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革靴は、着画だと映えない(米英靴の話)。

プラダ傘下になってからの某ブランドは、やっぱりよくないですね。採算度外視のクラフトマンシップに正当な対価を与える、という美談では終わらないのが良くも悪くも商売というもので、某ブランドもそのコスト上昇分が、製品の販売価格に上乗せされ、ブランディングにおいても、なんならラグジュアリーブランドかよ、と言わんばかりで。

でも、製品の質は、価格に見合うものではありません(言っちゃった。)。半額なら買うかもしれません。

私の世代の相場(90年代末期からしばらく)では、某ブランドは6万円(5~8万円)というランクのブランドでした。今にして思えば全然安いな、このときの価格を知ってるせいで今が高いと感じるんだろうな、と思いますが、革靴ってなぜか、そういうものですからね。

いまビンテージと呼ばれる革靴は、ずっとずっと昔から、職人たちによって過剰なまでの技術と情念が込められてきたのですが、当時から、製品の価格にそれが反映されることがなかったんですね。

いやまあ、革靴の製造業者って結構潰れてるんで、安くしなきゃいけなかった、という理由もあるんでしょうけど。そのあたりは、一瀉千里に語れるほど詳しくありません。

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最近、出勤するときは、「ジョンストン&マーフィー」というブランドの、ビンテージのクォーターブローグを好んで履いています。手元にやってきて、8年くらいかな。

だいたい週3出勤なので、今は1日はこれ、残りの2日のうち1日は手持ちのうちのどれか、あとの1日は完全カジュアルで、ニューバランスの2002R GTXを履いています(この製品も傑作だと思っているので、また何か靴について書く機会があれば。)。

はてさて「ジョンストン&マーフィー」は、アメリカの製靴ブランドです。質ではなく格でいうと、表現が難しいんですけど、ちゃんとした革靴を作るブランドとしては、入門層とか中間あたりに位置している感じ。先に述べた私の世代の相場なら、4~5万円というところ。ん、もっと安かったかも。

でも、歴史は長くて、リンカーン、ルーズベルト、ケネディ、ブッシュ、オバマ等々、ぱっと名前が思いつくアメリカの大統領であれば、だいたい誰もが履いていたことがあったり(まあ、同じくアメリカのシューズブランドである後述のアレンエドモンズ、ボストニアン、ハノーバーにもそんな説明書きがあるんで、そのへんは適当に。)。

アメリカの大統領と言えば、やはりアメリカブランドの「アレンエドモンズ」のパークアベニューなんですが、これも私の世代の相場で言えば5万円くらいの格の靴でした。

まあ、いずれの社でも、大統領ともなればビスポークで作ってはいるんでしょうが、アメリカのそういうとこ、ちょっとかっこいいですね。イギリスのブレア元首相も、英国ブランドのチャーチかチーニーかを20年くらい履いてたらしいし。

「首相はいつも同じ靴をお召しですね。」というジョンブル特有の当てこすった物言いに「(何度も買い替えなきゃいけないような)安物を買うほど裕福ではないからね。」とこれまたイギリス人らしい回答をするブレア氏。
イギリスに住んでいたら性格悪くなりそう!

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で、私が履いている靴に話を戻しますが、アメリカ製らしく、道具に対するアメリカならではの合理性が発揮されています。レザーはガラスレザーで、雨の日も安心、さらには多少ずぼらな人が履いても常にピカピカ。ラスト(足の形をした木型。)も、どんな人種の誰が履いてもしっくりくる、というアメリカ靴の模範生の中の模範生的な作り方をしています。これがまた、私の足にはドンピシャでした。

よく言われる話ですが、一般的に日本人の足は、甲が高く広く、かかとが細く小さいという傾向があります(私の甲は広くもないのですが、踵は一層小さい。)。

これで一度大きな失敗をしたのは、エドワードグリーン。ジョンロブと並ぶ英国靴の最高峰ですが、どうしても欲しい靴の踵が、どうしても合わなかったんです。具体的には、幅がでかかった。
結局買っちゃったのですが、やはり踵のサイズ感のミスマッチは解消せずで、購入から20年余年で、6、7回くらいしか履いてません。
甲やつま先なんかは履き込みによる馴染みを期待して買えば良いですが、踵が合わないのは厳しいな、と思っています。

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まあ、日本人で、ちゃんとドレスシューズのサイジングで革靴を履いてる人ってあまりいない(みんな大体スニーカーばりにゆとりをもたせてる。)ですから、ラストがどうこうみたいなのは、かえって気にならないかもです。
ただ、ドレスシューズのサイズ余りって、外からでも一目でわかりますからね。あれ、格好良くないです。

また話が逸れましたが、いま絶対流行らないぽってりとしたノーズも、スラックスの裾を少しだけ細く短めにオーダーしている私には映えます。

実物は2倍くらい格好良く5倍くらいかわいい

偉い人に会うときやフォーマルな場では、マナーじゃなくてコードにのっとって、内羽根式のストレートチップをちゃんと履いていきますが、私自身は全く偉くないので、どっかカジュアルなとこが出てた方が、労働者って感じがして、しっくりきますね。

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「アメリカ靴の話をするならオールデンだろ!」というところかもしれませんが、オールデンのことは私が書かなくても、いろんな人が書いていらっしゃいますからね。

それより「アメ靴のビンテージにはジョンストン&マーフィーなんて実力者もいるんだぜ!」ってことの導入だけでも、私のnoteの読者たる10名程度の方にでも知っていただけたら、と思っています。
良い靴、残してますよ。中古市場でも、めちゃくちゃリーズナブルです。

あとはまあ、「ん?『ジョンストン&マーフィー?』知ってるよ。でも『リミテッド』とか『クラウンアリストクラフト』とかって何?結局、どれが一番いいの?」みたいなのこともまた、私よりももっと詳しい人が書いたりしてるのかな?
そのクラスの水準のお話は、そちらをご参考に。

さすがにそのレベルの情報になると、ニーズはなくても、価値や希少性の面で有料級ですね。お金とっていい話です。
なお、ところどころ出てくる金額は、自分の記憶によるものであって、事実であるかどうかは別なので、ご寛恕のほどを。。

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