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台湾ひとり研究室:翻訳編「#18翻訳は孤独な作業なのか問題について。」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていく有料マガジンです。公開から1週間は無料でお読みいただけます。第18回となる今回は、ご質問いただいた中から「翻訳作業って孤独な作業なのでしょうか」について、個人的な考えを述べてみようと思います。

「今は仕事で書籍の翻訳をしている」というと、親しい友人から「翻訳は孤独な作業ってよく聞くけど、実際のところどうなの?」と訊ねられました。ああ、翻訳というとそういうイメージがあるんだ、とちょっと新鮮な気持ちで受け止めたので、今回はこの問いについて考えてみようと思います。

試しに「翻訳は孤独な作業」で検索をかけてみると(確かに、どんな検索ワードやねん、という気はしましたが)、74万2,000件がヒットしました。さらに試しに「ライターは孤独な作業」といれてみると、今度は123万件がヒット! 件数では翻訳者よりライターのほうが孤独感が強そうです。

翻訳と孤独の関係を考える

さて、手はじめに「孤独」を辞書で引いてみました。

仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。思うことを語ったり、心を通い合わせたりする人が一人もなく寂しいこと。また、そのさま。「孤独な生活」「天涯孤独」

コトバンク「デジタル大辞泉」より

ヒットした上位からいくつか拾い読みしてみると、在宅でひとり原稿と向き合う作業だから、孤独が好きな人でないと翻訳には向いていない云々、という記述が見つかります。なるほど……そういう意味では周囲に誰かがいるわけではありませんし、原文と向き合って訳文を考え出すところはひとりではあるので、孤独と言えなくもありません。

では、翻訳者は孤独なのか。この問いに関して私の回答はというと、

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