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台湾ひとり研究室:翻訳編「#17台湾の歴史に触れてみたいあなたに、翻訳者が勧める書籍3選。」

台湾書籍《大港的女兒》 の翻訳者が、日本版の刊行前後の進捗をリポートしていく有料マガジンです。公開から1週間は無料でお読みいただけます。第17回は、台湾の歴史を扱ったおすすめ書籍3冊をご紹介していきます。

今回ご紹介する3冊は「台湾史」と冠した本ではありません。比較的とっつきやすく、かつ台湾の歴史にしっかり触れることのできる書籍、という観点から選んだものです。まずはそうしようと思ったわけを述べておこうと思います。

3冊を選択するにあたって考えたこと

「歴史」と冠した書籍を読もうとして挫折した体験はありませんか。私にはあります。台湾の歴史に関する本を買い込んでみたものの、最初はちっとも読み進められませんでした。何度読みながら眠ってしまったか……今にして思えば、それは本のせいではありません。歴史を読むためにはある程度の基礎用語の知識がなければならない。その知識がないまま歴史書を読もうとすると、知らない単語ばかりで読み進められないのです。

そこで、いつか歴史書に向かうかもしれない、最初のステップとして今回は物語がありつつも、きっと素晴らしい読書体験になるはず!と思う作品を取り上げることにしました。本当はもっともっと勧めたい作品はあるのですが、迷いに迷って3冊に絞り込みました。

3作品とも、作者は台湾人です。台湾の歴史を語る際、日本人がまとめた史料や日本人が台湾での体験を書いた書籍などもありますが、私が個人的に大事にしているのは「台湾人目線」で歴史を見ることの大切さです。

団塊ジュニアとして育った私は、義務教育や日本の学校教育で台湾と日本の関係性がどうであったかを学んだ記憶がありません。つまり、日本が台湾を50年もの間統治していた、という事実をほとんど知ることなく大人になりました。海外留学を希望していた私は、そういうこととはほとんど関係なく台湾を留学先に選び、台湾人と結婚して移住する——そうなって初めて台湾史とちゃんと向き合おうと思ったのでした。

言い方を変えれば、日本にいた頃の私には、戦争の被害者としての認識はあっても、加害者としての認識がほとんどないままに育った。でも、それではだめだと思いました。同時に、台湾史をひも解いていくにつれ、何にどう触れるかはとても大事だと思うようになりました。なぜなら——

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