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2‐1 身体を使ってやってみる/2-2大きくつくって、小さく動く

2‐1 身体を使ってやってみる


 ここからはいろんなパターンの運動イメージを想起して、みなさんのパフォーマンスにフィードバックして参ります。

 といっても、難しいものはありません。どれも「そのままやれば、そのままできる」最大公約数的なものばかりです。優先したのは、いつでもどこでもできる「再現性」、そして、いろんなジャンル、技術、場面にもアレンジできる応用性です。

 ここでは「文字情報を読んで→文字情報で表されたことを理解する」ではなく、

「文字情報を読んで→身体でやってみて→身体が感じたことを→脳でキャッチする」

 の過程を踏んでほしいと思います。「身体を通じて、脳が理解する」を小さな目的地といたしましょう。

2‐2 大きくつくって、小さく動く


 めいっぱい動いているのに、どうも伝わっていかない。体力や筋力はあるのに、活かせている気がしない。小さくまとまっている、と指摘されることがある。一生懸命やっているのに大勢に埋もれがち……もしかしたらその原因は、「運動イメージの小ささ」にあるかも知れません。

 では早速、運動イメージの大きさを変える実験をやってみましょう。

「右の手のひらを上にして、握った左手を上から落としてポンと手を打つ」

 という動きを行います。


スタートの点(左手があるところ)をX、ゴールの点(右の手のひら)をYとします。次のA、Bどちらのパターンでも身体を実際に動かすのはXからYまで、としましょう。

 A:XからYまで動かす運動イメージで行った場合
 B:Xよりも20センチ上のX、からYよりも20センチ下のY、まで動かす運動イメージで行った場合

 AとBを比べると、Bの方が威力が上がったと思います。

 大きな運動イメージをつくっておいて、実際はそれよりも小さく動く。


 これは武道や武術などの〝型〟に隠されたパフォーマンス向上の秘密でもあります。外見上は同じ運動に見えても、運動イメージが大きいため、動員される筋肉が変わり、出力される運動が変わってきます。

 型は「そんなに大きく動いて実際に使えるの?」って疑問に思うくらい、スタンスが広かったり、拳を随分と後ろに引いたりしてオーバーな動きのオンパレードです。しかしこのオーバーさこそ「大きくつくって、小さく使う」極意なんですね。

 この実験では筋の出力が「威力」という形でわかりやすく表現されましたが、舞台上の表現や演技なども、運動自体が変わりますから「伝わり方」が変わってきます。

 たとえば「エイ・エイ・オー」と拳を空中に突き上げるシーンがあるとします。この運動を、

 A:拳を最下点から最高点まで動かす運動イメージ
 B:拳を最下点よりも下から最高点よりも上まで動かす運動イメージ

 でやった場合、どちらの運動のほうがエネルギーが伝わるでしょうか? ぜひ試してみてください。

 この逆の応用として「やる気のない人が仕方なくやらされるエイ・エイ・オー」を演じる場合は、運動イメージは小さい方がいいかも知れませんね。

  演劇、バレエ、ダンスなどの「観せる」芸術は、動きやポーズ、所作などを通じて、観ている人たちの脳に何かを感じさせる身体活動です。

 とくに視覚を通じたミラーニューロンの活性化がキーポイントで、テキトーに動かせばテキトーさが、真剣に動かせば真剣さが、ナチュラルに動かせばナチュラルさが伝わっていきます。

「その運動は、どんな運動イメージから生まれているか?」
「伝わりやすいのは、どんな運動イメージか?」

この視点からの問いは、身体表現における「見えない差」となるでしょう。


PS.パフォーマンスは変えられる。

無料公開、パフォーマンス医学


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