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展覧会レビュー「イヴ・サンローラン」「大巻伸嗣」at. 国立新美術館


展覧会レビュー「イヴ・サンローラン」「大巻伸嗣」at. 国立新美術館

こんにちは、着物・オブジェアーティストの重宗玉緒です。

2023年11月、国立新美術館に「イヴ・サンローラン 時を超えるスタイル」「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」を観に行きました。


鑑賞メモ。


■展覧会概要

会場: 国立新美術館(東京都港区六本木)
会期:「イヴ・サンローラン 時を超えるスタイル」は2023年9月20日(水) ~ 2023年12月11日(月)
 「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」は2023年11月 1日(水) ~ 2023年12月25日(月)

■所要時間


15:00頃に会場着。
先に「イヴ・サンローラン 時を超えるスタイル」を鑑賞。時間指定なしのチケット。
まあまあボリュームあり、じっくりメモなど取りながら2時間強ほど。
※写真はごく一部の展示室を除きNG。ものづくりする方はクロッキー帳やメモ帳あると良いです。


その後、2Fの「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」(こちらは入場無料)へ。
こちらはゆっくり観終わってちょうど18:00の閉館時間でした。
※写真撮影可。

■「イヴ・サンローラン 時を超えるスタイル」

「ファッションは不安を取り払い、自信を与え、自己を受け入れることを可能にさせると私はずっと信じてきた」
イヴ・サンローラン 

最近ファッションの関連の展覧会が、以前よりかなり増えている気がします。
私も大好きで、開催されると大体観に行っているので嬉しい。清澄白河の現代美術館で開催されたディオール展、渋谷Bunkamuraのマリークワント展。そういえば数年前にもドメスティックブランドのデザイナーを多く集めた展示が国立新美術館で開催されてましたね。
あれもトレンドの流れがわかってとても面白かった。(展覧会名忘れてしまいました。)

若くして才能を発揮し、ディオールに早くから見いだされ、ディオール急逝後にブランドを引き継ぎフランスから喝采を浴びたサンローラン。

15歳のサンローラン少年が紙の着せ替え人形とそのドレスを作っている光景は「かなり強めのオタク少年だな・・・!」という感じでシンパシーを感じてニヤニヤしてしまいました。ただその着せ替えのドレスのデザイン・クオリティはすごかったですが。

私は美大でテキスタイルデザインを専門に学びましたが洋裁は出来ないので、細かいところは専門外ではありますが、実物をみただけでパターンの細かさ・美しさがわかる。

ぱっと見はAラインのドレスだけど、胸の下で少し絞ってあるものなどはこれは着た時にとても体が美しく見えるだろうな、とか。

オートクチュールのブランドなので当然なのでかもしれませんが、現代で身近にそこまで丁寧に作られた服をみることは無いので、やはり違いと美しさに感動します。


スタイリングは、エレガントな服にスパニッシュハットの組み合わせのミックス感に特に惹かれました。
ミクスチャーのスタイリングで「違和感があるけどまとまっている」というのが大好物。
(これは東京のファッションで特に顕著というか、日本人が得意なところなのかなとも思います。)


あとはサンローランのスタイリングはアクセサリーやハットが欠かせないことも特徴なようでした。
それがあってこそスタイルが完成する、と。(強く同意!)
動植物や月、星、お花などの普遍的なモチーフを使ったアクセサリーたちはどれも夢のような可愛さでした。
キラキラするものの求心力。
(販売の展示会をする時もアクセサリーがあると人が集まって来るのですよね。)

サンローランはあまり旅行が好きではなかったと書いてありましたが、その中でも特に惹かれたのがモロッコで、晩年もモロッコのマラケシュに自宅を置き、引退後の財団設立もパリとマラケシュなので、相当思い入れのある場所なんだなというのがわかりました。

スペイン黄金時代の色彩や文化にも惹かれていたようなので、私はサンローランがメキシコにもし行っていたらどんな服を作っていたんだろうか?という妄想をしていました。
アステカ・インカ帝国の土着的文化にスペインの影響が色濃くミックスされたメキシコ。
私はメキシコが大好きで、訪れる前からモチーフにして作品を作り、実際に一度訪れもしましたが、また必ず行きたい場所です。
モロッコとはまた違う色彩・文様・文化を見たら、どんな服になったんだろうと思いました。

