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時代が必要とすること

プロジェクトを進める際、陥りがちな失敗として、ゴールの達成ばかりに気を取られてしまうということがある。
いや、完全な失敗とは言わないまでも、終わったときに到達したかった場所はここだっけ?となるケースがあるように思う。

目標は達成したが、実現したかったのはこれ?

ゴールの達成だけを目指してしまうと、場合によってはゴールの達成によりプロジェクトを終わらせることが目的化してしまうことがある。本来何を目指していたのか?ということとズレたものを追いかけるということが起きてしまう。
また、終わらせることばかりを目指すことになり、プロジェクトが単発化して、本来段階的にステップを踏んで達成しようとしていたことが、そこで立ち消えてしまったりする。
何のために仕事をしているつもりなのか?が問われる。

もちろん、具体的なゴールだけでなく、プロジェクトそのものの目的やそれを支える背景的なポイントオブビューもきちんと認識されていれば、そういうことにはなりにくい。ちゃんと「何のために?」という問いにつねに立ち返ることができれば、ゴールの達成だけを追いかけ、プロジェクトを終わらせることが目的であるかのような誤解は生まれない。

しかし、とにかく終わらせようと近視眼的になってしまったり、そもそも何のために具体的なゴールとして数字を追いかけたり、アウトプットを生み出すのかを決めた根拠となる目的の認識が甘かったり適当だったりすると、よろしくない結果が生じてしまう。
数字さえ辻褄を合わせればよいと考えたり、目的とは無縁なアウトプットの品質にこだわりはじめたりという無駄な労力が費やされる。

何を目指して行っているかと、そのために何を行い、どんな具体的な結果を生み出すかという関係を設計するのはもちろんのこと、それだけでは足りない。
プロジェクト進行中に目的と実施内容の関係をより詳細に落とし込んでいったり、見直しをはかったりする作業が、最初からプロジェクトの設計やマネジメントの視点に盛り込まれていなければ、結局は最初のゴール設定に引っ張られ、状況の変化に合わせた調整がされないまま、追いかけるべきものを見誤ったまま進んでしまいがちだ。特に、期間の長いプロジェクトになれば尚更だ。

変化する環境の中でのマネジメント

プロジェクトを進める上での背景、その背景としてある状況や環境において自分たち何を実現したいのかという目的、そして、その目的の具体像としての達成目標や、その目標達成のための成果物と作業のスコープ。そうしたものの関係を、常に変化する環境において考えて設計し、刻々と変化する状況に応じて適切に変更のマネジメントを行う。
初期のプロジェクト設計も大事だが、常にあらゆる情報が最初から万全に手に入っているわけではないから、仮説ベースで動くところもあるで、仮説が正しくなかったときにどう対応するかも設計に盛り込んでおく必要がある。
この環境変化と未知の領域をもつ状態において、背景、目的、目標、スコープをバランスさせながら、どう進行するか? それが常にプロジェクトにおいては課題としてある。

今週も、とあるプロジェクトで、未知のところがある状態で仮説ベースで組み立てていたプランが、その仮説が大きく外れたことが判明しプランまるごと変更させなくてはならない状況になった。

期間の制約があるなかで、どう立て直すかをクライアント側の担当者も交えて、ポジティブに話しあい、最終的にリカバリー策として当初とはまったく別のゴールとスコープをもったプランに落とし込めた。問題は発生したものの、ちゃんと対応でき、結果的に問題発生前より、取り組むべきところにフォーカスできる目標やスコープ設計ができたように思う。

その際、役に立ったのは、自分たちがどういう環境で、どんなアセットを持ち、どういうことを実現したいと考えているかというヴィジョンが持っていたことだ。
具体的には、その直前に、ビジネスモデルキャンバスのフレームワークを用いることで、どういう社会環境において誰に対してどんな価値提供をしようとしていて、そのためには、どんなチャネルや活動の整備が今後必要になってきそうかを議論し、整理できていたことだ。次のアクションとしては、このあたりの課題にチャレンジしていく必要がありそうですね、という方向性が共有できていた。

その整理ができていたことで、ターゲットユーザーに関する仮説が一部間違えていたことが判明しても、類似の目的のもと、異なる目標とスコープをもつ全く別のプロジェクトのおおまかなデザインを1時間半ほどの議論のなかで導きだすことができたのだと思う。

単独のプロジェクトとして、何を目指すかを考えていただけでなく、もうひとつメタな視点で自分たちがいま、この環境下と自分たちがもっているアセットを用いて、何を実現すべきで、そのために何が課題としてありそうかを考えられていたことが大事なことだったのだと思う。そのメタ視点があったから、特定のひとつのプロジェクトに問題が生じても、すぐにデザイン変更ができたのだろう。

当然、このケースの場合、プロジェクトは終わらせるものではなく、つなげていくものとして位置付けられていた
プロジェクトを単独でみるのではなく、背景としての環境において何をなすべきかという視点でみることができるようにしておくことで、複数のプロジェクトを連続的で、連携したものとして捉えることができるようになる。各プロジェクトの目標を達成することが主目的ではなく、複数のプロジェクト全体として何を実現しようとしているかが考えられるようになるのだと思う。

いま、この時代に何をなすべきか?

ここまでの変更が生じるのは、わりと特殊な例だ。
だが、もうすこし軽度な変更は、プロジェクトを進めるなかで環境が変化したり、プロジェクトを始めた当初は未知だったことが明らかになったりすることで、そこまでに設定していた目標やスコープに変更が必要になるケースは少なくないはずだ。
特に新たなことに取り組む、それなりの大きさのプロジェクトなのであれば、進行中に多かれ少なかれ調整の必要性は生じる。

そういう時に環境の変化や新たな情報の入手による仮説の見直しに対応して、プロジェクトの目標やスコープを適切に見直せるかは、本当の意味でのプロジェクトの成否に関わる。
そもそも、そうした環境の変化や仮説の確かさを確かめる目やそれを行う作業がプロジェクトの中に盛り込めているか。それが一番のポイントだ。

その際、判断の視点は何だろうか。
最近、僕は「今の時代に必要とされているものは何か」を問い続ける視点なのだろうと思っている。今の時代が社会が必要なことをちゃんとやるべきだと思うし、やりたい。

今この時代というものを考えると、必要でないことをやっていられるほど、人材も人手も余裕がある時代ではないし、必要でないものに資源を費やせるような環境ではもはやない。
一方で地球環境的にも、人間社会の生活環境、ビジネス環境的にも必要なことをちゃんとならないといけないことはたくさんある。
クリエイティブであることが必要だとしたら、そういう時代が必要とするところにちゃんと創造性を投入できればと思う。

だから、プロジェクトで何を目指すか、何がゴールなのか、スコープは何かを問うとき、どうすれば今の時代に必要とされるものを生み出せるのか?という視点で考えてみるとよいと思っている。

鳥の目で俯瞰する視点と、虫の目でマクロに見る視点を行き来しながら、つなげて考えを組み立てるのにも、幸運なことに、先ほどのビジネスモデルキャンバスも含めて、様々なフレームワークを駆使すると整理することはそれほどむずかしくないし、ちゃんと知ろうとする姿勢があれば必要な情報は言葉や経験を通じて得ることができる。
そう。結局は取り組む姿勢と常に自分をスキルアップするための努力次第で、鳥の目、虫の目を駆使しつつ、何をなすべきかからプロジェクトをマネジメントできるようになる。

そんなことを日々のプロジェクトから実際に学べているのはとても良いことだと感じている。

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