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【書評】「会社辞めたいループ」から抜け出そう!〜フリーランスにこそ必要な一冊〜

「会社も、上司も、ぜんぶガチャ。」
そんなかなり衝撃的な帯のこちらの一冊。

「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 〜転職後も武器になる思考法〜は、「退職学®︎という新しい学問を探求されている佐野創太さんのご著書。

ご自身が転職エージェントに勤めながら、何度も転職に失敗してきたという経歴の持ち主の佐野さんは、数々の「転職」に関わる中で、”転職だけうまくいく人”と”転職後もうまくいく人”がいることに気づき、その違いからしあわせな転職のあり方について研究されています。

過去に転職経験なし、昨年20年間のサラリーマン人生に終止符を打ち、フリーランスになったわたしには一見無縁かと思いきや、「退職」経験を振り返るよいきっかけとなると同時に、フリーランスとしても必読書となる一冊でした。

転職だけうまくいく人と転職後もうまくいく人の違い

著者の佐野さんは、転職だけうまくいく人と、転職後もうまくいく人の違いはズバリ、”転職活動に本音で挑んでいるかどうか”と分析します。
転職活動において大事なのは、いわゆる転職活動の前に行う『本音を磨く』ステージだとし、この『本音磨き』に独自のメソッドを展開しています。

著者の言う『本音磨き』の3ステップはこちら。

ステップ1
ネガティブな感情を吐き出して本音を〝把握する〟「退職成仏ノート」
ステップ2
人間関係から本音を〝整理する〟「人間関係の仕分けノート」
ステップ3
本音を職場や面接で伝わる言葉に〝磨く〟「明日への手紙」

「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 〜転職後も武器になる思考法〜
サンマーク出版 佐野創太著
P.36『本音磨き』の3ステップ

『本音を磨く』とは?

『本音磨き』の詳しい手順は本書を読んでいただくとして、ここでいう『本音磨き』『本音を磨く』はどういうことを示すのでしょうか?

佐野さんは、特にサラリーマンの本音は曇って見えなくなっており、実はこれこそが「会社を辞めたいループ」の原因だと言います。

津田塾大学元教授・神谷美恵子著『生きがいについて』より、自分の心の声に耳を傾けない、〝自己に対するごまかし〟が生きがいをそぐという主旨の一説を引用し、「自分に嘘をつき続けること」の危険性を語っています。

先日読んだ、山口拓朗さんの著書『ファンが増える!文章術』の中でも自分らしさを見失うステップと取り戻す方法についてくわしく語られていましたが、「らしさ」を取り戻し、「自分らしくいる」ことと、「本音を磨き」=本音を見つけ出し、「本音で話す」ことがちょうど対応しているようです。

この本について書かせていただいた人生初の書評noteは、わたしの記事の中で一番多くの「スキ」をいただいております。(めっちゃ嬉しい💓)

自分の本音を映す鏡=「感情」であり、「ちょっとのモヤモヤ」=くもりによって本音は見えなくなる。曇ったらその都度キレイにしておかないと、そのうち磨いても磨いても顔が映らない、掃除をサボり続けた風呂場の鏡のようになってしまうんですよね。

そして、わたしの肌感覚的に、サラリーマンて基本は自分の本音が見えなくなっている。かく言うわたしも、8ヶ月前会社を退職した時点では、自分の本音=何が好きで嫌いか、何をしたくてしたくないのか、全くわからなくなっていました。

本音を見えなくするモヤモヤの5つの原因

佐野さんはこの本の中で本音を見えなくしているモヤモヤには5つの原因があるとおっしゃっていますが、わたしは特にこちらが響きました。

④最高の会社はあっても、最高であり続ける会社はない。
なぜなら自分も会社も「変わり続ける」から。

会社に勤めていたとき、わたしが自分の在り方を決めるのはいつも会社(上司)の評価でした。こう言う態度で、こういう行動をしたら評価された。だから、そのようにしておく、という具合に。
ところがそのうち、同じことをしていても評価されないどころか叱責される事態にどう立ち回れば良いのかわからなくなり、また会社に評価される場所を探して収まりにいく、ということをしていました。

価値を自分の外に置いているので、常に自分の軸が定まらなかったのです。振り返れば、わたしが会社で感じていた多くのモヤモヤの原因はこれだった気がします。自分の軸がない状態で働いているのだから、それは辛くもなるよね、と今ならわかりますが、当時はただモヤモヤ→会社辞めたいのループにハマっていたんですよね。

自分の本音を磨くことで初めて、自分のブレない軸が見つかる。そのことを本書が教えてくれます。

『本音』を言える職場づくり

わたしは2021年4月までの20年間、半導体工場のエンジニアとしてサラリーマンをしていました。サラリーマン時代、職場環境をよくすることには何だか情熱を持っていて、ある日工場長に直談判して実現したコミュニケーションセミナーのテーマは、「”ホンネ”を言える職場づくり」

この時講師として招致したのが、『ファンが増える!文章術』著者の山口拓朗さん、山口朋子さんご夫妻です。
セミナー冒頭、講師の山口拓朗さんから「ずいぶん攻めたテーマだなと思った」というコメントを聞くまで、攻めたテーマだとすら思っていませんでした。というのも、日本人は〝No〟と言えないなどと言われますが、わたしにはその感覚がなく、ホンネを言うことに全く抵抗がなかったんです。

