人がアイデアを考えるべきとの結論に至ったので、その背景を共有してみようと思う。

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 一つ目の理由は、AIが持ち得ないユニークな視点から、非合理なアイデアを考えることができるからだ。

 自分たちがアイデアを考える時は、これまでの人生で得た知識に加え、感情や経験を織り交ぜる。例えばミカン愛好家にとって、秋冬にミカンを食べ過ぎると手が真っ黄色に染まるのは当たり前のこと。けれども時にはそれは学校や職場で笑われてしまうこともある。

 そこを逆手にとって、ミカンを食べる時に特化したミカン色の手袋といったアイデアが生まれるかもしれない。どれだけミカンの色素が付着しても手袋の色はミカン色の輝きを増していく、といった具合に。

 縮小するミカンのマーケットはミカンを食べる人の減少を意味する。そこにミカン専用の手袋を投入することは非合理だ。人がデータを超え感情から考えるからこそ論理を超えた発想が生まれていく。

 二つ目の理由は、AIではなく人がアイデアを考えることで、人がモチベーションを持続させることができるからだ。

 例えばAIが「ミカンを蒸留して麹と混ぜて日本酒を作りましょう!インバウンドで日本酒が高値で売れているのでチャンスです!」と提案してきたとしても、当人の関心に紐づかなければ情熱を維持することは難しい。

 どれだけ収益性が高いアイデアであったとしても、「ミカンをお酒にしたくないなぁ…」「そもそも自分、下戸だしなぁ…」と人が感じてしまったら、アイデアをカタチにするアクションが生まれることはない。

 人は自分と関わりのないアイデアに取り組みたくないもの。自分の人生から編み出したアイデアだからこそ、自分が大切にしている考えから生み出したアイデアだからこそ、それをアイデアを実現する取り組みは熱量高く続いていく。

 三つ目の理由は、AIではなく人がアイデアを考えることで、製品やサービスを使ってくれる、お金を払ってくれる方々の存在証明が容易になるからだ。

 アイデアの成否を決めるのは何か?もちろん製品やサービスも重要だけれども、最も大事なことは人が持つ感情だ。何か叶えたいことや、何か解決したいことに寄り添うことが欠かせない。

 AIがアイデアを考案する際に、もちろん市場のデータから顧客の傾向を見つけることができる。しかしながら、本当に存在する一人のリアルなお客様を見ていないが故に、顧客不在のアイデアが誕生する可能性も否めない。

「冬に自宅でアイスを食べる方が増え、またフルーツ果汁をベースにした製品の売れ行きが伸びています。ミカン果汁アイスを今こそ売り出すべき!」とAIが提案したとしても、「ミカンはコタツで皮を剥いて食べたいし...」「果汁アイスは酸味の強いオレンジが最高だし...」なんて風に顧客が思っていれば、そのアイデアに何の価値もない。

 けれども人はリアルに存在する人の声を聞き、そこからアイデアを作り上げていくので、それは顧客の課題解決や願望成就に沿っていく。それはビジネスの可能性を生み出していく。

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 AIによりアイデアが生み出されるようになった。けれども人が考える大切さは消え失せていない。独自の観点を持ったアイデアは、モチベーションを持続させられるアイデアは、顧客が確かに存在するアイデアは、人だからこそ生み出せる。というわけで、これからも頭を捻り続け、人の力をアイデアに活かしていこう。

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