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#65 緩和ケアとおじいちゃん

私のおじいちゃんは大きい病院の整形外科の病棟から緩和ケア病棟に移った。

お見舞いに行くときは多くの人が待つロビーのエレベーターを使っておじいちゃんの病室に行っていた。

けど、緩和ケア病棟は別の新館にあるから多くの人でざわざわしているロビーを突き抜けて歩いて奥にある静かなロビーのエレベーターを使わないといけない。

なんだかもう、静かな最期が近づいている、迎えに来ているような気がして悲しくてしょうがなかった。

エレベーターに乗り、階に到着

とっても静か

看護師さんたちもゆっくり仕事をしている印象だった

ゆっくり静かに時間が流れていて、一人ひとりの部屋も大きかった

もう最期なんだ

最期をよりよく終わるためにこんな作りになっているんだと思うと悲しくなっていった

おじいちゃんの病室に行き、挨拶

名前を言ったけど思い出せないみたい

また前みたいに覚えてくれてるかななんて期待してた自分がいる

私が悲しそうな顔をしたせいか、おじちゃんが

あぁ、覚えてるよ、忘れてた、ごめんごめん

と優しい声で返してくれた

多分、しっかりとは思い出せてない

けど、それでいいよ。うん、それでいい。

おじいちゃんが私のことを忘れちゃっても、私はおじいちゃんのこと絶対忘れない。

たとえ、遠くに行っちゃったとしても、絶対に忘れない

今月、お家に帰れるみたい

ベッドを借りて、訪問看護師さんが毎日来てくれるって

よかったね、帰りたいってあんなに言ってたもんね

食べたいもの、好きなだけ食べれるってよ

カツ、食べたいって言ってたね

もう、ご飯も2、3口しか食べれないって聞いたからきっとカツも満足に食べれないだろうけど、食べれるといいね

なんだか、この前会ったのが最期になっちゃうような気がして、

そんなことを思ったら涙があふれてしまいそうだったから、早く病室から出ちゃった

後悔するのは自分なのに

おじいちゃんが私を別人だと思ってしまってもまた会いたいから絶対に元気でいてね

今度は逃げないで、どんなに泣いてしまってもちゃんとありがとうって言うからね

寡黙な人で私とあまり話してくれなかったけど、遊んでるときにずっと見守ってくれたこと知ってるからね

おばあちゃん、おふざけが大好きでいつも元気だけど、おじいちゃんが病気になってから元気がないよ

もうちょっと甘えたかったって

可愛く甘えればよかったって

そんなことを話すおばあちゃんは優しい顔をしていたよ

だから、まだ、私たちを置いていかないでね

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