角野桃花

1996年生。東京大学教養学部卒。2021すばるクリティーク賞最終候補(「サブカルチャ…

角野桃花

1996年生。東京大学教養学部卒。2021すばるクリティーク賞最終候補(「サブカルチャーの〈娘〉とその〈母〉と〈父〉――『キルラキル』を通じて)。第65回群像新人評論賞最終候補(「「ママ」をもう一度人間にするために――『約束のネバーランド』と『かか』において」)。

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 私は実家に帰るのが嫌いだ。  それは、もちろん家族との仲があまりよろしくないというのも大きな理由だけど、なにより過去というものは不確かなくせに私を孤独に追い込んでくると痛烈に感じるから。  うちは、精神疾患を持つ母を抱えていた。そして、母いわくモラハラの父から逃れて母の実家でくらしていた。母はしばしば鬼になった。  私はいまさら過去の傷を並べることはしたくない。語るのは本当に疲れるから。繰り返す語れば語るほど、自分に起きたことが陳腐に思えるのもよく知っている。記憶は語る

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