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【韓国編】スマートシティxサービスデザイン

こんにちは!株式会社NTTデータのデザイナー集団「Tangity」でサービスデザインをやっています、Wongyoです。
前回の投稿では、「外国人デザイナーからみた、NTTDATA Tangityのデザインケイパビリティとは?(https://note.com/tangity/n/ncac5e54f4b20)」についてお話ししました。
今回は、私が長年にわたり情熱を注いできた「まちづくりxデザイン」の視点から、未来の都市、つまり「スマートシティ」に焦点を当ててお話ししようと思います。
2023年8月中旬に、韓国のスマートシティモデル都市の一つである釜山市を訪れました。そこで「釜山市スマートシティ体験館」と「エコデルタスマートビレッジ」という特別なスポットを見学しました。これらのスポットを通じて、サービスデザイナーの視点から、スマートシティで感じたこと、思ったことについてご紹介します!

Q1|「スマートシティ」と「まちづくりDX」とは?

スマート化されたまち

まずは、「スマートシティ」と「まちづくりDX」について簡単に説明しましょう。
「スマートシティ」とは、デジタル技術やICTを駆使して、持続可能で効率的な都市を作り、市民の生活を向上させる都市の形態です。データ収集・解析、自動化、IoT、AIなどのテクノロジーを使って、都市の運営やサービスを進化させます。一方、「まちづくりDX」は、デジタル技術を都市計画やまちづくりに積極的に活用し、効率と品質を向上させるアプローチです。DXの考え方を都市に適用し、都市計画やサービス提供のプロセスを最適化し、市民の要望に合致する持続可能な都市をつくります。
どちらもデジタル技術を活用し、持続可能な都市を目指しています。スマートシティは都市全体の変革を、まちづくりDXは都市のプロセスの最適化を重視しています。未来の都市づくりにおいて、デジタル技術は非常に重要で、どちらもその都市やまちに住む住民のQOLを高めていくことを大事にしています。この記事では、主にスマートシティ、つまり、都市全体の変革に対する視点でお話ができればと思います。
参考:https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/ https://www.mlit.go.jp/toshi/daisei/toshi_daisei_fr_000050.html

Q2|釜山市はどんなところ?

釜山市の風景(海と山に囲まれ、高層ビルと住宅地が混在している大都市)

釜山市は韓国の重要な港湾都市で、世界2位の大規模港湾都市として、韓国の南東部に位置します。福岡から200km離れていて、船だと約4時間ぐらいで着きます。人口は約3.5百万人を超え、経済や観光など多岐にわたる分野で活気ある都市です。
しかし、近年、18〜34歳の人口は79万(2015年)から69万へ(2021年)減る一方、大都市の中で唯一の超高齢社会でもあります(22%)。7割が傾斜という地形の特徴が相まって、バリアフリーの視点でのまちづくりにも力を入れています。
また釜山市はスマートシティの概念を積極的に取り入れており、ICT技術を駆使して公共サービスの効率化を進めています。特に、2020年パリ市長のアンヌ・イダルゴから広まった「15分都市(※1)」を中心に、まちづくりを行なってきて、その考え方をベースに都市のスマート化による住民の生活を向上させるために積極的に取り組んでいます。
参考:https://onl.sc/ayrKThC
(※1)15分都市:自宅から徒歩、自転車、または公共交通機関で行ける範囲に必要なすべてのアメニティがあることを意味する。
https://sotonoba.place/15-minutecity

Q3|釜山市スマートシティ体験館について

エコデルタスマートシティ構想のVR体験

釜山市スマートシティ体験館は、2017年にオープンし、現在まで釜山市のスマートシティに関する情報と体験できる施設です。この体験館は、スマートシティの概念と技術を一般の市民や専門家に紹介し、持続可能な都市開発に関心を持つ人々に教育的な体験を提供しています。
実際に釜山市スマートシティ体験館を訪れてみると、訪問者に対する魅力的な取り組みがいくつかありました。まず、人流データの分析と月次報告が行われ、都市の動向を把握する重要な情報提供が行われています。
また、計画中のエコデルタスマートシティ構想をVRを使用した3Dモデルでの体験が提供され、将来の都市のイメージをリアルに感じることができました。さらに、人間中心のIoT活用により、ドローンによる救命道具の運用やスマート街灯を通じた女性の安全な移動サポートが行われており、都市の安全性と利便性が向上しています(下記の写真参照)。

救命・安全系のスマート機器
館内のおいて様々なスマートデバイス

最後に、バリアフリー系のキオスク(電子デバイス)が設置され、目が不自由な方々も使いやすい駅内案内システムが展示されており、市内の約30か所に設置されているようです。これにより、多様なニーズに対応し、市民の生活の質を向上させる取り組みが行われていました。

