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台湾ひとり研究室:翻訳編「#39翻訳者の原稿料事情と有料マガジンに込めた思い。」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていく有料マガジンです。公開から1週間は無料でお読みいただけます。今回は、翻訳者の金銭事情と有料マガジンに踏み切った理由を改めて取り上げます。

この話をするかどうか、ずいぶんと迷いました。ですが、翻訳作業の実態を明かし、これから台湾書籍の翻訳をしてみようと思った人がいたとして、作業のことだけを伝えるのはどこかでフェアではない、と思っていました。

そう、翻訳者の金銭事情です。

金銭に対する感覚の変遷

日本文化に育ったひとりとして、お金の話をするのは「はしたない」ことと考えていました。強烈だったのは、若かりし編集時代、明確にせずに取材執筆を依頼したライターさんに「お金のことは最初に話してほしい」と詰め寄られたこと。

当時はビジネスとしての考えが身についておらず、一般的な観念が邪魔をしていたうえに、月給というシステムの中にいた会社員時代にピンと来てなかった、と今なら分析できます。ところが、フリーランスになって「最初に金額提示することが引き受ける大きな判断材料になる」ことを実感する日々です。

実際、お金の話なしに業務依頼してくる方はかなりいます。ちょっとした翻訳だからみたいなことでタダにしようとするやからもいて、内心では(うぉおおおいっ!)と椅子から転げ落ちるような盛大なツッコミを入れつつ、タダではやらん、ということを一般的社会人的な文型に入れ込んで回答する、ということを数えきれないほどやってきました。

どこかでも書きましたが、ガイド誌の依頼でも、企画書の翻訳はコーディネートの一部と言われて(あなたの代わりにやるのに、なぜ無料って思えるわけ!?)と画面の向こうから地団駄を踏みながら、仕事自体を降りたこともあります。

そんな数々の苦い経験を経て、国内ネタではなく海外ネタ、しかも台湾で取材して書くことを主軸にしたい、と思いながら発信を続けているものの、道なき道をかき分けるのは楽ではありません。だからこそ、翻訳、という道、仕事の選択肢を外せないでいるわけです。

そんな事情を踏まえつつ、翻訳ジャンルの原稿料の話を見ていきましょう。

翻訳と原稿料の関係

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