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独身時代の思い出の1ページ

 「もつしげ」で日暮れ前から友人と飲んだことがあった。「もつしげ」とは、神奈川・東京界隈にあるチェーンのモツ焼き居酒屋だ。
 友人は吉野町に住んでいて、友人宅から徒歩1分くらいの場所に「もつしげ」があったのだった。

 その頃私は仕事を辞めて無職。仕事のストレスから解放され、時間はたっぷりあるし、明るいうちから女友達と飲めることがうれしくて、はりきって吉野町の「もつしげ」へと向かった。

 まずはビール派なのだけど、もつしげにはハッピーアワーがあり、18時前まではハイボールが激安なので、ハイボール、ではなくメガハイボールを頼んだ。煮込みも一緒に頼んで乾杯した。

 ふと、店内が女性だけということに気がついた。といっても平日の早い時間なので、客は私たち二人とおばあちゃんだけだった。おばあちゃんは一人でお酒を飲んでいた。店員さんは感じの良い女の子だった。居酒屋で男性がいないのも珍しいな〜平和だな〜と思いつつ、たわいのない話をして存分にお酒を飲んだ。その後、しゃべり足りず飲み足りず、友達の家でワインを飲んで、許容量満タンまでアルコールを摂取してからお開き。
 
 もちろん、とっくのとうに日は暮れていた。何をしゃべったかは、あんまり覚えていない。友達がホットヨガに通って痩せた、ということだけ覚えている(笑)。

 なんて事のない日常だけど、独身時代の思い出の1ページとして、私はこの日のことをたまに思い出す。友人宅があるマンションのエレベーターとか、ガランとしているが平和な空気が満ちた「もつしげ」の店内。友人の家のワイングラス。記憶力はあんまり良くないので、それらがセピア色で脳裏に焼きついてるだけなのだけど。そして思うのだった。独身も楽しかったし今となれば毎日が貴重だったなあと。

 もつしげ吉野町店へは、それ以降、行っていない。その後、友達も私もさまざまな壁を乗り越え(?)40歳を過ぎて結婚した。友達は吉野町のマンションから三浦市の農家宅へ引っ越した。旦那さんと猫と平和に暮らしながらキャベツを作っている。最近会ってないので、そろそろ連絡してみようか。

 そして、これを書きながらもつしげの運営会社のHPを見たら吉野町店は4月7日(明日!)をもって閉店すると知らせがあった。言っとくけど閉店を知ってあの日のことを思い出したんじゃない。それなのに、閉店の前日にたまたま、「あ〜そういえば何年か前にもつしげ行った日、楽しかったよな〜、noteに書こう!」となる偶然。何の直感か。もつしげ吉野町店が命絶え絶え別れを伝えに私の夢枕に……? それにしても最後にもう一度、同じ女友達と行きたかった……。

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