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LOCAL REPUBLIC AWARD 2019を終えて

LOCAL REPUBLIC AWARDとは?

主旨はこちらのHPをご参照ください.
https://localrepublic.jp/

ものすごくかいつまんで説明すると,近代社会が前提としてきた「1住宅=1家族」に対して,経済圏を介した「地域社会圏」を実践する建築を表彰するもの.今年で2回目となるこちらのアワードですが,非常に素晴らしい作品ばかりがノミネートされたので,ぜひご注目いただきたいところ.

ちなみに審査委員長である山本理顕さんが提唱する「地域社会圏」はこちらの本で良く分かります.

あと経済圏の話は山本理顕さんと仲俊治さんの共著がオススメです.

審査結果と感想

(以下の内容は2019.07.27に開催されたLOCAL REPUBLIC AWARD 2019当日に書いたものです.後からの補足は引用にて追加します.)

「LOCAL REPUBLIC AWARD 2019」の結果報告です. 
「欅の音terrace」は「真鶴出版2号店」と最後まで競り合った結果, 残念ながら優秀賞となりました.とても悔しいです…でも真鶴が1位の価値があることは納得なので,とにかくおめでとうございます!美保さんと同じ土俵で競えたのも嬉しい.

(※冨永美保さんは大学の3つ上の先輩という関係性)

地域社会圏の提唱者である山本理顕さんに推していただけたこともとても有り難いです.同じく優秀賞の「@カマタ」を始め,選ばれた方々の提案はどれも魅力的で刺激的でした.

一方で最後の議論の仕方は不完全燃焼の感が否めないのも実感としてありました.
真鶴と欅の音は評価軸が大きく異なるにも関わらず,(「真鶴」は地方の特徴的な港町・斜面地のポテンシャルと真鶴出版さんのリローカルメディアの実践が建築空間と組み合わさっているのに対して,「欅の音」は東京でありながら特徴のない地域でよくある建物をリノベーションすることで, 暮らし方の選択肢を提供する),前者の議論に終始してしまったため,評価軸が曖昧だった.もちろん時間は有限だけれども,それを多数決で決めてしまうのではなく議論を踏まえて納得のいく評価軸のもと最優秀賞を決定してほしかった.
「欅の音」は地域特性に依存しない点で普遍性を持っていて,それが地域社会圏の新たなプロトタイプの一つになりうるのではないか,という期待がある.そういった都市と建築の議論をキチンと審査員の方々と交わしたかった, というのが正直なところ.公開審査の意義が問われるところだと思う.とはいえ,「真鶴」の評価に異論があるわけでは無いので,改めておめでとうございます!

大事なのは,こういった活動が実際に行われていることを広く周知するとともに,お互いに連携していくことかなと.あまり実際の場では議論されないけれど,思想的な部分ではかなりオーバーラップするところが多いと思うので,そのレベルでプロジェクトの枠を超えて価値を高め合っていきたい.
真鶴出版2号店の非常に重要な点は,このプロジェクトを通して移住者が目に見える形で生まれ,空間的にも場としても地域に還元されていること.それは欅の音ではまだ到達できていないところ.単一のプロジェクトを超えた,真鶴出版のミームの伝播が起きている.欅の音もそれを掴んでいきたい.

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仲さんから“「欅の音terrace」の方が「食堂付きアパート」よりもっと先を進んでいる”と仰っていただけたのがとても嬉しかった.食堂付きアパートと言えば職住一体型の事例の代表作であり,その参照なくしては語れない非常に重要な建築.都市の建築として,これからも繋がれればと思います.

その後いろいろありまして

そんなことをTwitterに書いていたら,山本理顕さんから「プロトタイプになりうるのではないか」という部分に対してリツイートとともに,

の一つになると僕も思います。未来の住宅は「欅の音」のような住宅になる。記念すべき作品です。

という有難いコメントが.

そして翌週のマルシェ(2019.08.03)にお誘いしたところ,山本理顕さんや仲俊治さん,蜂屋景二さん,所員さん方が足を運んでくれました.

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(以下は,その日の感想です)

おかげで,実際に現地で地域社会圏のリアリティを議論できた良い機会になりました.
建築はもはやハード/ソフトの対立構図ではなく,いかに設計段階からそれが実際に使われることを想定するかが問われていて,両者は入り混じりながら立ち現れるものだと思う.様々な方と議論しながら実感したこと.何より,こうして真摯にリアクションしてくださったことが大変有難いです.

一連の出来事を振り返って

LOCAL REPUBLIC AWARD 2019で出会った方々とはその後も色んな場所でお会いしたり,お互いの場所を尋ねたり,交流が生まれています.参加した建築家たちがメリットを受けるのはもちろんですが,何より,「欅の音terrace」が今までよりもっと世に広まり,より多くの方々が足を運んでナリワイに触れてくれるようになることが第一です.建築家はそのために動くべき.
評価されることはもちろん有難いのだけれど,それはあくまで一つの手段でしかなくて,目的はナリワイが発展してくれることです.

なので,今後もできるかぎり色々なところで話をして,認知度を上げて,価値を高めていければなと.

1991年神奈川県横浜市生まれ.建築家.ウミネコアーキ代表/ wataridori./つばめ舎建築設計パートナー/SIT赤堀忍研卒業→SIT西沢大良研修了