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うつわマガジン2020

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2020年9月の記事一覧

ゴルバチョフとナスのムッタバル

ゴルバチョフとナスのムッタバル

ナスの皮が焦げるニオイが好き。
ああ焦げた、いい感じねと、いつものように新聞紙を広げ、焦げたナスを風呂上りのベビーのように寝かせおく。くるりと包むのはタオルでなく新聞紙。ちょっと黄ばんだ新聞紙が、気になった。

新聞紙をくるくるくるとやって、ナスは一列に眠ったが、そこにあらわれたのは、ゴルバチョフだった。なんともいい場所に。目があった。

とんでもない新聞を使ってしまったらしい。注視すると日付は1

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美醜のポステリオリ

美醜のポステリオリ

皮のごつい手袋をはめて、窯から出たてのがつんと熱い土鍋の蓋をあける。土鍋のなかにぽたりぽたり落ちた汗が、しゅうっと一瞬で消えてゆく。時間、そしてわたしの分身までうばってゆくのか。

釉薬の化学変化が散々な結果であり、窯出しするも8割失敗だった。

泣いたって解決しないから、くちびる噛むけど、うっぷす、みえない亡霊ボクサーにお腹を殴られたような強い腹圧を感じる。胃が内臓ごと突き上げられて、くらくらし

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美醜のアプリオリ

美醜のアプリオリ

妥協はグサっと崩す。


6キロの土の塊を、掌(てのひら)で練って轆轤(ろくろ)でひいて、クゥッとなるほど全身でここまでたどり着いたけれど、どこかに歪みを感じることがある。数値的な差異とはちがう感覚。

裸になるくらいの覚悟があるけれど、惜しまずグサッと斬って断面をみる。ストイックな行為ではない。原因となるものが結果なのだから、創造は可笑しいのだ。結果は良し悪しだけとは限らないし、美醜はアプリオ

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キズついた桃のように

キズついた桃のように

見た目はアレだけどね、おいしいから買ってきたよと、ゴロゴロ桃が入った茶色い果物袋を抱えて成人息子が帰ってきた。

「さちあかね」だったと思う、かたい桃だけど、おいしんだ。ヘルプで一日桃を売ってきた彼は、5つ買ってきた桃のヘタあたりをクンクン嗅ぎながら、いま食べるならコレと言う。なんだなんだ、即席くだもの販売員。

いいことなんかしていない

流通にのらない(のれない)農水産物をもっと手軽に積極的に

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