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猫と赤ちゃんが一緒に暮らすこと

我が家には7歳の白猫がいる。とにかく大人しく優しい性格をした女のコである。猫なのに一度も「シャー!」と全身の毛を立たせて威嚇をしたこともなければ、爪を立てて人間を引っ掻いたこともない。1階のアパートに住んでいた時、野良猫が庭にやってきて窓越しに挑発された時だって、うちの猫は「にゃあ!にゃあ!」となんとも情けない声で屁っ放り腰で対抗していた。どちらかと言うと人間の我々に助けを求めていた声だったかもしれない。

そんな大人しくて弱気な猫ちゃんであるが、そろそろ2歳になる息子に猛烈にいじめられている。息子は生まれたばかり時は3キロで、猫の体重と同じくらいだったのに、今となっては12キロ近くとなり猫の4倍の質量になった。本人はいじめているつもりはないのだろうけども、追いかけ回して、捕まえて、抱っこして柔道みたいに投げたりしている。猫にとっては大迷惑である。

猫が嫌がっているからやめなさいと息子を叱るけども、言い方が弱いせいか息子は笑って誤魔化してしまう。一度夫が大きな声で「やめなさい!」と怒鳴ったことがあって、その時は流石に叱られたのが分かったのか息子は泣き出した。悪いことをした認識と言うよりも、自分が何か責められていることが怖くて泣いている感じだった。赤ちゃんと少年のグラデーションの中にいる、まだ2歳にもならない息子は善悪の判断がつかない。

生まれた時から猫がいる生活だった息子ではあるけれど、猫を猫として認識できるようになったのは1歳の後半くらいからだと思う。それまでは毛玉の塊、動くぬいぐるみくらいにしか認識していなくて、通りすがる猫ちゃんを無遠慮に鷲掴みして毛をむしり取っていた。あまりに可哀想なので、あまり猫と息子が触れ合わないよう配慮していたけれども、狭い家なのでどうしても接触してしまう。

猫も逃げれば良いのに、わざわざ息子の側でくつろいでは暴力の被害に遭っている。息子のことが苦手なのに側に来るのは、きっと嫌いではないからなんだろうけども、猫も猫でちゃんと抵抗するとか反撃をするとかしないから息子が調子に乗るのではないかと考えてしまう。一度引っ掻かれるとか、噛み付かれるとか、痛い目にあった方がいいんじゃないかと思うけれども、うちの猫ちゃんは優しいので暴力には訴えない。

赤ちゃんと猫が暮らす上で一番困ったのが猫トイレである。猫砂を砂場だと思って遊び場にしようと、狙っているのだ。我が家では猫トイレを部屋のコーナーに持っていき、ベビーゲートで囲っている。そう簡単に息子に猫トイレにアクセスできないようにはしているけども、どう言うわけか突破されて猫砂が飛び散ることもある。一番困るのは息子が猫砂を口に入れることだ。掃除機でこまめに吸っていても、細かい砂の粒がリビングに落ちていて、それを口に入れてしまう。医者に相談したけれども、その程度だったら大丈夫とのことだが、不衛生で頭を悩ませている。

2歳に近くなった今は、息子は猫を見かけると指をさして「にゃんにゃん」と言うようになった。「優しくしてあげてね」と言っている間は、優しくなでなでしてくれるけども、少し目を離すと猫に向かって奇声をあげて追い回している。息子にとって猫はどういう存在なのか。一緒に遊ぶ仲間というより、動くオモチャのような存在のような気がして心配でならない。

私がソファで猫を抱っこしていると、その膝は僕のものだと言いたげに、息子が猫を思い切りどかした事があった。明確に嫉妬という感情を表現した息子を見て、息子にとって猫はきょうだいのような存在で、猫は息子にとって力の弱いお姉ちゃんなのかもしれないと思った。

今うちの猫ちゃんは7歳で、あと10年くらいは生きてくれるのだろうか。猫ちゃんの寿命は息子が12歳、小学6年生、中学1年生頃くらいだろうかと想像する。その時の猫ちゃんと息子の関係はどうなっているのだろうか。その時の私はどうなっているのだろうか。

今、息子が猫と戯れるのに力のコントロールができていないけれども、もう少し成長して良い関係が築けるようになるのではと期待している。家族として、猫ちゃんが息子にとってのお姉ちゃんで、親友のような存在になって欲しいと願っている。

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