最後の「日本とのつながり」という章に関しては、サンローランが日本にビジネスで来ている印象しか受け取れず。
この章はいらないのでは・・・と思いました。
それよりも引退後、晩年に自宅を持ってまで過ごしたモロッコ・マラケシュとの関わりをもっと掘り下げるか、一点でも多くドレスの実物を見たかったので、ちょっと残念。

サンローランの師匠のディオールは、日本との関わりが深く、日本をオマージュした作品も多くあるからなのでしょうか。日本の展示だからって、無理やり日本との繋がりを強調しなくていいのに・・・!


アーティスト(ピカソ・ゴッホなど)へのオマージュやコラボレーション制作もたくさん行っていて、「表面に基づく美学から、身体を土台にした美学へと移行することによって二次元から三次元へその状態を変化させた」と説明書きがあり。
これは私がやっていること(アナログで絵画やオブジェを制作し、それを素材としてテキスタイルをデザインし、着物や帯にする)と同じで、烏滸がましいと思いつつ、共通点を見つけて嬉しくなりました。
二次元から三次元への変化、アナログとデジタルの行き来。

とてもたくさんアイデアを貰える展示でした。

私は展覧会を見に行く時はいつもクロッキー帳を持っていって、写真不可の時はメモやスケッチをしながら観るのですが、この日はうっかり忘れてしまい、作品リストのスキマにメモを取りながら鑑賞。これはこれで後日思い出すのに良いかも。


グッズはあまり良いものが無く残念。
ファッション関連の展示は、グッズが充実していることが多くてそれも楽しみの一つなのですが・・・。

■「大巻伸嗣 真空のゆらぎ」

これが無料でいいんでしょうか・・・・というような良い展示でした。

1つ目の大きな壺の形の作品も良かったですが、特にタイトルにもなっている「真空のゆらぎ」という作品がすごかったです。

広く薄暗い展示室に継がれて巨大になったポリエステル布。

ほぼ透明な薄い布が、ファンの風を受けてはらみ、膨らんだり、波打ったり、すっと力を失って落ちていったり。

単純にただ風をあてているだけではない、有機的な動きをする布。

継ぎの部分は多分縫ってしまうと糸で重量が出てしまったり、引き攣れてしまうと思うので、熱で圧着してあるのだろうか?
ずっと見ていてもどうやって作っているのか全然わからない。


波打ち際に立って、音のしない嵐の海を見ているような不思議な体験でした。六本木というロケーションの屋内で、すごい自然を見たような感じ。

もう一度観に行って、ベンチに座ってぼーっとしたり瞑想したりしたいです。


【大巻伸嗣 アーティストプロフィール】

1971年岐阜生まれ、東京芸術大学彫刻学科卒、同大学教授。

影や闇といった身近であるが意識から外れてしまうもの、対立する価値観の間に広がる境界閾、刻々と変化する社会の中で失われてゆくマイノリティー等に焦点を当て、「存在」とは何かをテーマに制作活動を展開する。「空間」「時間」「重力」「記憶」をキーワードとして、多種多様な素材や手法を用いて、曖昧で捉えどころのない「存在」に迫るための身体的時空間の創出を試みる。主な作品として、『ECHO』シリーズ、『Liminal Air』、『Memorial Rebirth』、『Flotage』、『家』シリーズ、『Gravity and Grace』等がある。日本国内のみにとどまらず、世界中のギャラリー、美術館などで意欲的に作品を展開している。



■この日の着物

新作の着物を秋らしい小物使いで着てみました。

足元はスポーツブランドのソックスとローファーでミックスコーデに。


■今後観に行きたい展示

・「見るまえに跳べ 日本の新進作家vol.20」東京都写真美術館
・アニッシュ・カプーア/GYLE GALLERY
・「横尾忠則 寒山百得」東京国立博物館
・リチャード・セラ「Circle,Diamond,Triangle」ファーガス・マカフリー
・「永井天陽 遠回りの近景」埼玉県立近代美術館


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