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ナイト シャマラン監督の【ヴィジット】観た

※ネタバレほぼ無し

姉(ベッカ)と弟(タイラー)は、幼い頃に父親が出ていってから母子家庭で育ってきた。
母は15年前に両親と仲違いしていて、姉弟は祖父母と1度も会ったことがない。
そんな祖父母の家に、姉弟2人だけで1週間泊まりに行くことになる。

祖父母の家は、自宅から随分と離れていて、携帯電話の電波が入らない。
母は、2人がいない間 恋人と船旅に出ている。

そんな隔離された状況の中、家の中で不穏なことが起き始める。


物語の中で、弟は好奇心のままに色々と秘密を暴いていく役割をしていて「爺ちゃんと婆ちゃん、なんかヤバくない?」と、ずっと言っている。
姉も異常は感じているが「2人とも歳をとってるから仕方ないの」「良くあることみたいよ」「理解しましょう」と諭す。
しかし、祖父母の行動は「よくある老人の行動」ではない。

果たして、この祖父母は本当にただ歳をとってボケているだけなのか、それとももっとヤバいやつなのか。
ヤバいやつだとしたら、人格的なことなのか、霊的なものなのか、もっと違う何かなのか…そこらへんが分からないままストーリーは進んでいく。

この祖父母の言動、大人なら「どう考えても普通じゃない」とすぐに確信するのかもしれない。
私なら「ちょっと野暮用で」つって即日帰る。
だが、子供たちは経験値が少なくて、他に比べるものを知らないから、明らかに異常過ぎることでも「そういうものなんだろう」と納得して受け入れようとしてしまう。
世の中でよくあるやつだ。

大人や世間の理不尽を「分からないのは自分が悪いんだろう、理解しないといけないんだ…」と受け入れていくうちに、何かが歪んだり、狂ったりしていく。

この姉弟も、父親が自分たちを置いて居なくなったことを彼らなりに受け入れようとして、苦しんでいる。
幼い頃から受け入れ難いことを受け入れてきた、姉と弟の苦しみ。それが、"受け入れられないレベルの祖父母のヤバさ"と同時進行で明かされていく。



ナイト シャマラン監督の作品を見たのは「シックスセンス」「OLD」に続いて3作品目だが、3作通して思うのは「この監督、多分いい人なんだろうな」ということ。
ちゃんと「優しい人」が中心にいて、不幸な目にあっても最後は救いがある。

そして、シャマラン監督はとにかく「絶対にヤバい」「なんか来る」を匂わせるのが上手い。
本作では、「絶対にヤバい祖父母」の見た目が2人とも上品で知的で美しいのがすごく良い。それが崩れたときの恐ろしさが際立つ。


「ミッドサマー」を観た時に私は「これ、作ってる側や出てる人達、めちゃくちゃ楽しいんだろうな…」と思ってワクワクしたのだが、本作は祖母の役がめちゃくちゃ楽しそうだと思った。
あの役やりたい。

あと、あのお婆さん(スタントだろうけど)四つん這いで走りまくるし、食欲もめっちゃあるしで、すごい長生きしそうなのが怖いね。
身体能力の高い健康な狂人がいちばん怖い。

ラストのエンドロールのところは「どういう気持ちにさせたいんだ、この監督は」と思った。まぁでも、終わった時の気持ちが重たくないのはとても良かった。

全体に「キチンと怖くて、キチンと面白くて、ちゃんと良かったねってなる、ちょっとだけ変な映画」て感じだった。
「ゴーストランドの惨劇」を少し思い出したけど、「ヴィジット」の方が人におススメしやすい。
食事中に見るやつでは無いけども。

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