わたしが勤めていたのは半導体工場なので、目指すことはごくごくシンプルで、「良いものを、早く、安く」。会社全体として見たら、最適解はいつも論理的に導かれるわけなので、自分が正しいと思うことを口にすることに何ら躊躇いはありませんでした。

だから、みんな表立って言いたい事いえる職場になったらいいよね、と単純に思っていました。

でも、実際のところ自分がどうしたいのか?という自分の本当の想い=『本音』は、持ち合わせていなかったし、なんなら会社に自分ごとを持ち込むこと=悪とすら思っていました。

いつか同期の友人に「わたしってワガママなのかな?」と尋ねたら、「あなたは我は強いけど、ワガママではない」と言われてホッとしたことがありましたが、自分の本音がわからないというのは厄介なことなんですよね。

「『本音』を言える」ためには大前提として「自分の『本音』を知っている」必要があるということに、当時の私は気づいていませんでした。。。

人間関係に白黒つけるということ

会社を辞めてフリーランスとして働くようになって、わたしはあるモヤモヤに襲われました。

とりあえずできることにはどんどん手を挙げて引き受けていくうち、ありがたいことに、「あれやって」「これお願い」と頼まれて仕事をいただけるようになったのですが、「自分はいいように使われているだけなのではないか」という不安や不満を感じるようになってしまったんです。

このモヤモヤを吐き出した時に言われたのは、「人間関係に白黒をつける」ということでした。
目の前の人が、私のことが好きで、私の価値を認めて頼んでくれている人なのか、ただ使えそうだから便利に使ってやろうと思っている人なのか、その白黒をつけるということです。
「あなたは今それをしていないから、グレーに囲まれた世界に生きている」と言われ、「確かに!!」と深く納得しました。

以来、誰かと向き合う時に「この人は白か?黒か?(敵か?味方か?)」という判断をして、自分の味方だけとつながっていくことを決めました。
その頃にしたツイートがこちらです。

わたしは誰かを嫌いになってはいけない、人をジャッジしてはいけないという思い込みを持っていましたが、それをしないことによって受け取れていなかった たくさんの愛があったことに気付かされた瞬間でした。

「人間関係の仕分けノート」

本書でこの「白黒をつける」にあたるのが、「人間関係の仕分けノート」です。

本書によれば人間関係は、
✔️つながり
✔️しがらみ
✔️無関心
の3つに分けられる、とあります。

まさにこれが私にとっての「白黒をつける」ということでした。
人間関係を仕分けというとなんだか悪いことをしているようですが、とても大切なステップだと自信をもって言えます。本書で解説されている仕分けのポイントがめちゃめちゃわかりやすかったので、表にしてみました。

「つながり」と「しがらみ」を見極めるポイント

「つながり」と「しがらみ」を見極めるポイント
「「会社辞めたいループ」から抜け出そう!」より抜粋

そして「つながり」と「しがらみ」を見定めるために有効な方法として、「退職をほのめかす」ということが書かれていましたが、実際に退職を経験してみて私もこれを強く感じました。

辞めるとなると、それまで「口には出さないけど思っていたこと」を言ってもらえるようになるんです。

わたしがサラリーマンには向いていないと感じていた一番のポイントは、思ったことを何でも言ってしまってたびたび場が荒れることだったのですが、(わたしが会社で一番怖かったのは、自分の発言によって起こる「炎上」でした)

「あなたみたいに何でも言ってくれる人が居なくなると困るよ」と言われたんです。

今まで一度だってわたしに味方してくれたことなんかなかった人に!笑

さらに最終日には上司が「あなたと働けて、めっっっちゃ楽しかった!」と言ってくれて、20年間に溜まりに溜まってわたしの感情を堰き止めていた何かが涙とともに一気に流れ出て、会社に対するネガティブな想いが昇華された気がしました。

この昇華のステップが退職後の人生のためにはめちゃめちゃ重要で、本書では「退職成仏ノート」を書くというやり方が詳しく解説されていますので、前の会社や人間関係にモヤモヤが残っている人はやってみることをおすすめします!

さいごに

誰と仕事をするか?は大きな問題です。同じ仕事でも、この人のために働きたい!と思う人のためにするのか、アゴで使われるのとでは幸福度ややりがいには天と地ほどの差があります。
会社員の場合なかなかむずかしいですが、フリーランスであれば、ここは自分でいかようにでもコントロールできます。

そして過去にしてきた退職が昇華できていない場合、「やっぱり辞めない方がよかったかな」と迷ったり、辞めざるをえなかった環境を呪ったりと言った余計なところにエネルギーを注ぐことにもなりかねません。

「会社も、上司も、ぜんぶガチャ。」
帯に書かれたこのコピーには、「ガチャなんだから、何度でも引き直せばいいよ、やり直せるよ」というメッセージも込められているそうです。

今が辛いとしても、いつでも『本音磨き』によって人生は変えられます。

「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法」は、会社を辞めたい人、これから転職する人はもちろん、わたしのようにフリーランスで働く人にこそ読んでいただきたいオススメの一冊でした!

この本を読みながら、20年のサラリーマン時代のこと、退職を決めるまでのこと、退職を切り出してからの1ヶ月のこと、フリーランスになってからのこと、、、色々な思い出がよみがえってきて、色々な切り口で心が揺さぶられ、書きたい事があふれて止まらなくなってしまいました。
(これでも自分としては削ったのですが)4,500字超えの書評をさいごまでお読みいただきありがとうございました!

あなたの「スキ」がはげみになります💓
これからも書評を書いていく予定ですので、フォローで繋がっていただけたらうれしいです♬

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