Q4|エコデルタ・スマートビレッジについて

エコデルタ・スマートシティ構想案とスマートビレッジの風景

エコデルタ・スマートビレッジは、2018年に韓国のスマートシティ国家モデル都市である釜山エコデルタシティ(※2)の一部として、2021年から住宅供給(56世帯)と5年にわたる実証実験がスタートしました。
このプロジェクトには、釜山市、国土交通省、韓国水資源公社(K-water)、サムソンなどの民間企業、そして地域住民などが主要なステークホルダーとして関与しています。ビレッジ内には、融合コミュニティセンターがあり、その中には高神大学校福音病院が運営するWellness Centerがあります。ここでは健康管理とウェルネスプログラムの提供、遠隔診療などの実証実験が行われています。利用率はまだ低いですが、将来的には医療の効率性と便益を高める可能性が模索されています。同時に、「水・環境」「エネルギー」「交通」「生活・安全」「ロボット」「スマートファーム」などの6つのリビングラボ(※3)が存在し、それぞれの活動に関するデータ収集が行われています。住民の生活に組み込まれたIoTデバイスからのデータも集約され、よりスマートな生活提案が実施されています。

敷地内にある融合コミュニティセンターとWellness Center
スマートジムと自宅EVなど、敷地内風景
スマートごみ処理と信号、広報館など
無人コンビニと警備・カフェロボットなど

このプロジェクトを訪れて感じたのは、未来のスマートシティの実現に向けた積極的な実践が進行中で、地域住民の生活にポジティブな影響をもたらしていることです。まだ成果の正式な報告はありませんが、データの有効活用に期待が寄せられています。しかし、従来の都市開発の枠組みにとどまる可能性もあるため、データの最適活用が求められます。釜山は高齢社会や人口減少に直面しており、スマートシティの実証実験は注目を浴びています。
(※2)https://www.investkorea.org/bsn-jp/bbs/i-2138/detail.do?ntt_sn=486725    https://busan-smartvillage.com/           (※3)https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000256.pdf    参照:https://newspicks.com/news/6897644/body/

Q5|サービスデザイナーの目線から思うこと

これまで釜山市のスマートシティの2つの事例をご紹介しました。これらの事例はまだ実験フェーズにあるものの、形にするスピード感が素晴らしいと感じます。しかし、一方でプロジェクトを形にして終わりにしないようにすることが重要です。目的や未来のビジョンを描きつつ、柔軟性を持って進行し、必要に応じて軌道修正を行うことが必要です。
これらのプロセスにおいて、サービスデザインのアプローチが非常に重要です。サービスデザインを通じて、ユーザーケースを常にブラッシュアップし、プロジェクトの成功に向けて柔軟性を持つことができます。

サービスデザインの4つのステップ

Tangityのサービスデザインは、大まかに4つのステップから成り立っています。まず一つ目は「Market Discovery(市場発見)」で、これは長期的な視点で主力領域を定義する重要なステップです。スマートシティの文脈では、これは将来の都市のビジョンを定義し、それを可視化してステークホルダー(自治体、企業、学校、住民など)とのコミュニケーションを重視する段階です。
二つ目は「People Discovery(人々の発見)」で、これはユーザー理解とも呼ばれ、サービスデザインの中核です。人間中心のデザイン思考に基づき、まちのDNA的な背景を考慮に入れ、主要なターゲットを徹底的に理解し、インサイト(洞察)を見つけ出すことが大切です。
三つ目は「Solution Design(解決策のデザイン)」で、最適なアイディアを考案し、その検証を行うフェーズです。スマートシティにおいては、B2B(ビジネス対ビジネス)およびB2C(ビジネス対消費者)の観点からアプローチが異なります。どの立場で支援するかによって、このフェーズが異なると考えられます。
「Development(実装)」は、スマートシティの目標である持続可能な都市を形成し、市民の生活を向上させる段階です。しかし、これは容易に達成できるものではありません。実際にご紹介した「釜山スマートシティ体験館」では、IoT系スマート機器がほとんど活用されず、プロトタイプの段階にとどまっているようです。このような挑戦に取り組む際、重要なのはサイクルを回し、継続的にブラッシュアップしていくマインドです。

人間とロボットの共存

個人的な見解として、韓国のスマートシティにおけるサービスデザインの領域はまだ発展途中であるように感じます。今後、この課題に取り組み、デザイナーとしての使命を果たすために深い洞察と研究が必要です。スマートシティの進化に貢献し、技術だけでなくユーザー中心のアプローチを推進することが、持続可能な未来を築く鍵となります。

筆者プロフィール


李員交  Wongyo LEE
サービスデザイナー / Service Designer
デザイン業界からのキャリアをスタートしていたものの、情報デザイン学修士とMBA取得とともに、デザインx経営をキーワードに活動しています。
前職までは、地方創生やコミュニティ作り、自治体系プロモーション、インターナルブランディングを通した組織強化に対するデザインアプローチなどに携わっていました。現職では、サービスのCX変革・高度化、まちづくりDX・スマートシティ関連の案件に携わっております。
人間中心の未来を暮らしをデザインすることに燃えてます!
落ち込んだら、いつも見るのは、メジャーという野球アニメです(笑)

デザイナーさん大募集

現在Tangityではデザイナー職を積極的に採用しています!サービスデザイン、UXデザインのクライアント業務の経験がある方、ぜひ私たちと一緒に働きませんか?募集要項など詳細はこちら。お待ちしております。
また今回ご紹介した法人企業様との共創を推進するビジネス・サービスデザインチームの募集はこちらです。
双方のポストはプロジェクトで連携する機会もあります。お待ちしております。

https://nttdata.jposting.net/u/job.phtml?job_code=462

https://nttdata.jposting.net/u/job.phtml?job_code=1115

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