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過去の自分は救わずに

 自分たちは後悔する生き物だ。あの日、あの時に時計の針を巻き戻せたらと思わずにはいられない。そして、その特性がアイデアを考える際の罠を生み出すことも少なくない。

 その事例として有名なアイデアの一つに「学生などの若者に、キャリアに関する情報を提供するサービス」というものがある。このアイデアは「学生時代にキャリアについて学んでいれば、もっと良い仕事に就くことができたのに。人生は大きく変わっていたかもしれないのに」そんな気持ちから始まることが多い。

 これは一見、可能性があるように思えるものの、ほとんどのケースで事業化は見送られる。その理由は、このサービスが「必要」と感じられるのは、人生を歩み、キャリアというものを理解した大人の視点からだから。社会に出る前の学生時代、キャリアに関する情報をもっと知りたいと本気で思う人はごくごく稀という現実。

 もちろん、「子供にキャリアについてもっと学ばせたい!」「自分と同じ後悔を子供にさせたくない!」と思う親はいるかもしれない。しかし、親が中学生や高校生の子供にそのような情報を提供しようとしても、子供たちはそれを余計なお世話と感じ導入は難しくなるもの。

 今回伝えたかったポイントは明確で、現在の自分が過去を振り返り、「あの時、あれがあったらよかった」と思ってアイデアを考えると、そこには罠があるということ。

 大人になった自分であればタイムマシンに乗り込んで使うかもしれないけれども、その当時の自分が使ったかというとそうではないケースが多々。過去を変えたい、やり直したい、もっと選択肢を与えたいという想いはアイデア考案時の罠であることを忘れずに進んでいこう。

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